がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2023ゴールド&ベストプラクティス】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2023ゴールド&ベストプラクティス】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:大鵬薬品工業株式会社

業種:医薬品、医薬部外品、医療機器、食料品、日用品雑貨などの製造、 販売及び輸出入

従業員数:2,170名(2022年12月31日現在)

https://www.taiho.co.jp/

働く人を支える制度・ 体制

 

【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明

健康経営宣言/がんアライ宣言/その他の宣言

 

■大鵬薬品は「私たちは人びとの健康を高め 満ち足りた笑顔あふれる 社会づくりに貢献します。」という企業理念のもと、病を克服するために治療薬を希望する患者さんとご家族のために最善の治療を模索する医療関係者等、画期的な新薬を心待ちにする人びとの勇気となり、力となれるよう、各自業務に取り組んでいる。

 

■2017年「この企業理念を実現するために、社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働ける職場環境の整備に、組織全体で取り組むことを宣言します。」と 健康宣言を行った。社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働けることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考え、全社一丸となって健康増進活動を実施している。

 

■がんアライアワード2019の応募時に「がんアライ宣言」 を行い、受賞決定後に社内外に公表。宣言したことで、がん治療と仕事の両立に対する会社の方針が明確になり、社内で支援活動の理解が高まり協力者が増えるとともに、社外からも大鵬の積極的な取り組みへの賛同や情報共有の問い合わせがある等、周囲とのつながりと活動の場が広がった。

 

■社長による 「2023年喫煙率ゼロ」宣言のもと、2020年から積極的な卒煙対策を実施。これまでも啓発活動を行ってきたが、がん領域を主要事業領域とする生命関連企業としての責任と自覚を持ち、全社員とその家族、周りの人びとの健康を守るため、オンライン禁煙外来・禁煙外来受診の費用補助をはじめ、喫煙と健康に関する情報、卒煙成功者の体験談を社内イントラネットで紹介、卒煙に成功した社員の座談会を実施し卒煙のコツを共有したりするなど、積極的な支援策を展開してきた。

 

新規採用においては非喫煙者であることを採用条件とし、非喫煙者であることを役職任命時の考慮要素の一つとしている。社内調査では、2020年の全社喫煙率は15%であったが、2021年9.2%、2022年5.6%、2023年4月2.2%と着実に減少している(役員、部門長の喫煙率は0%)。禁煙補助剤購入費補助や保健師による保健指導、喫煙者全員ヒアリング、社長から喫煙者への手紙といった新たな施策を実施し、2023年末までの目標が達成できるよう取り組みを継続して進めている。

 

【2】休暇制度

傷病・病気休職制度/失効有休休暇積立制度/半日単位の有給休暇取得/時間単位の有給休暇取得

 

■半日有給休暇

1年につき12日分を半分(24回分)に分割して取得可能。更に、産業医療職や就労サポーターを含む会議体で、治療計画書に基づき必要性を確認した場合、25回以上の半休取得も可能。

 

■時間単位の有給休暇

2022年4月に導入、1時間単位の有給休暇を1年につき5日分取得可能。

 

■積立有給休暇

消滅する有給休暇のうち失効日を迎える度に10日分繰り越せ、最大50日積立可能。業務外の私傷病(がんを含む)のため連続5日以上の休業を必要とする時に請求できる他、有休残日数が0日になった場合、定期通院時に利用可能。

 

■休職制度

私傷病による休職の場合、休職前に有給(賞与は不支給)の欠勤期間が2カ月間あり、その後休職となる。

 

■がん罹患者の休業期間延長・取得回数の制限をなくす

休職中の社員は原則、復職後6ヵ月間の中で再度同一事由で休職する場合の休職期間は復職前の休職期間の残期間としているが、がんに罹患し復職した社員が6ヵ月経たないで再度がんで休職する場合、休職期間はリセットされ、欠勤から開始となる。

 

