活動レポート

「情報を網羅しつつ、両立支援の姿勢を示せる」ハンドブック作成ワークショップ参加者のパネルトークを公開【がんアライ部勉強会レポート】 - がんアライ部

「情報を網羅しつつ、両立支援の姿勢を示せる」ハンドブック作成ワークショップ参加者のパネルトークを公開【がんアライ部勉強会レポート】 - がんアライ部

2021年9月9日、がんアライ部の勉強会をオンラインで開催しました。テーマはがんアライ部で作成した「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」について。

 

これまでがんアライ部の勉強会を通じて、以下のような声を耳にする機会が多くありました。

 

「社内で活動を広げたいけど、どうしていいかわからない」
「制度はあっても社員に浸透させるのが難しい」
「がんと就労に関する社内の情報をまとめたいけど、そこまで手が回らない」

 

そこで部員の力を集めて、がん治療と就労に関するハンドブックの雛形を作成することに。汎用性が高く、各社で容易にカスタマイズができ、罹患社員にとって必要十分な情報が取得できるものを目指しました。

 

がんアライ部はハンドブックの提供をすることで、各社の人事担当者をサポートし、がん治療と就労に関する取り組みが各社で広がるきっかけを作りたいと考えています。

 

>>「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」の詳細はこちら

 

本レポートでは、ハンドブック作成ワークショップに参加された3名を交えて行なったパネルトークを中心に当日の様子をご紹介します。

 

<登壇者>
野村證券株式会社 人事戦略部 シニア・アソシエイト 河野さん
株式会社エグゼクティブ セールスサポート部 人事プロジェクトリーダー 田中さん
一般社団法人社会的健康戦略研究所 事務局(前職:株式会社富士通ゼネラル)玉山さん
がんアライ部事務局 河合

パネルトーク「各社の良いところを集めたハンドブックができた」

 

河合:「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」は、がんアライ部の部員の方々にお声がけをし、すでにハンドブックをお持ちの企業やイントラネット等で情報発信されている企業の皆さんを中心にご協力いただき、複数回のワークショップを重ねて作りました。まず、皆さんがワークショップに参加いただいた理由を教えてください。

 

河野:これまでがんアライ部の勉強会に参加してきましたが、学びを得るばかりだったので、何かお返ししたい想いがありました。当社はもともとハンドブックを作成していたので、お力になれることもあるかなと思ったんです。

 

田中:当社は3年前からがんアライアワードに参加し、シルバー賞をいただいていますが、実はがんに罹患した社員はまだいません。情報をまとめた簡易的な資料は用意していますが、実際に寄り添った経験値がない中で作っているので必要な情報を届け切れていないことを課題に感じていました。

 

そこでワークショップに参加することで、自社の取り組みを進めるヒントを得られると思いました。また、こうした取り組みに関わることは、会社としての姿勢を示し、社員が安心して働ける環境をつくることにつながる思っています。

 

玉山:私はがんサバイバーですが、人事担当者でがんに罹患した経験がある人は世の中にそう多くはいないと思っています。ハンドブックを作る際に、当事者が何を思い、何を感じているのか、サバイバーの視点をお伝えできればと思い参加しました。

 

河合:自社でのハンドブックの活用方法と効果について聞かせてください。社内に広まるとどういったメリットがありますか?

 

河野:新たに管理職になった社員にハンドブックを配布したり、社内で作成している「健康ワンポイント」という動画で両立支援をテーマにした際に、紹介したりして周知をしています。

 

両立支援を進める中で、ここ数年は健康意識調査を毎年社内で行なっているのですが、「病気と仕事を両立できる環境があると思いますか?」という質問に対し「そう思う」と回答する人が前年より10%程度増えました。徐々に効果が出てきているのを感じています。

 

田中:イントラネット上に「仕事と介護、育児、病気との両立の部屋」という場所があって、主にそこで健康関連の情報を発信しています。ハンドブックを載せたり、がんアライ部での取り組みを都度公開したりしているのですが、反応が直接届くことはほとんどありません。

 

