がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2022ゴールド】野村アセットマネジメント株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2022ゴールド】野村アセットマネジメント株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:野村アセットマネジメント株式会社

業種: 資産運用業

従業員数: 957名(2022年3月現在)

https://www.nomura-am.co.jp/

取り組みのきっかけ

 

・新人事制度導入にあたり、がん治療に限らず、育児・介護等のライフイベントにより社員が働く機会を失わず、いかんなく成果を発揮できる労働環境を確保するための施策を検討。既に導入済みのフレックスタイム制、在宅勤務制度を含め、時代の変化に適応した改定を順次実施。

 

・社員が心身ともに健康で働くことに喜びを感じ自身の能力・個性を最大限発揮できるような環境整備に必要な施策を検討する中で、人事担当者がグループ、社内の制度、相談窓口等のわかりにくさを痛感し、周知することを意識。

 

・がんアライアワードの応募シート作成を、治療と仕事の両立支援に関する施策を振り返る機会と捉え、治療と仕事の両立を支援する風土の醸成、方針・制度の周知を強化、併せて、社員と個別にコミュニケーションする上で必要なフローを、医療職の観点を踏まえて構築。職場の上司、社員だけでなく、人事部の担当者のリテラシー向上の必要性を改めて感じ、その後の取り組みに繋げるきっかけとなった。

 

風土づくり

 

・働き方改革・健康経営ガイドラインを制定し、『社員の「働き方」に対する意識の変化を促しワークスタイルを確立するとともに、社員が心身ともに健康で働くことに喜びを感じ自身の能力・個性を最大限発揮できるような環境を整備すること』、『これらの取り組みにより、社員のエンゲージメント改善、そして一人ひとりのQuality of Life・Quality of Workが向上することで、労働生産性を改善し、持続的成長を実現すること』を宣言。

 

・ガイドラインにおいて休暇取得目標を設定し、部署ごとの達成率を公表する等、休暇を取得しやすい雰囲気を醸成。

 

・全社員に対し、フレックスタイム制(コアタイムなし)等の「裁量のある働き方」を適用し、治療と仕事の両立が可能な働き方を提供。

 

・全社員に対し、在宅勤務制度を適用。導入当社は月4回だった在宅上限を月の所定日数の6割とすることで、在宅勤務が特別なものでなく、誰もが利用する制度となった。また、個別事情を踏まえ、在宅勤務規程を超える回数、場所における在宅勤務を許可する特例措置を実施。

 

・仕事と治療の両立に関する体験談「キラッとNOMURA Life~私の体験談~」を社員に周知し、仕事と治療の両立を支援する意識を社内に醸成するとともに、がん治療に関して個別に相談があった社員へ共有。

 

・産業医、保健師と人事担当者が密に情報連携。個別の事情に合わせた面談を可能とする環境を整備。

 

・治療と仕事の両立支援ガイドブックを作成し社内ポータルサイトへ掲載。対象者を限定せず全社員に周知することで、治療が必要になった社員はガイドブックを見ることで必要な制度や支援を知ることができ、上司や同僚は治療が必要となった社員との接し方について学ぶことが可能。

 

・健康医療コラム「健康ワンポイント」(毎月更新)において、「がん検診後の精密検査」について取り上げ、2019年度より健保組合が開始した精密検査受診勧奨の状況を共有するとともに、早期発見・早期治療の大切さについて改めて訴えた。

 

・全社員向けに保健師が月に一度配信している「健康相談室たより」において、二次検査の重要性や喫煙のリスクについて啓発

 

・健康医療コラム「健康ワンポイント」(毎月更新)において、子宮頸がん」をテーマとする動画を配信。毎月、健康ワンポイントのテーマに関して議論している衛生委員会で、子宮頸がん検診受診の必要性や、受診率向上のための対策についてディスカッションし、議事録で社員へ周知することで、子宮頸がんへの理解を深めるだけでなく、健康診断の案内時、子宮頸がんに関する資料を作成し、全社員に周知。

 

・30代未満の社員の子宮頸がん検診の受診率が伸びないため、従前は指定病院での受診となっていた定期健康診断について、社員自らが病院を選択できるようにした。健診予約を自らすることで、受診のタイミングも選べるため、受診しやすさに繋がった。

 

・毎年実施している健康意識調査で、喫煙対策や、治療と仕事の両立、子宮頸がん検診等に関する質問を設け、会社で行っている取り組みの認知度を向上させるだけでなく、翌年度の施策検討に繋げている。

 