■定年後雇用延長の社員、契約社員については、ご本人やご家族でがんやその他の疾患・介護等の心配もあることから、2023年より現役時代に保有していた積立有給休暇の一部延長と、新たな積立が可能になった。

 

【3】勤務制度

時差出勤制度/フレックス勤務制度/在宅勤務(テレワーク)制度/サテライトオフィス勤務制度/カムバックに関する制度(離職した社員の再雇用に関する制度)/その他の勤務制度

 

■フレックスタイム制

10:00-15:00 をコアタイムとし、6:00-10:00 および 15:00-20:00 は出退勤時間を選択することが可能。

 

■リモートワーク
所属する事業場の勤務場所を離れ、自宅等で業務に従事。業務の効率・生産性の向上、通勤時間が省けることに伴う拘束時間の軽減と勤労意欲の向上、職場と住居の接近による社員の精神面のゆとりの創造を目的とする。最低週2回は出社としているが、病気など特別な事由のため配慮が必要な場合や、コロナ禍等で環境への対応が必要な場合は、完全リモートワークとしている。また家族の介護などの理由で自宅以外の場所でのリモートワークも申請により実施可能。

 

■時間単位の有給休暇

1時間単位の有給休暇を1年につき5日分取得可能。

 

■コース変更

年に1回 転居を伴う異動のある「総合職」と、転居を伴う異動のない「地域限定総合職」双方向での変更の申し出ができ、子育て、介護、病気治療などその時々の状況に合わせた働き方ができる。

 

■家族の介護

家族が病気になり要介護状態になった場合、介護休業は法定を上回る366日まで取得可能。

 

■カムバックパス制度

結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤、私事都合による留学、がんや国が指定する難治性疾患の罹患等やむを得ない理由で退職した社員が3年以内に再雇用で復職可能とする。

 

■サテライトオフィス

コロナ禍でのトライアルとして、2023年12月末まで社内またグループ会社で受け入れ可能なオフィスに限り、事前予約することでサテライトオフィスでの勤務が可能とした。

 

■上記に加え、がんやその他の病気に罹患しても働く意欲のある社員については、所属本部との調整により契約社員として勤務日数・時間の短縮等で勤務を継続する場合がある。

 

【4】支援体制

社員相談窓口の設置/保健師・産業医等の医療職の支援/外部支援サービス(EAP等)の活用/上司等との1on1、面談等の機会/人事担当者等との面談等の機会/主治医との書面上での情報連携/人事担当者等による受診時同行(主治医との直接の意見交換)/(休職を要さない場合)両立支援プランの策定・実行/休職中のフォロー/(休職した場合)職場復帰支援プランの策定・実行/復職後のフォロー/その他の支援体制

 

■健康面、メンタル面のサポート

・産業看護職によるケアおよび両立支援プラン作成、復職後のフォローアップ  

 

・産業医面談 (本人、産業医・看護職・人事)

 

・休職時、復職時に三者面談 (本人、主治医、会社側)

 

・健康診断、人間ドック後の異常所見・異常検査値についての産業看護職による受診干渉

 

■個別相談

・医療職による相談

健康診断、人間ドック後の産業看護職による個別相談。

 

・人事ヒアリング

人事部担当者が、仕事の悩みや治療中の働き方等を直接聴き対応。

 

・専門相談員によるヒアリング

経験豊富な専門相談員が、部門単位で、全社員にヒアリングを実施。

 

・キャリア相談

社内の産業カウンセラー、キャリアコンサルタント有資格者が対応。

 

・職場の悩み相談窓口

ハラスメント、職場の悩み等、社外カウンセラーに匿名で相談可能。相談者の意思に基づき社内窓口との連携も可能。

 

■その他

・人事部内に産業医、保健師、看護師、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、両立支援コーディネーター、がん治療と仕事の両立サポーターなどで構成する専門チームが必要に応じて対応している。

 

・病気に罹患した本人だけでなく、上司、同僚へのサポートも重視。必要であれば家族の看護・介護の相談も実施。

 