ただ、見ている人はいるようで、健康診断の再検査の際に「情報があることを知って心強く感じた」という声を寄せてくれた方もいました。小さな発信でしたけど、やって良かったなと思っています。

 

玉山:当事者は突然がんがわかってびっくりしていますし、上司に話をしにくい気持ちもあります。そのような状況の中で、コミュニケーションのヒントとしてハンドブックを使ってもらえるといいと思います。

 

がんに罹患した部下を持つ上司のよくある悩みは「どうコミュニケーションをとればいいかわからない」というものです。「どこまで聞いていいの?」「家庭の事情に言及してハラスメントになるんじゃないか」といった相談を多く受けてきました。

 

もちろんケースバイケースで対応の仕方は変わるんですけど、今回のハンドブックはマネジメントをする上で何を知らなければいけないのかが分かる、有益な内容になったと思います。

 

河合:ハンドブックにまとめることにより、社員に必要な情報が届きやすくなるのが良いですよね。最後に、これからハンドブックを作る担当者の方へメッセージをお願いします。

 

河野:各社の取り組みの良いところを参考にして、本当にいいものができたと感じています。このハンドブックはPDFではなくパワーポイントなので、各社が自由に更新できるのが良いなと思います。がんアライ部のロゴも載っている(※)ので、「両立支援をする」というメッセージもより強く発信できるのではと思います。

※がんアライ部のロゴは各企業・団体のロゴに変更が可能です。

 

田中:自分たちで作っていた簡易的な資料では、「こういう働き方ができるよ」というところまでしか言及ができていませんでした。

 

一方で今回のハンドブックには治療と仕事を両立する上で必要な情報が網羅されていて、少しカスタマイズをするだけでハンドブックが完成するように作られています。ゼロイチでがんと就労に関する取り組みを自社で行う上で、すごく良いツールですよね。当社もカスタマイズして使おうと、社長と話しているところです。

 

玉山:がんに限らず他の病気にも使える内容になっています。今は病気になったからといって、仕事ができなくなる時代ではありません。

 

当事者も上司もどうしていいかわからなくなってしまうかもしれませんが、病気がありながら活躍している人はたくさんいますし、病気から学ぶこともあります。こういうツールから学べることは多くありますので、ぜひポジティブに活用していただきたいです。

 

河合:私自身、人事として自社の就業規則は読み込んでいますが、実際に両立支援をするには経験値も必要だと感じています。このハンドブックが人事の方のサポートになり、罹患した社員、そしてご家族にも見ていただけるものになるとうれしいです。

 

また、すでにハンドブックをお持ちの企業でも、時間が経つにつれて最新の動向との乖離が生じてしまいます。今回、現時点でのさまざまな企業の皆さんの知恵を集めて作成しましたので、ぜひ改定時の参考資料としてご活用いただきたいですね。

 

がんに罹患した方が、安心して働いたり、休んだりできるように

 

パネルトークの後は、実際にハンドブックを見ながらポイントやカスタマイズの箇所について説明を行いました。

 

その後は各自が実際に、自社に合わせてハンドブックをカスタマイズするワークショップを実施。その感想を交ながら、最後は4〜5人に分かれてグループで取り組みや悩み事をシェアしました。

 

 

がんアライ部発起人の桜井はハンドブックについて、「支えてもらっているのを実感できるのでは」と語ります。

 

「私はがん罹患経験者ですが、こういうハンドブックをもらえると『支えてもらっているんだな』という気持ちになれるのではと思います。私ががんになったとき、最初にもらったのは傷病手当金の申請書だったので(笑)。それも必要なことではありますが、当事者の方と一緒に、これからを考えていけるといいと思います」(桜井)

 

まさにハンドブックを作成する中で議論になったのは「誰のためのものなのか」ということ。がんに罹患した方が安心して働いたり休んだりできるように、寄り添えるものしたいと思って作っています。

 

このハンドブックが、皆さまの会社の両立支援の第一歩になると幸いです。また、内容は随時改訂して、より良いものにしていきたいと思っています。「もっとこうなるといい」というご意見や感想もぜひお寄せください。

 

>>「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」の詳細はこちら

 

 

取材・文/天野夏海

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