【がんアライアワード2023ダイヤモンド】花王株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ダイヤモンド受賞:花王株式会社
業種:家庭用製品、化粧品、食品、工業用製品の製造、販売
従業員数:8,403人(連結対象会社合計 35,411人)
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
■健康経営宣言
2008年にトップメッセージとして花王グループ健康宣言をおこない、健康経営を推進、2021年には健康宣言をリニューアルし、健康支援の取り組みを、社員、家族、地域、生活者へ広げていくことを宣言しました。「健康づくり」6つの取り組み(1. 生活習慣病、2. メンタルヘルス、3. 禁煙、4. がん、5. 女性の健康6.シニア)を中心に健康づくり活動を推進しています。花王では、「ヘルスリテラシーの高い社員を増やす」ため、健康づくり活動の見える化をすすめ、PDCAサイクルを回しながら社員の健康度を上げていく「健康経営」に取り組んでいます。
■がんアライ宣言
がんアライアワード応募時に宣言。
【2】休暇制度
■私傷病休暇、看護・介護休暇
がんを含む私傷病に対する支援として、有給の「私傷病特別休暇(勤続・年齢により20勤務日・40勤務日)」、家族の看護・介護対する支援として「看護・介護特別休暇(勤続・年齢により20勤務日・40勤務日)」が付与されており、入院や通院による治療のために利用することができるため、社員自身の治療(入院・通院)および、社員の家族の疾病等に伴う看護ケアに集中することが可能。
■半日単位、時間単位の有給休暇
年次有給休暇は、1日単位、半日単位(半日休暇)だけでなく、1時間単位(時間単位休暇)で取得することが出来るため、がんに罹患した際も、働きながら治療・通院ができ、フォローアップの診察等も定期的に受診が可能。
【3】勤務制度
■在宅勤務制度
出社と在宅勤務を組み合わせて働くことができる。在宅勤務は、各部門が設定する業務特性や組織運営上の利用上限の範囲内で、がんなどを含む私傷病の通院の場合にも、事由を問わず利用することが可能。
■フレックス勤務、時差出勤制度
月間フレックスタイム制を導入しているため、1ヶ月単位の変形労働時間制に基づき、1ヶ月の所定就業時間を変更することなく、1日の就業時間を延長又は短縮裁量で勤務時間を柔軟に決めることができるため、治療と仕事の両立がしやすい環境が整っている。
■試し出勤、リハビリ出勤制度
疾病や傷病により休暇・休職に入るときから復帰後の対応の流れを示した職場復帰ガイドラインがあり、本人の職場復帰に向けて、本人、上長、人事、産業看護職が、確認しあいながらスムーズに復帰できる体制が取られている。
【4】支援体制
■医療職の支援
各事業場には健康相談室があり、産業医・看護職に社員が困ったことを相談できる体制を整えている。
■相談窓口の設置
相談室専用のメールアドレスや女性の健康相談窓口等もあり、様々な方法で相談することが可能。
■3者面談
社員が疾病を抱えながらも不安なく働き続けられるよう産業保健スタッフが定期的なフォローアップを実施するとともに、疾病を抱えながらの働き方について、上司、人事、産業医、看護職が本人と相談をしながら最適な働き方を共に考えている。
■外部支援サービス
罹患後の社内のキャリアや仕事の悩みについては、社内カウンセラーに相談をしたり、こころの不安については、外部EAPに相談したりすることもできる。
【5】健康増進支援
■健康診断、がん検診
がんの早期発見と早期治療のため、定期健康診断にがん検診項目があり、女性に関しては、乳がん・子宮がん検診も健診項目に含まれている。若年女性のがんの罹患もあることから、若年層からのがん検診も推奨。健康診断結果を受け、健康相談室からの二次検査の受診勧奨や再検査後のフォロー体制も充実。
【6】その他の制度・体制
■疾病お見舞金
社員間の共済会からは、休業に伴い、見舞金が支給。
■高額医療費、休業補償
健康保険組合からは、医療費が高額になった場合、一定の基準に基づいて計算した自己負担額の限度額を超えた場合、超えた額が「高額療養費」として支給。加えて、休業中に給料等の支給がない場合は、「傷病手当金・傷病手当付加金(給与の85%)」が支給。
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
■メンタルヘルスラインケア研修 外部講師を招いてオンラインセミナー実施。