・がんやその他の病気に罹患した社員に対し、人事部担当者が適宜面談を行い、継続的なフォローを実施。病気回復後の社員にはキャリア相談などで今後の働き方について共に考え、支援をする。

 

・これまで実施していた対面相談や電話による相談に加え、メールやWEBを利用した相談を増やし、遠隔地にいる社員、時間制限のある社員等に対しても相談しやすい体制を整備。

 

・社内イントラネット以外でも、研修、部会など社員が大勢集まる機会に相談窓口を紹介し、社員への周知を図っている。

 

・全社員とそのご家族向けに 「健康経営パンフレット」 を作成し、その中に「検診・人間ドック」や「治療と仕事の両立支援」を記載し、周知。

 

・家族の人間ドック受診率向上のため、2023年8月予約方法等を記載した受診促進の案内と、家族が受けられる制度を記載した「健康経営パンフレット」を、被扶養者へ直接郵送。

 

・家族ががんに罹患した際も、人事部員や産業看護職が相談に応じ、社員の看護と仕事の両立を支援。

 

【5】健康増進支援 

健康診断受診率増加に向けた取り組み/健康診断受診率100%達成/がん等の任意検診受診費用の補助/人間ドッグ費用の一部補助/健康診断で「要検査」となった人のサポート/必要に応じた産業医・保健師の面談/定期的な産業医・保健師との面談/禁煙に関する取り組み/日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)/健康増進イベントの開催/健康管理に関するアプリの配布/休憩室の整備  /その他健康増進支援 

 

■定期健康診断受診の徹底(100%実施)。定期健康診断受診後、結果確認および社内基準値を超える社員に対する受診勧奨、産業医による就業区分判定や就業制限基準に基づいた安全配慮の実施、対象者別の保健指導などを通して、健康管理意識の向上および健康管理を強化。2010年からは健康管理システムを導入し、全社員の経年データを一元管理している。

 

■人間ドックの推進は、がんをはじめとした病気を自覚症状のない未病状態での早期発見・早期治療へつなげる重要な施策として位置づけ、社内イントラネットでは、年齢や性別ごとに重要な検査事項を示し、社員の受診動機につながる工夫をしている。また、定期健康診断として代用を認め就業時間中の受診を認めている。

 

30歳以上の社員および被扶養者は、会社指定の期間に人間ドックを受診すると、6万円を上限に健康保険組合と会社の補助により無料としている。がん罹患のリスクが高まる40歳以上に対しては、受診率に目標値を定めて積極的な受診を促している。

 

■歯の健康に関して、日々のホームケアの他、口腔ケアの定着として、定期的なスケーリングの機会につなげるため、歯科検診の費用補助(上限2千円、年1回受診分まで)を実施し受診を推進している。

 

■新型コロナウイルス禍における運動機会と社員間のコミュニケーション機会提供する目的で、2020年5月から約6週間にわたり毎日10分間の全社オンラインストレッチタイムを実施。2021年2月にはスマートフォン運動実行支援アプリを全社導入。5月に同アプリを活用した新しいスタイルの社内運動会を実施し、全社参加率は60%を超えた。

 

その後年に2回、春と秋に同アプリを利用した運動イベント、スポーツ専門講師によるオンラインレッスンのライブ配信、ウォーキングイベント等を開催し、社員が楽しみながら健康増進をはかる取り組みを実施した。2023年からは派遣社員も参加可能となり、本年10月も新たな健康増進イベントを実施中。こうした取り組みが評価され、2021年より2年連続で「スポーツエールカンパニー」に認定。

 

■2022年4月より健康保険組合で婦人科産業医・高尾美穂医師への相談窓口を開設。婦人科がん、月経やPMS、更年期障害など幅広い女性の健康の悩みの相談が可能。

 

