がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2019 ゴールド】株式会社八芳園の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2019 ゴールド】株式会社八芳園の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2019に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:株式会社八芳園

業種: サービス・飲食

従業員数: 400名

ウェブサイト:https://www.happo-en.com/

取り組みのきっかけやエピソード

 

企業理念は、

日本のお客様には心のふるさとを   

海外のお客様には日本の文化を

いつまでもあり続けること 

OMOTENASHIを世界へ

 

・創業75年以上で、近年は企業様との、また自治体や国が関連するビジネスイベントや様々な企画を実現しているが、核となるのは結婚式場として。当社では結婚式をゴールと捉えずスタート地点と捉え、そこからお客様と共に歩いていくという生涯式場として寄り添っている。最高の飲食とサービス、そして想い出を提供する中で、食を見直す事で体の中から健康を維持する事を一つのサービスとして実施している。在り続けるというのが当社の大きなコンセプトの一つであり、お客様の為に在り続けるには社員が長く健康でいなければならないという事でもある。

 

・SDGsに含まれる持続可能な取り組みに賛同して実施している当社として、そしてお客様に幸せを提供するためにはまず社員が幸せでなければならない、という話でもあり、完全変形労働制による柔軟なシフト調整や働く母親を支援するナニーサービスの導入、傷病時の社員への寄り添い方などの取組みをしている。

 

・お客様へのサービスとして、FOOD EDUTAINMENTという、楽しみながら食を学ぶイベントを定期的に開催しており、これは独自アプリとして開発をして提供もしている。お客様への提供サービスではあるが、従業員は半額参加できるなど、従業員自身にも健康に気を使える環境を提供している。

持続可能な取り組みと食はダイレクトに結びつき、七大アレルゲン除去料理、ハラール等を始めとした体質や宗教、主義主張などに対応した食の提供に取り組んでいる。

 

・2014年10月に調理の男性が急性骨髄性白血病を発症し、即日入院した事があります。生存率が5年で30%~40%と宣言され、職場復帰はおろかこの後の人生がどうなるか見えなかったという事でした。骨髄移植を受け、9ヶ月で職場復帰を果たすも、3ヵ月で再発。再度入院して2年3ヵ月後、そしてさらに1年ののち、職場復帰を果たし、まずは負担の少ない調理事務から始め、調理場に復帰したのは実に4年ぶりの事でした。現在、あと3ヵ月で発症から5年を迎えるところで、本人はお医者様に申告された5年という言葉をもう少しで覆せる、と。現在は食事制限もなく、薬も2ヵ月ほど前に飲むのを終えて、通常の生活を送っています。放射線の治療の副作用で、発汗作用が弱くなり汗をかきづらい為、夏は大変との事。奥様のサポートもあり、現在は、時間を短めにしている限定社員として、以前と同じ職場・仕事に従事しております。

 

・初めて申告された際に、まず当時総務の上席だった者に相談して、すぐにお医者様からの話も一緒に聞いたとの事です。別の総務担当も何度もお見舞いに足を運び、コミュニケーションツールでのやり取りも頻繁にしながら、その際、“東京オリンピックの時には調理したい!”との想いを持ってやり取りしながら闘病を続けており、日々励ましの言葉を受けていたとの事です。

 

・復帰時、周りも“待っていたよ!”と温かく迎え入れてくれ、気も使ってくれている事は感謝以外にないとの事です。会社としては、通常であれば傷病期間は最長2年ですが、東京都難病・がん患者就業支援奨励金の申し込みや、本人の事情を鑑みて、復帰時の仕事、在籍も含めて本人を待っておりました。ちなみに本人は、入院中は、調理はもちろんできないが何かしら食に携わっていたい、との思いから勉強を続け、ソムリエの資格を取得しました。本人曰く、不幸中の幸いでしたが、やはりこういった強い気持ちが難病にも負けない結果を生み、周りの温かい気持ち、支援を生む事に繋がるのではと感じます。

 

