がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2019 ゴールド】コロプラスト株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2019 ゴールド】コロプラスト株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2019に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:コロプラスト株式会社

業種: 医療用装具・治療材料等の輸入、販売

従業員数: 約150名

ウェブサイト:https://www.coloplast.co.jp/

取り組みのきっかけやエピソード

 

・がんアライ部に参加したことを契機に他企業の取り組みからも刺激を受け、自社制度のさらなる拡充に取り組んでいる(短時間勤務制度、がん検診サポート、禁煙サポート)。

 

・2019年6月がんアライ部勉強会「がん治療中の部下と上司の良い関係」に経営会議メンバー3名が参加し、両立を支援する環境作りの大切さについて理解を深めた。この件については社内イントラネットにて報告、感想と共にがんアライ部事務局による勉強会レポートを共有した。

 

 

・第 1回「がんアライ宣言・アワード」ゴールド受賞後、がんアライ部Webサイト「受賞企業に聞く『がんアライアワード受賞』の効果」にてコロプラストのご紹介をいただくことになり、社内で募ったところ、多くのコメントが寄せられた。「お客様や友人に社内の取り組みについて説明することができた」「誇らしく思った」等、受賞の喜びを一緒に分かち合うこととなった。

 

<実際に社員が罹患した際の対応・エピソード>

 

・過去にがんに罹患した社員が2名いたが、いずれも体調に合わせて業務内容を調整する相談をしており、安心して治療を継続できる環境を確保した。残念ながら両名とも在職中に亡くなったが、その際はご遺族の気持ちに寄り添いながら丁寧に対応することを心掛け、グループ保険や退職金 等の手続きも迅速に行った。

 

・営業職男性:手術および療養のため休職したが、復職にあたっては本人の希望を汲んで、出身地にある職住接近の業務に配置転換。その後も何度か休職や休暇、欠勤を繰り返したが、雇用については心配無用の旨、当時の上層部が伝え、定期的に面談を継続した。

 

・営業職女性:手術および療養のため休職した際、社会保険等に関してタイムリーな情報提供と手続きを心掛けた。会社のPCを使用してもらいながら、上司や同僚、人事部とのやり取りを継続した。復職した場合の体力回復までの業務についても本人の希望を基に合意する等、安心して治療に専念できるよう配慮した。定期的に入院先に通い、精神面も含めてできる限り支えた。お見舞いの際に贈った帽子を喜んでくれ、葬儀の際も被って旅立った。

 

<その他:コロプラスト社の紹介>

 

・コロプラストはデンマークを本社とする医療用装具・治療材料メーカーで、「個人的な健康上のニーズをお持ちの方々の生活をより快適に」をミッションに活動している。社員はバリュー「Closeness(寄り添う気持ち)、Passion(情熱)、Respect and responsibility(尊重と責任感)」を体現することが期待されている。

 

・コロプラスト製品をお使いくださるお客様にはがんを経験されている方も多くいらっしゃり(ストーマ装具をお使いの方の大半が大腸がん罹患者)、このため、社員のがんに対する理解も進んでいる。オストメイト(ストーマをお持ちの方)の方々との交流にも取り組んでいる。

 

風土づくり

 

◆すぐに会社を辞めなくていいと伝わる風土づくり

 

・これまでがんに罹患した社員について「辞めなければならない」等の選択肢は本人からも周りからも一切出たことがなく、過去の事例の積み重ねが「すぐに会社を辞めなくていい」社風となっている。

 

・がん検診補助、短時間勤務制度等、新制度を導入する際は、「社員が安心して働き続けられるよう制度や職場環境の整備を促進――」「各種治療や業務との両立――」等、社員に趣旨を理解してもらえるよう付記している。

 

◆制度が使いやすい風土づくり

 

・継続的に年次有給休暇取得率を上げる活動に取り組んでおり(年次有給休暇計画付与/部門長による働き掛け/有休取得率推移イントラネット掲載/等)、安心して休暇を取得できる社風がある。2018年9月時点有休取得率69%、2019年9月時点有休取得率63%、と6割を超えている。

 

・健康診断受診をサポートするための費用、休暇等の案内を毎年3月下旬にEメールで発信しており、5月末までに全員が受診完了できるよう取り組んでいる。未受診者には上司も巻き込んで催促、過去10年以上健康診断受診率 100%を維持している。健診結果には産業医が目を通し、必要な場合はフォロー面談を実施。

 

・2019年度より「がん検診費用サポート」制度を開始(詳細は【制度】欄)。上記健康診断案内に盛り込むと共に、上司に部下全員ががん検診を受け、精算していることを確認するよう依頼。