■2022年11月、がんに罹患したことのある社員とその上司を対象に、会社の制度、支援、仕事との両立などについて人事部健康支援課でアンケートを実施。その中で了承を得た社員には、両立支援担当者が個別にインタビューを行い、会社の支援に対しての意見や感想 、「もっとこうして欲しかった」 という要望など、今後の施策につながる思いを直接聴いた。

 

■健康保険組合では、2023年9月を子宮頸がんウイルスチェック(郵送HPV検査)月間とし、がんの早期発見、自身の健康管理に役立ててもらうため、30歳未満の女性被保険者限定で、自己負担0円で受けられるセルフチェックキットを用意した。全社掲示版での社員への案内に加え、該当対象者には直接メールで案内を送り、周知徹底はかった。

 

■2023年10月に骨密度、体成分、全身反応(俊敏性のチェック)、AGEsの4項目を測定し、自身の体の状態を知り、興味を持ってもらえるように、就業時間および昼休憩の時間を使って気軽に参加できる 「健康チェック」 イベントを開催。

 

【6】その他の制度・体制

■人事部内でスマートワーク実現化チームを発足し、長時間労働や時間管理について検討。1回/月、1回/週のノー残業デー(セルフケアデー)の実施やeラーニング・掲示版による情報発信、各種研修を通じた啓発を行っている。

 

社内の健康管理時間の可視化を実施し、通常の過重労働対策に加え、営業のみなし労働者や管理職への健康管理も実施。「プラスdeハッピーホリデー」と称し有給休暇取得強化日を決め、社員へ啓発を実施している。

 

海外関連の業務も増えてきているので、2023年からは、「シフト勤務のパターン拡大」・「勤務間インターバル」への意識付けの啓蒙を開始。

 

■2021年9月に本社が新社屋に移転した。新しい建物ではダイバーシティの面でもいくつか考慮した部分がある。気分が悪くなった社員のための休憩室にはベッドの他、リクライニングチェアを置き、また緊急時に連絡できるようブザーを設置するなどの点が加わった。がん患者への配慮の例として、誰でもトイレを設置しストーマへの対応が可能になった。

 

■2023年6月、埼玉県飯能市の研修センターが改装オープン。新しくなった研修センターには誰でもトイレが設置されている他、バリアフリーの部屋が2つあり、車いすでそのまま部屋に入って過ごすことができるように、水回りも段差がない構造になっている。この施設は地域の避難提携先にもなっていて、非常時には地域住人にも誰でもトイレをご利用いただきストーマへの対応を可能としている。

 

働く人を支える風土、環境

 

【1】啓発、研修

社員向けのがんに関する研修/上長・管理職向けの両立支援に関する研修/女性向けのがんに関する研修/がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供/罹患者の体験談を聞く機会の提供/その他啓発、研修 

 

■現場主体のMRにも、継続研修で治療と仕事の両立支援についての e-learning を行い、グループ討議なども入れながら、治療中の患者さんが仕事をする様子をイメージし、社会の動きの理解、会社での対応について学んでもらった。

 

■相談を受ける側の人事部員も更なる研鑽に励み、両立支援コーディネーター、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、公認心理師等の資格取得者が年々増え、業務に役立てようと努力を続けている。

 

■毎年人事部から何名か、両立支援コーディネーター研修に参加し、2023年現在人事部で7名が受講完了。人事部以外でも受講希望者が多く今後更に増える見込み。

 

■セルフケア教育・ラインケア教育を通じてメンタルヘルスケアの重要性について全社員に啓発し、マネジメント職層には大阪商工所主催のメンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種ラインケアコース資格試験を義務づけるなど、知識の普及や組織的な健康管理を図っている。2023年10月時点で同検定Ⅱ種ラインケアコースは全社員のうち780名、Ⅰ種マスターコースは9名が取得。

 

■健康保険組合には女性の健康についての相談窓口があり、年代やライフステージごとに異なる女性特有の不調(月経関連の症状や疾病及びPMS、更年期障害等)について、婦人科医に気軽に相談することで、「自分らしく過ごせる日々をサポートすること」と「働きやすい職場作りをサポートすること」を目指している。