・八芳園としてはこういった状況であっても社員を、そして社員の想いを大事にする事に重点をおくのが文化として根付いており、今後も変えてはいかない部分であろうと思っております。

 

風土づくり

 

◆会社的には元々一族経営の為、社員が長く務められる環境を大事にして、社員をとても大事にしてきた経緯がある。

 

◆完全変則シフト制の為、柔軟な時間調整が可能であり、育児や介護においても本人の事情に合わせて調整が可能な環境である。

 

◆また、お客様へのサービスを実現するチームワーク構築が全社的な強みであり、業務のフォロー体制においてもお互いを補える風土である。

 

◆過去には急性骨髄性白血病を発症した社員もおり、東京都難病・がん患者就業支援奨励金を東京都より支給頂いた実績もあります。これは調理部門の男性が、2014年の10月に発病して、そこから闘病生活が始まったエピソードで、冒頭のエピソード項目に記載しております。

 

相談できる環境づくり

 

◆健康面・精神面の不安など総務・業務担当者、また産業医の先生などがいつでも話を聞ける状況。

 

◆また、若手にはメンター・メンティー制度を導入しており、親子制度として定期的に面談を実施、立場が近い人間に悩みを相談しやすい環境を整えている。

 

◆休職者の状況も、都度相談に乗りながら復帰までの道のりをサポート。

 

◆がんと就労と直接ではないが、当社では社内コミュニケーションがアナログ・わかりづらかったが、近年社内SNSを導入して、タイミング・時間・発信先の人数など、難しい社内情報共有を電子と対面両方で実現させている。社内SNSの使い方の一つとして、お客様と直に接しているフロント部門が嬉しいエピソードを日々社内に共有する事で立場や年齢なども問わずに全社員でお客様へのサービスを最大化させる事に繋げており、その雰囲気がそのまま社員の“参加感”につながっている。

 

◆こういう雰囲気を総体的に活かし、直接話をしづらい場合などに対して社員の相談窓口的に総務担当へのコンタクトがあり、当然の守秘義務ではあるが、あまり意識をさせすぎずに相談しやすい環境の構築に努めている。

 

◆ただし、対面での会話を最も大事にしている為、メインは直接話をするよう努めている。

 

制度

 

◆勤続年数により、最長2年の休職期間があり、最長1年半の傷病手当金(給与の6割程度)の支給がある。また復職時には原則として復職前の職務としている。

 

◆また別途記載の通り、東京都難病・がん患者就業支援奨励金を支給された実例もある。

 

◆40歳以上は健康を害する状況の早期発見の為、人間ドック受診を全額会社負担で実施。また39歳以下の社員は年二回の健康診断機会から一回受診。

 

◆がんや傷病とは別だが、お子様のいる社員への福利厚生としてナニーサービスを導入、隣接する弊社施設にお子様を預けて、本社にあるカメラで気軽にお子様の様子を確認しながら働ける環境がある。また、自宅でお子さんを見る在宅ナニーサービスもあり、多様な子育て就業支援を実施。

 

◆福利厚生で社員食堂があるが、毎週水曜金曜には自然栽培野菜のバイキングを提供している。これはお客様に提供する自然栽培農家の野菜で体の中より健康になろう、を社員にも提供するもの。

 

◆期末には日頃の感謝を伝えたい相手に“ありがとうカード”を送っている。名刺サイズのカードに感謝を伝えたい相手への言葉を書き、総務で回収、振り分けて本人たちへ渡している。仲間への感謝を大切にして、カタチにしている。

 

講評・コメント

 

がん罹患者と上司、総務担当者が深くコミュニケーションをして、寄り添いながら、本人の治療と就労を継続してきたエピソードから、「社員の想いを大事にする事に重点をおく文化」を体現していることが伝わってきます。

 

がんに限らず、様々な事情を抱える従業員が就労を継続していくための仕組みが整えられています。

 

「生涯式場」としてお客様に寄り添うためには「在り続ける」ことが大切で、それを支える従業員が長く健康であり続けるための取り組みを進められており、企業としての一貫した温かな姿勢が伝わってきます。

 

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