【がんアライアワード2021 ゴールド】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2021に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:大鵬薬品工業株式会社
事業内容:医薬品、医薬部外品、医療機器、食料品、日用品雑貨などの製造、 販売及び輸出入
従業員数:2,246人(2020年12月31日現在)
ウェブサイト:https://www.taiho.co.jp/
取り組みのきっかけやエピソード
・弊社は抗がん剤を製造販売する生命関連企業であるため、がんやその他の病に罹患した社員を温かく支援する風土があり、2000年以前から既にがんに罹患した社員に対し個別対応を実施していた。
国内でのがん患者の増加に伴い、2013年に就業規則を改定した頃から就労支援に力を入れ始め、2016年に東京都「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」受賞後、相談の充実、早期発見・予防対策の強化、支援ツール作製、社内外への発信等、さらなる発展を遂げた。
・2019年1月に人事制度を刷新したが、①個々の働き方の多様性を勘案する ②がんばる社員に報いる ③大鵬の良き文化・強みを活かす の3点を掲げ、成長し続けるプロフェッショナルの育成を重視し、がんやその他の病気で治療中の社員も、やりがい、働きがいを感じながらキャリア形成が実現する仕組みになっている。
・広報と人事が共同で作成した、がんに関連した情報をまとめた社員向けの総合ポータルサイト「C-Guide Portal」には、がんをはじめ、病気になった際に役立つ情報、病気にならないための予防、早期発見に関する情報、社員の体験記、社内で実施したがんに関するイベント記録等が記載されている。
C-Guide Portal に関連したイベントでは、がんに罹患した社員、グループ会社社員のオンライン講演会を開催。患者として、また製薬会社の社員として、双方の視点からの実体験、その中での学びを話してもらった。身近な社員からの具体的な話は、個人としても社員としても共感することが多く、また新たな気づきのきっかけとなり、参加者から大きな反響があった。
・大鵬薬品のがん就労支援に対する取り組みを、これから活動を始めようとする企業に紹介したり、既に実践している企業や団体等と情報を共有し、社会全体の活性化に貢献するよう努めている。最近は企業だけでなく、がん患者の就労支援について研究する大学院生からの問い合わせもあり、既に治療と仕事の両立支援活動を実践している企業として、社会の様々な立場の方にもっと広く内容を理解し、新しい取り組みのきかっけになるよう積極的に協力している。
・弊社社長小林による「2023年喫煙率ゼロ」宣言のもと、より積極的な卒煙対策を実施。これまでも啓発活動を行ってきたが、がん領域を主要事業領域とする生命関連企業としての責任と自覚を持ち、全社員とその家族、周りの人びとの健康を守るため、啓発活動に加えてオンライン禁煙外来・禁煙外来受診の費用補助をはじめ、喫煙と健康に関する情報、卒煙成功者の体験談を社内イントラネットで紹介したり、卒煙に成功した社員の座談会を実施し卒煙のコツを共有したりするなど、積極的な支援策を行った。
新規採用において非喫煙者であることを採用条件とし、非喫煙者であることを役職任命時の考慮要素の一つとしている。2021年の社内調査では、全社喫煙率9.2%、役員の喫煙率は0%であった。2023年喫煙率0%を目標に、さらに禁煙補助剤購入費補助や保健師による保健指導等、引き続き各種取り組みを実施中。
風土づくり
◆大鵬薬品は「私たちは人びとの健康を高め 満ち足りた笑顔あふれる 社会づくりに貢献します。」という企業理念のもと、病を克服するために薬を希望する患者さん・ご家族、患者さんのために最善の治療を模索する医療関係者等、画期的な新薬を心待ちにする人びとの勇気となり、少しでも力となれるよう、各自業務に取り組んでいる。
◆2017年 「この企業理念を実現するために、社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働ける職場環境の整備に、組織全体で取り組むことを宣言します。」と健康宣言を行った。社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働けることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考え、全社一丸となって健康増進活動を実施している。
◆会社にとって大切な「人財」である社員が、がんやその他の病気に罹患しても、離職することなく、治療しながら安心して働き続けられる職場をめざし、社内制度の充実、相談体制の整備、啓発活動、社員やその家族のQOL向上につとめている。