 

2022年10月に 「女性の健康セミナー~女性の健康課題の正しい理解と対処方法~」 と題して婦人科産業医による講演があり、その後、社員のみならず家族も対象に動画配信が行われた。

 

■2023年4月入社の新入社員研修の中の導入ワークでは、社会人として、また製薬企業の社員として一歩踏み出す若者に向け、一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみさんにご講演いただいた。

 

■2023年8月より がんに罹患した社員を支えるメンバー(産業看護職・両立支援コーディネーター含む)で、がん勉強会を定期的に開催。抗がん剤治療に関する知識(抗がん剤概論、各がん種毎の治療法、副作用等)の習得や、都度メンバーでディスカッションを実施し、これまで以上にがん罹患社員へ寄り添うことを目指している。

 

■2023年9月にがん患者さんのご家族による講演会を実施。全国の営業・管理部門・研究開発部門などの幅広い部署から参加できるよう、ランチタイムにオンラインで開催した結果、400名近くが参加。また、ご家族から直接、病気の経過、治療と仕事、介護の両立、生活、家族、薬への期待などの話を聞くことで、製薬企業の社員として「患者のために」をより強く意識し、役割を理解することができた。

 

【2】情報発信

イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信/社内報等での情報発信/両立支援に関するハンドブック・ガイドブックの配布/罹患者の体験談を見られる機会の提供/その他情報発信

 

■広報と人事が共同で作成した、がんに関連した情報をまとめた社員向けの総合ポータルサイト「C-Guide Portal」には、がんをはじめ、病気になった際に役立つ情報、病気にならないための予防、早期発見に関する情報、社員の体験記、社内で実施したがんに関するイベント記録等を記載している。

 

■C-Guide Portal に関連したイベントでは、がんに罹患した社員、グループ会社社員のオンライン講演会を開催。患者として、また製薬会社の社員として、双方の視点からの実体験、その中での学びを話してもらった。身近な社員からの具体的な話は共感することが多く、また新たな気づきのきっかけとなり、参加者から大きな反響があった。

 

■C-Guide Portalの中で、定期的に 「スワンスワン(吸わん)デー」 として、22日に卒煙につながるような記事を配信している。最新の記事としては、2023年9月22日 「早期に禁煙していた⼈は肺がんになっても死亡リスクが低い」 として、今年5月に発表された論文を紹介した。

 

■大鵬薬品のがん就労支援に対する取り組みを、これから活動を始めようとする企業に紹介したり、既に実践している企業や団体等と情報を共有し、社会全体の活性化に貢献するよう努めている。

 

社内の取り組み以外に、他社、健康関連団体、大学、大塚グループ内の他企業の衛生委員会での講演など普及活動を行い、既に治療と仕事の両立支援活動を実践している企業として、社会の様々な立場の方がもっと広く内容を理解し、新しい取り組みを始めるきっかけとなるような働きかけを実施。

 

■「がんに罹患した社員の就労支援ガイド」 を2016年に作成したが、内容を大幅に見直した改訂第5版を2023年1月にリリースした。本ガイドは、「本人」「上司」「同僚」「家族」に分け、それぞれの立場で「がんと診断された時」「休職中」「復職時」「復職後」各段階での「具体的な行動」と「利用できる制度・システム」について記載している。

 

今回、色や図で視覚面でより分かりやすくしたほか、Q&Aを増やし、状況を具体的にイメージしやすいように改善した。がんに限らず他の病気の場合にも利用可能な内容になっており、健康保険組合、高額医療費制度、がん情報サービス等、必要情報に直ぐにアクセスできるよう URLの他QR コードも掲載し利便性を高めた。

 

■2023年5月「患者団体と協働する」「患者団体と対話する」「患者団体の声を直接聴く」「患者団体に直接届ける」活動を促進すること、および関連法規等を遵守し適切に活動することを目的とした「患者団体との協働のためのガイドブック」を、関連部署が作成。