・全社員対象の「女性の健康研修」を実施。なぜいま女性の健康について性別を問わず全社研修を実施する必要があるのかについて、グループCHOと産婦人科の高尾先生との対談を動画で閲覧した上で、女性の健康に関するWebセミナーを受講する研修を実施。「女性に多い病気」編においては子宮・卵巣・甲状腺・乳がん・子宮頸がんなどの病気についてメカニズムや対策に関するリテラシー向上に繋がった。また、対談以外のWebセミナーは、社員自身ではなく、社員の配偶者や子供等の家族による閲覧も可能とし、社員だけでなく社員の家族のリテラシー向上に繋げた。

 

・部室長向けのラインケア研修を実施し、部下のメンタルヘルス問題や体調不良等に対する相談対応や職場復帰支援に関するリテラシーを向上。管理職の対応力を向上させることで、治療中だけでなく、治療前、治療後に働く上での環境整備に努めた。

 

相談できる環境づくり

 

・定期的に社員と上司が1対1でコミュニケーションを取る機会があり、業務に関すること以外にもキャリアやプライベートに関することを相談することができる。従前は四半期に一度だったが、今年度より月1回の実施とすることで、定期的なコミュニケーションが可能となった。

 

・会社の相談機関として産業医、保健師の健康相談窓口を設置、全社員へ周知。

 

社内の産業医・保健師が連携して、がん等に罹患した社員がより快適に働けるようさまざまな相談にのっている。また、人事部担当者が医療職と情報連携し、両立支援サポートする体制としている。

 

・社外の相談機関として、健康相談、医療機関情報の提供、電話・面談によるセカンドオピニオンサービス、専門医療機関への受診手配・紹介サービスの連絡先を全社員へ周知。

 

・人事部の担当者が「WorkCAN’s ワーキング・ピア・サポーター養成 合同企業研修会」に参加し、相談におけるコミュニケーション、相談した側が感じること、悩むことについて学び、治療が必要な社員とのコミュニケーションに活かした。研修会以外でも、積極的に産業医、保健師、他社の担当者にコミュニケーションの仕方を相談するなどして、社員が相談しやすい環境整備に繋げた。

 

・治療と仕事の両立支援ガイドブックを社内ポータルサイトへ掲載し、いつでも確認できる環境を整備。

 

・相談を受ける人事部担当者が、必要に応じて治療と仕事の両立支援ガイドブックを相談者と一緒に確認し、関係者と連携することで、個別事情に合わせた提案が可能。

 

・治療のために休んでいる社員と定期的にコミュニケーションし、産業医・保健師を定期的に共有。治療のために一定期間、休む場合においても、社員と会社との関係が途切れないように心掛けることで、復帰しやすい環境を整備。

  

制度

 

◆予防・早期発見の施策

・30歳以上の社員は原則無料で人間ドックを受診することが可能。女性の場合は、乳がん・子宮がん検診も無料で受けることができ、2020年度より20代女性にも子宮頸がん検診を拡大。なお、健保とのコラボヘルスの一環として、人間ドック早期受診者にはポイントを付与するインセンティブ制度を導入しており、継続受診・受診率向上に努めている。

 

・定期健診受診は業務時間とみなし、人間ドック受診時には有給の「人間ドック休暇」、二次検査受診時には有給の「二次検査休暇」を年次有給休暇とは別に付与することで、勤続期間が短く年次有給休暇の日数が限られる場合においても、健診受診できる環境を整備。

 

・定期健康診断/人間ドックの結果を踏まえ、病院での二次検査要否よりも厳しい基準で、二次検査受診勧奨を対象者へ実施。産業医、保健師、人事部担当者が個別に対応することで、個別事情を踏まえた上で、二次検査を受診しないことによるリスクを正しく理解し、早期受診に繋げている。

 

・がん検診項目で要精密検査となった社員へは健康保険組合とのコラボヘルスにより受診勧奨を実施

 

・働き方改革・健康経営ガイドラインを設け、グループおよび会社の健康経営に関する方針を周知。健康保持増進に関する社内KPIとして、健康診断(定期健康診断、人間ドック)受診率100%(6月末までに予約、9月末までの受診)を、全社で達成すべき目標として掲げた。これにより事後措置を含め、年度内に完了するように促している。

 

・健診予約率・受診率の部署毎の達成状況を月次で全社へ公表。達成状況が進まない部署に対しては、月次で実施している人事部と部室長とのHRミーティングで、部室の状況を踏まえた上で改善策を検討。