相談できる環境づくり
◆健康面、メンタル面のサポート
・産業看護職によるケアおよび復職後のフォローアップ
・産業医面談 (本人、産業医・看護職・人事)
・休職時、復職時に三者面談 (本人、主治医、会社側)
◆個別相談
・人事ヒアリング: 人事部担当者が、仕事の悩みや治療中の働き方等を直接聴き対応。
・自己申告制度: 会社への要望、個人的事情など伝えたい事がある場合、常時WEBで申請可能。
・キャリア相談室: 社内の産業カウンセラー、キャリアコンサルタント有資格者が対応。
・専門相談員によるヒアリング: 経験を積んだ専門相談員が、部門ごと、全社員にヒアリングを実施。
◆その他
・人事部内に 人事スタッフに加えて産業医、保健師、看護師、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター、がん治療と仕事の両立サポーターなどで構成する専門チームが必要に応じて対応している。
・病気に罹患した本人だけでなく、上司、同僚へのサポートも重視、必要であれば家族の相談も実施。
・がんやその他の病気に罹患した社員に対し、検診毎に人事部担当者が個別に面談を行い、継続的なフォローを実施。病気回復後の社員にはキャリア相談などで今後の働き方について共に考え、可能性を広げる支援をする。
・これまで実施していた対面相談や電話による相談に加え、メールやWEBを利用した相談を増やし遠隔地にいる社員、時間制限のある社員等に対しても相談しやすい体制を整備。
・社内イントラネット以外、研修、部会など社員が大勢集まる機会に相談窓口を紹介し、社員への周知を図っている。
制度・配慮
がんのみに特化した制度ではなく、その他の病気に罹患した際にも利用できる制度となっている。
◆半日有給休暇:1年につき12日分を半分(24回分)に分割して取得可能。更に、産業医療職や就労サポーターを含む会議体で、治療計画書に基づき必要性を確認した場合、25回以上の半休取得も可能。
◆積立有給休暇:消滅する有給休暇のうち失効日を迎える度に10日分繰り越せ、最大50日積立可能。
業務外の私傷病(がんを含む)のため連続5日以上の休業を必要とする時に請求できる他、有休残日数が0日になった場合、定期通院時に利用可能。
◆カムバックパス制度:結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤、私事都合による留学、がんや国が指定する難治性疾患の罹患等やむを得ない理由で退職した社員が3年以内に再雇用で復職可能とする制度。
◆休職制度:私傷病による休職の場合、休職前に有給(賞与は不支給)の欠勤期間が2カ月間あり、その後休職となる。
◆がん罹患者の休業期間延長・取得回数の制限をなくす:休職中の社員は原則、復職後6ヵ月間の中で再度 同一事由で休職する場合の休職期間は 復職前の休職期間の残期間としているが、がんに罹患し復職した社員が6ヵ月経たないで再度がんで休職する場合、休職期間はリセットされ、欠勤から開始となる。
◆リモートワーク:所属する事業場の勤務場所を離れ、自宅等で業務に従事。業務の効率・生産性の向上、通勤時間が省けることに伴う拘束時間の軽減と勤労意欲の向上、職場と住居の接近による社員の精神面のゆとりの創造を目的とする。最低週1回は出社としているが、病気など特別な事由のため配慮が必要な場合や、コロナ禍等で環境への対応が必要な場合は、完全リモートワークとしている。
◆フレックスタイム制:10:00-15:00 をコアタイムとし、6:00-10:00 および 15:00-20:00 は出退勤時間を選択することが可能。
◆コース変更:年に1回転居を伴う異動のある「総合職」と、転居を伴う異動のない「地域限定総合職」
双方向での変更の申し出ができ、子育て、介護、病気治療などその時々の状況に合わせた働き方ができる。
◆家族の介護:家族が病気になり要介護状態になった場合、介護休業は法定を上回る366日まで取得可能。また介護休業中の社会保険料は会社が全額負担。
講評・コメント
・がんやその他の病気に罹患した社員に、検診ごとに人事部担当者が個別に面談を行い、継続的なフォローを実施されています。病気回復後のキャリア相談もされており、長期的な視野にたったキャリアサポートを行われています。
・自社のがん就労支援に対する取り組みを他社に紹介したり、企業や団体等と情報共有したりと、自社だけにとどまらず社外に向けた活動を推進されています。
・「2023年喫煙率ゼロ」宣言をされ、オンライン禁煙外来・禁煙外来受診の費用補助、喫煙と健康に関する情報提供、卒煙成功者の体験談紹介など積極的な支援策を行われています。また新規採用において非喫煙者であることを採用条件とされるなど、先進的な取り組みを進められています。