 

また近年日本の製薬業界で広まりつつある「Patient Centricity」についての情報(患者さんの声・社内の取り組み・社外の取り組み)を共有するためのサイトも開催し、部門横断で患者さんに寄り添った真に意義のある活動を促進している。

 

■これまで人事部を中心に取り組んできた治療と仕事の両立支援について関連部署に協力を仰ぎコンテンツとしてまとめ、それぞれの立場での内容として、一般職から管理職まで全ての階層に向けに公開した。

 

【3】コミュニティ

その他のコミュニティ

 

■病気に罹患した社員から医療職や人事担当者に相談があった際に話を聞くと、病気であることは必要最小限の範囲にしか公表したくない、なるべく広めないでほしいという要望が多い。そうした社員の気持ちを尊重し、また病状も仕事の内容も職場環境も人それぞれ異なるため、がん罹患者を同じ枠の中でまとめることは難しく、治療中の社員から患者同士の交流の場を求める声がないため、会社(人事部)はがん罹患者が参加するコミュニティのような場を設けていない。

 

社員から、過去の事例や同様のケースについて聞かれた際は、可能な範囲内で情報を伝えたり、個々に合わせた対応を行っている。

 

■研究本部を中心に、社員のエンゲージメント向上を目標として、一人一人が仕事や本部の垣根を越えて、人と人のつながりの場をつくることを目的としたプロジェクトがあり、その活動の一つとして、2023年6月にがん患者との協働についてのイベントが開催され、研究者はじめ多くの社員が参加した。

 

【4】対外的な活動

がんに関する公的機関の委託事業等へ参画/がんに関する民間団体等への参画/がんに関する社会的な活動への参加/がんに関する社会的な活動への協賛/がんに関するイベント・セミナー等への登壇/その他の対外的な活動

 

■がんとの共生社会づくりを目指した朝日新聞社主催の「ネクストリボン」には、2016年のプロジェクト立ち上げ時から関わり、毎年ワールドキャンサーデーに開催される2月4日のイベントに参加し、がんになっても安心して働き、暮らせる社会、がん検診を受けるのが当たり前の社会づくりに協力している。

 

■2021年から毎年、社外の「ピアサポーター育成研修」、マギーズ東京等主催の社外団体開催のセミナー、情報交換会などにも、人事部員だけでなく、他部署の社員も多数参加し、社会の状況を知ると共に、学んだことを自分たちの職場での活動に反映させている。

 

■2021年から厚生労働省の「治療と職業生活の両立支援事業」における治療と仕事の両立支援のための新たなマニュアル作成委員会の「環境事業場における環境整備マニュアル作成部会」の委員として企業の立場から協力してきたが、2023年3月に「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」や「企業・医療機関連携マニュアル」を補完する資料が公開された。

 

■2022年10月 医薬品産業界向け雑誌「Monthlyミクス誌」で大鵬の治療と仕事の両立支援の取り組みについての記事 「病気でも安心して仕事を継続できる企業に 治療と仕事の両立支援こそ製薬企業の使命」が掲載された。

 

■2023年8月開催のジャパンキャンサーフォーラムにおいて、一般社団法人がんと働く応援団/株式会社パソナ キャリア形成・学びなおし支援センター共催による「がんのケースから考えるキャリア支援」において、治療をしながらのキャリア支援をする企業として大鵬の事例を紹介した。

 

■がんアライアワード受賞や厚生労働省主催シンポジウムでの講演等により、各地の産業保健総合支援センターや公共職業安定所などから問い合わせがあり、施設の専門家や職員の方に私共の活動について説明する機会が多くなった。それがきかっけとなり、事業主・産業医療職に向けた講演依頼を受け、社会への貢献にもつながっている。

 