■アンコンシャスバイアス研修、心理的安全性研修などのe-leraningを実施。
【2】情報発信
■社内情報発信
社員の健康に関するルールや情報を事業場の安全衛生委員会等やイントラネットを通じて、社員へ分かりやすくお知らせするとともに、社員が病気に罹患し、就業が困難となりうる場合は、まずは相談しようという(上司・人事・産業保健スタッフ)風土づくりを心がけている。
■女性の健康情報発信
産業医が作成する「Kao Women‘s News」を、四半期に1回の頻度でイントラネットへ全社員に向け掲載。健康診断開始時期に合わせて、がん検診の大切さやセルフケア方法についての情報提供を行っている。
■東京都保健医療局で作成したがん動画、仕事と治療の両立支援ハンドブックを活用し、社内の健康ポータルサイトへ掲載し社員へがんに関する情報を周知している。
【3】コミュニティ
花王グループの聴覚に障がいをもつ社員と聴者の社員が、有志で「KAKEHASHI(かけはし)」社内コミュニティを立ち上げ、職場や生活の場で生じる課題共有や課題解決に向けた取り組みを行っている。
今年は相互コミュニケーションに不可欠な情報補償ツールのガイドブック作成や、化粧品店頭での相互コミュニケーションツール開発なども行った。多様な社員が集うコミュニティで活動を行うことで、がんと就労にも不可欠な相互理解を促す風土づくりにチャレンジしている。
【4】対外的な活動
■ピンクリボンキャンペーン
2007年から「花王グループ ピンクリボンキャンペーン」を実施しています。乳がんのみならず、ご自身や大切な人の健康を考えるきっかけとしていただきたいと考え、社内外に対して様々な活動を行っています。
<花王グループ ピンクリボンキャンペーン例>
☆ピンクリボンやピンク色のものを身に着けた写真を投稿することで、1人につき50円を、キャンペーンが社員に代わり、がん教育プロジェクトに寄付する社内企画「ピンクリボンフォト募金」を2016年から実施しており、延べ8125人が参加してまいりました。世代、性別に関係なく誰でも広く参加できる企画ですので、これまでピンクリボンと関わりづらかった男性社員も多く参加しており、乳がんやピンクリボン、健康について語らいやすい風土づくりや、検診受診に繋がっています。
☆認定NPO法人乳房健康研究会監修のもと、花王グループオリジナルのセルフチェックメソッドを制作しました。日々の入浴や保湿のルーティンに組み込みやすいよう意識し、セルフチェックの習慣化をめざしています。このメソッドをコーポレートやブランドでのピンクリボンキャンペーンにてより周知するとともに、メソッドを記載した防水のシートを制作し、社外はもちろん、社員にも渡す機会をつくり、社員本人や被扶養者への情報伝達、ブレストアウェアネスの機会創出に取り組んでいます。
☆「あなたと、あなたの大切な人のために」のスローガンに沿って、社員本人だけでなく家族と一緒に乳がんや健康について考えるきっかけとなることを目指し、社員の家族も一緒に参加できるオンラインセミナーを実施しています。乳がんを経験した講師による体験談や、産業医から花王グループの状況などを共有しました。
★2018年より認定NPO法人乳房健康研究会主催のピンクリボンアドバイザーによるがん教育プロジェクトを支援しています。がんを経験したピンクリボンアドバイザーが外部講師として中学校・高校を訪問し、がんに関する基本的な知識やご自身のがんの体験談などを語るがん教育プロジェクト。がんへの正しい理解と、がん患者や家族への理解を深めることを通して、健康や命の大切さを学ぶ機会、さらにアドバイザー自身の体験を活かした活躍の場の提供にもつながっています。働く親世代の「がんと就労」が当たり前になる時代に向けて、がんを理解し、支え合える社会づくりには、子ども世代へのがん教育活動支援も不可欠と考えています。
■国立がん研究センター中央病院の産学共同MASTER KEYプロジェクトと一般社団法人日本希少がん患者会ネットワークが、希少がんの臨床試験の啓発を目的に開催した「希少がんコミュニティ オープンデー」に参画しました。花王からはハンドトリートメントやヘッドトリートメント、メイク体験ができる展示ブースを開設し、ご自宅でも実践できるケアの情報をご提供。(23年5月)
■AYA世代のがん経験者の団体アグタス(AYA GENERATION + group)さんのオンライン交流会に参画し、「がんになってもかわいいを諦めない」をテーマに、ウィッグとメイクのビューティーショー動画を作成し、病気の有無に関わらず、おしゃれで前向きな気持ちになる提案を行いました(22年12月)。