 

併せて、早期受診の必要性関するFAQを作成し、全社員へ周知することで早期受診し、必要に応じた事後措置を実施する風土を醸成。昨年度は健診受診率も100%となり、本年も半期で94%の社員が受診を完了。

 

◆罹患後の働きやすさ、治療支援制度

・半日・時間単位の年次有給休暇、復職後の医師の診断に基づく短時間勤務。

 

・全社員に対し、フレックスタイム制(コアタイムなし)等の裁量のある働き方を適用。適宜、必要な休憩を取得しながら働くことも可能。また、コアタイムがないことで、通院のしやすさに繋がっている。

 

・全社員を対象に在宅勤務制度を適用。従前の制度では月4回までだった在宅勤務を、所定労働日数の6割を上限とすることで、出社が難しい場合においても、在宅での勤務継続を可能とした。また、全社員に適用することで、”在宅勤務することが当たり前”となり、治療により在宅勤務が多くなる場合でも疎外感を味わうことがない風土を醸成。また、個別事情を踏まえ、在宅勤務規程を超える回数、場所における在宅勤務を許可する特例措置を実施。

 

・健保組合の高額療養費制度により、医療費の自己負担額が約25,000円/月に抑えられるため、経済的な心配をせずに治療に専念できる。

 

・差額料を必要とする病室に入院した場合の入院差額ベッド料補助金や、付き添い看護料、家政婦派遣費補助金等、各種給付が充実している。

 

・本人の希望、体調、主治医の診断に基づき、欠勤中、復帰後のフォローアップを実施。産業医が発行する就業上の配慮に関する意見書を所属部室長に回覧し、コメントを保健師、産業医、人事部長で共有することで、個別の事情に合わせた柔軟な対応を可能としている。また、職場の上司とも情報共有することで、欠勤中、復帰後のコミュニケーションをサポートしている。

 

◆健康増進施策

・禁煙対策として、2021年10月より就業時間内禁煙をグループで導入。同時に健康保険組合が実施しているオンライン禁煙プログラム費用の全額補助の継続や、新たに禁煙に成功した社員へポイントインセンティブを付与するサポートを実施。社内喫煙所は2021年12月末を以てすべて廃止。

 

・社員の健康増進のため、グループで実施している「NOMURA健康チャレンジ(ノム☆チャレ)」に参加。部署ごとに健康に関する取り組みをしてその様子を健康プラットフォーム「WellGo」に投稿し、取組をグループ内で共有。部署、会社の枠を超えたコミュニケーション促進を目指している。

 

・ウォーキングとランニングの平均歩数・平均走行距離をスマホアプリ上で競う企業対抗型のオンラインイベント「さつきラン&ウォーク2022企業対抗戦」に参加。運動習慣のない社員が運動するきっかけを提供。併せて、コミュニケーションの促進を目指している。

 

・全社員へ提供している健康プラットフォーム「WellGo」に健康に関するクイズやストレッチや睡眠、栄養等、様々なカテゴリの動画を掲載。健康リテラシー向上を目指している。

 

その他の取り組みやエピソード

 

相談窓口を周知したことで、健康相談を利用する社員が増え、不安に思うだけで見逃してしまう健診結果の変化を社員自らが行動し、相談できる体制が構築できた。

 

抱負

 

引き続き、治療と仕事を両立する環境の整備を目指し、がんに罹患した社員にとって、会社が、少しでも安心できる場所となり、治療が必要な社員だけでなく、上司、同僚、人事部の担当者が迷わずに支援できる環境となるべく、治療と仕事に両立に繋がる制度の拡充や、社内全体のリテラシー向上を目的とした情報発信の実施を継続していきたい。

 

今後は、チーム、部署、グループの枠を超えて、自身が治療を経験した社員、家族の治療を支えた社員との繋がりを提供できる環境構築に向け、社内外での座談会などを企画する等により、社員同士のコミュニティのきっかけを作ることで、より実態に即した情報共有や、共に闘う仲間がいることを意識できる環境整備を目指したい。

 

これらの取り組みにより、社員一人ひとりが更にいきいきと働ける風土づくり、環境づくりを進めていきたい。

 

講評・コメント

 

・「風土づくり・環境づくり・制度づくり」全体が進化されており、取組への本気度が伝わってきます。

 

・部室長向けのラインケア研修や、人事部の担当者が「WorkCAN’s ワーキング・ピア・サポーター養成 合同企業研修会」への参加など、積極的に学びの機会を設けられてます。

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