(例)2022年11月 埼玉産業保健総合支援センター主催の治療と仕事の両立支援セミナー/2023年11月 徳島公共職業安定所主催セミナーで講演予定

 

【5】その他の風土・環境

■人事、総務部員で構成するダイバーシティのプロジェクトがあり、介護、LGBTQ、不妊治療等 社会や環境の変化に伴う課題について勉強会や、制度変更の検討など実施している。

 

■2015年から仕事と介護の両立支援セミナーを実施。外部から専門講師を招き、介護についての基礎知識、仕事と介護の両立、介護とお金等テーマを決め、数回実施。2023年は9月にオンラインで実施し、100名以上の社員が参加した。またこれとは別に、介護に関連する社内の制度についての説明するランチセミナー等も実施し、気軽に参加できる機会を設けた。

 

■毎年全社、各部署で風土サーベイ、マネージメントサーベイを実施し、各部署の風土の改善を実施。

 

エピソード・思い

 

大鵬のがん患者の就労支援は、開始当初から現在に至るまで人事部が中心となって取り組んできました。近年は他部署による活動が盛んになり、それぞれの部門の特長や専門性を活かし、その職場にいる社員だからこそできる特別な取り組みも多くみられるようになり、広く良い形で浸透しつつあることを嬉しく思っています。

 

また社内だけではなく、グループ会社、他企業・他団体と、治療と仕事の両立に関しての交流が盛んになり、お互いに良い影響を与えながら成長していく機会が広がったことも大変喜ばしいことです。

 

今回のこちらの応募に記載している内容は、社内で見聞きしていることや、身近で起きたことが中心です。人事部で把握していない社内での活動で、個人や社会に役立つ素晴らしい事例は他にも多くあると思われます。そうした表には出ませんが、有意義な活動をしている社員のモチベーションが維持できるような職場になるよう、環境を整え、次の新しい活動につながる風土づくりを今後もすすめていきたいと思います。

 

【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ

■弊社は抗がん剤を製造販売する生命関連企業であるため、がんやその他の病に罹患した社員を温かく支援する風土があり、2000年以前から既にがんに罹患した社員に対し個別対応を実施していた。国内でのがん患者の増加に伴い、2013年に就業規則を改定した頃から就労支援に力を入れ始め、2016年に東京都「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」受賞後、相談の充実、早期発見・予防対策の強化、支援ツール作製、社内外への発信等、運用の充実を図ってきた。

 

■ 2019年1月に人事制度を刷新したが、1.個々の働き方の多様性を勘案する、2.がんばる社員に報いる、3.大鵬の良き文化・強みを活かす、の3点を掲げ、成長し続けるプロフェッショナルの育成を重視し、がんやその他の病気で治療中の社員も、やりがい、働きがいを感じながらキャリア形成が実現する仕組みになっている。

 

【2】他社の担当者への応援メッセージ

事業主も、企業の人事・総務担当の方も、完璧な制度・完璧な体制を求めがちですが、「相談してくれてありがとう」、「お互い様」 の気持ちで、今ある制度で 「まず、始めてみる」事が大事です。 完璧を求める前に、お互いの声に耳を傾けて、始めた後で修正していくのも良いのではないでしょうか。 広く周知して、みなでお互い様になることが大事です。

 

がんアライ部をはじめ、いろいろなところに仲間がいますので、そのような方々ともつながり、「当たり前」になるように、一緒に歩んでいきましょう!

 

講評・コメント

 

従業員の健康に対し手厚いフォローを続けられていますが、2023年には喫煙率の大幅な低減や定年後雇用延長の従業員に対する有給休暇の積み立て対応など、より安心して働ける環境づくりを進められています。

 

継続的な取り組みにとどまらず、相談窓口やアンケートなどで意見を吸い上げられ、幅広く取り組みを前進されており、治療と就労の両立支援を進める他企業にとって貴社の事例は大いに参考になるものです。

 

※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。

 

>>「がんアライアワード2023」受賞企業一覧はこちら

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