■北里大学病院がん支援センター主催の「ひだまりカフェ」においてアピアランスケアの講座を担当しました。講座では「季節に合わせた日やけ止めの選び方」についてご紹介しながら実際にいろいろな種類の日やけ止めを体験いただきました。同時にメイクアップ商品やネイルケア商品を展示し、個々のお悩み合わせた美容提案を実施。(2023年8月)
■J-TOP様の医療関係者と協働し、がんの治療により乾燥性敏感肌でお悩みの方とご家族へ、スキンケアを通したお役立ちを目指して、スキンケア・ヘアケア情報をイラスト動画に作成し、いい皮膚の日(11/12)よりJ-TOP様サイトへ発信。
第82回日本癌学会学術総会ランチョンセミナー(9/23)に、「乾燥肌のスキンケア~がん患者さんへのスキンケアをどうするか」というテーマで、上野直人先生、著名な皮膚科医と共に、弊社研究員が登壇。がん治療による肌変化と対策についてご提言いただいた内容を、J-TOP様サイトへ公開。医療者と、がんを経験された方へ、スキンケアの重要性をお伝えします。
■NPO法人キャンサーリボンズ主催の「がん暮らし フェア」は、2012年の国立がん研究センターのイベントから始まって発足当初から現在まで花王は、すべてに参加し、最も幅広いテーマで商品や情報を提供しています。2021年からは、医療施設での対面方式からWEBでのオンラインイベントに変更し、毎年、実施しています。
がんと診断されたら、知っておきたいこと-納得の治療選択とよりよい生活のためにがんに罹患した当事者やご家族に向けて治療継続のためのセルフケアをテーマに口腔ケア、スキンケアについて歯科医師、歯科衛生士と共にレクチャーを実施しています。スキンケアでは、患者さんにも役立つキュレルのスキンケアメソッド動画を作成しています。また、特設サイト内に患者さんの暮らしに役立つ花王製品をWEBで紹介しています。併せて患者さんや家族を支援する場、「リボンズハウス」に参加している医療施設には、実際に製品やサンプルを提供し、製品に対してのご意見等については、社内の商品開発にもフィードバックしています。
【5】その他の風土・環境
■「ピアサポーター育成研修」を社内にも紹介、受講いただきました。
■社外活動も積極的に発信するようにしています。それを見て知っていただくことによって、「がんになっても何かをあきらめない」という風土、環境を作っています。
■花王ハートポケット倶楽部は、2004年に開始した花王グループ社員による社会的支援を目的としたクラブ組織です。クラブの趣旨に賛同する社員が会員となり、毎月の給与から任意の金額を積み立て、よりよい社会づくりをめざし、社会課題の解決に取り組む活動に役立てています。
エピソード・思い
・社内のがん経験者の声も反映した「花王版がんと就労のハンドブック」を作成したいです!
・社内ピアサポートを設立していきたいです!
・がん経験者向けアピアランスケアに関する社内イベントを開催したいと思っています!
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
ある社員のがん罹患がきっかけです。花王は生活に密着した商品をお届けする会社ですので、生活面をサポートすることでがん治療と仕事の両立にも貢献できることがあるのではないかと考え、社外においても、志を同じくする仲間のみなさまと情報を発信していきたいと考えるようになりました。現在は、社内外でも同じ志をもつ仲間も少しずつ増えてきて、情報交換しつつ、共に取り組む活動範囲を広げています。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
がんと就労に関する取り組みは「がん」だけでなく、色々な疾病、子育て、介護、障害等があっても働きやすい職場をつくることに繋がると思います。その多様性が企業の力になると思いますので、一緒に頑張っていきましょう!
講評・コメント
事業とCSR活動の両立が素晴らしく、すべての従業員とお客様が自分らしく健康に生きることをサポートしていると感じました。2023年度は特に社外に向けた健康支援の取り組みが拡充しており、花王グループならではの視点と技術でがんアライの輪を広げられています。「きれいを こころに 未来に」というコーポレートスローガンのもと一丸となっている様子が伝わってきました。より一層活動に力を入れていただき、がんと共生できる社会の実現に広まっていくことを期待します。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。