 

・休職・復職の規定や申請書、社内問い合わせ先を社内イントラネットに掲載。

 

相談できる環境づくり

 

◆上司に仕事や治療のことを相談できる環境

 

・上司‐部下間のコミュニケーションは、「1on1」や日常的な対話の中で相談しやすい環境が整っている。

 

・パフォーマンスマネジメントシステムの中にも本人が望む今後のキャリアの方向性について記入する欄があり、面談の中でもはたらき方に対する希望を話題にしやすい仕組みがある。

 

◆人事担当が外部の医療従事者と相談する環境

 

・産業医とよく連携が取れており、毎月の訪問時に人事部が社員の健康に関して相談をしている。

 

・社員が病気に罹患した際は(がんに限らず)、よりよい就業環境を確保するため、必要に応じ、本人の同意の下、上司と人事部が主治医を訪問し、相談することもある。

 

◆その他

 

・社員の健康のための年次有給休暇取得率向上や残業時間の抑制に経営層が一体となって長期的に取り組んでいる。ワークライフバランスや風通しのよいコミュニケーションを重視した職場づくりのため、何かあったら上司や人事部に相談する環境ができている。

 

・産業医訪問スケジュールや個別健康相談の申込み方法を社内イントラネットに掲載。年に数回、産業医ミニレクチャーを企画、社員と産業医との接点を設けることによって、相談しやすい環境を維持している。2019年度は「がんと検診」「女性特有のがん」等、複数の企画を実施。

 

制度

 

◆社員の健康増進やがんを早期発見するための取り組み

 

・10年以上前から健診受診時に発生する「一部負担金」を会社がサポート。検診機関窓口で各自が支払った後、社内経費精算できる仕組みを設けた(定期健診 1,620 円、生活習慣病3,240円、日帰人間ドック21,600円)。

 

・人間ドックを含む定期健診および再検査(1回まで)に必要とする時間を特別有給休暇扱いとしている。

 

・上記については全直雇用社員(正社員・準社員)を対象とし、毎年3月下旬にEメールで案内している(受診期間目安:4月1日~5月末)。

 

・経営陣が時間外勤務時間を毎月モニターしており、継続的に残業時間を削減する活動に取り組んでいる(業務分析・プロセス改善/配置転換/等)。2018年9月時点での過去5年間残業時間は41%減少(時間管理対象者 月平均残業時間7.1時間→4.2時間/最長月間平日残業67時間→41時間)。2019年9月時点では、平均3.15時間/最長35時間とさらに減少している。

 

・がんの早期発見を後押しするため、2019年度より「がん検診費用サポート」制度を開始。全直雇用社員(正社員・準社員)を対象に年5,000円まで会社負担。若年でもがんに罹患する可能性があるため、年齢制限は設けていない。制度開始にあたっては、がん検診に関する情報提供のため、産業医によるミニレクチャーを実施し、当日の動画記録をイントラネットで共有。

 

・がんの一因と言われる喫煙習慣を断つ支援をするため、世界禁煙デーに合わせた「卒煙ダービー」を企画したが、残念ながら不発に終わった(目標10名のところ参加2名のみ)。再度、経営会議で討議し、禁煙外来費用を一部補助することを決定。一人につき1回10,000円まで経費精算可能とした。

 

◆がんに罹患した際、治療を支援する制度や復職時に働きやすい制度

 

・過去育児・介護中の社員のみに適用されていた短時間勤務制度を、がんをはじめとする各種治療やその他ニーズのある社員も使えるよう制度改定。

 

・2019年9月より、臨床心理士をはじめとする外部専門家によるカウンセリングサービスを開始。健康に関する悩みに保健師が対応する健康相談メールもメニューに含んでいる。

 

◆「がんと就労」における課題に対して取り組みを進めていること

 

・がんの治療と就労の両立を支援するため、年次有給休暇の時間単位取得について経営会議で合意し、具体的な規程整備と勤怠管理システムの準備を進めている(当初2019年10月導入予定を目指していたが、システム仕様継続討議のため、2020年4月に延期)。

 

講評・コメント

 

がん罹患者と上司、同僚、人事部が深くコミュニケーションをして、寄り添いながら、本人の治療と就労を継続してきたエピソードから、「Closeness、Passion、Respect and responsibility」を体現されていることが伝わってきます。

 

産業医ミニレクチャーを企画されるなど、従業員と産業医の接点を設けられ、相談しやすい環境づくりを進められています。

 

がん検診費用サポート制度、外部の専門家に健康に関連する相談やカウンセリングが受けられる制度など、早期発見や健康増進に関する制度づくりを進められています。

 

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