【がんアライアワード2023ゴールド】朝日航洋株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:朝日航洋株式会社
業種:航空運送事業/測量コンサルタント事業
従業員数:1,315名
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
■健康宣言
2019年に朝日航洋 健康宣言を制定した。「人を活かし人を育てる」企業理念のもと、従業員とその家族がより幸せを実感できるように、安全で快適な職場環境と健康風土づくりに取り組むこと、従業員の主体的な健康づくりを支援することを宣言している。
■がんアライ宣言
がんアライアワード2019応募時に宣言。
【2】休暇制度
■失効有給休暇積立制度
失効した有給を最大60日(有給を含めると100日)傷病に限り利用できる制度について、今までは有給を使い切ったところから利用可能であった。しかし、罹患者にも生活に関する休暇が必要であるため、5日を残したところから利用可能とし、傷病ではない行事等での休暇に充てられるよう改善した。
【3】勤務制度
■フレックス勤務制度
現在一部職種に限られるがコアタイムを設定しないフレックス制度を確立。それにより柔軟に検査や通院、治療に充てることが出来ている。今後他職種に拡充検討中。
■その他の勤務制度
制度以外の対応として、部門長の裁量によって柔軟に罹患者の就労について対応している。
【4】支援体制
■相談窓口の設置
全体的な社内働き方改革委員会の中に「私傷病の治療と仕事の両立支援分科会」を設置し、総合的な相談窓口/休暇の取得方法/治療に関わる情報提供等を全社的にバックアップしている。窓口担当者は両立支援コーディネーター資格取得済み。 罹患時に先述した相談窓口に問い合わせることによって、本人の情報展開に留意しながら治療及び休暇等の相談をすることができる
■復職の支援
治療を終え復職する際は、当社オリジナルの*「仕事をする上での注意事項」を罹患者に記載してもらい、罹患者/罹患者上司/人事部/産業医にて面談し復職スケジュールを決めている。
*6週間以上休務する場合は医師の診断書(又は医師の意見書)が必要。しかし診断書の作成費用や期間等がり患者にとって煩わしいことがあるため、6週間未満のケースは、主治医や薬剤師等医療従事者から受けた「何が出来て、何に注意し、時間外や出張等可能か」などをその注意点に記載。それをもって判断材料としている
■その他の取り組み
当社の私傷病の治療と就労両立活動は約10年経過。効果測定も踏まえ改めて全社的にアンケート方式での情報収集を実施中。両立支援はうまくいっているのか、改善すべき点はどこなのか等。
【5】健康増進支援
■女性の乳がん/子宮頸がん受診率向上に向けた取り組み
女性社員の検診車受診から、半日業務扱いで病院受診に切り替え、健康診断と同日に女性のがん検診を受診できる取り組みにより、乳がん72.7%、子宮がん77.5%と受診率が向上している。
■再検査等の費用補助
再検査・要精密検査判定された再検査費用の実費を1万円/年度まで補助し、再検査受信日を半日業務扱いとした。
■健康増進手当
健康増進手当を支給。条件として定期健康診断の受診が必要であり、各自の健康状態把握等の啓蒙に繋げている。
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
■社員向けの研修
両立に不可欠な「正しいがん知識」を周知するために罹患者による「がん教育」と人事担当者による「社内制度(休暇・給付金等)」をセットにした教育を開催している。新入社員研修や社内研修を定期的に開催することが根付いた。また適宜イントラネット上での情報提供、アンケート集計等を実施している。
【2】情報発信
■ハンドブック
社内向けのハンドブックを配付作成し「すぐに辞めない、辞めさせない」をスローガンにしている
【3】コミュニティ
現在導入に向けて調整中
【4】対外的な活動
■コンソ40への参画
厚生労働省委託事業がん対策推進企業アクション内における先行会社40社による「コンソ40」の中心的な企業として参画。また別に女性によるWG「Working RIBBON」にも参画し広く活動。
⇒本コンソーシアムの今年度目標である「検診率向上及び内容精査」を当社も取り組むことし、最新の検診率確認、検査内容を他社事例と比較し改善検討、要再診者に対する勧奨方法、肝炎検査、子宮頸がんワクチンに関する情報提供等
⇒新たに「コンソ40」内で組織された実行部隊である分科会メンバーとして活動(当社の対応方法を他社に展開、また分科会活動を当社内にも)。治療就労両立について議論検討。内容としては、継続的に両立支援をするにはどうすべきか、社内コミュニティのあり方等。本活動を受けて当社内でも社内コミュニティの先駆けとして罹患者による座談会(辛かったこと、会社に求めること等を話せる場)開催計画。
■協賛と活用…他社や他機関が作成したハンドブック等を入手しそれを管理者に配布、説明。それにより部下への寄り添い方等考え方浸透。
⇒一般社団法人がんと働く応援団の冊子【がん防災】に協賛し、がん・病気への備えを広く周知することに役立てられている。
⇒一般社団法人がんチャレンジャー「寄り添い方ハンドブック」の利用
■がん教育教材への協力
全国小中高生向けのがん教育の教材DVDの「就労との両立」について出演/収録をした。次年度からがん対策基本法に則りがん教育をする、そのための文科省推薦教材である。これを機に若い学生にも何かしらのメッセージを送る機会を作れたら、と考えている。
エピソード・思い
・「がん罹患者のオープン」をすることにより「隠れがん患者」が相談に来るようになった。この取り組みは社外にも少しながら知られるようになり、他社のがん患者からも相談もがある(同じように取り組みたい、や復職のために会社に対してどのように話をするか等)。
・社内教育を継続した結果、新たに協力したいという社内罹患者が増えた。上皮がん以外にも血液がんや女性特有のがん経験者など幅広く協力して頂いている。
・劇的に真新しい取り組みは少ないですが現行制度の見直しや社員への浸透を目指しており、その結果受診率の向上及び傷病報告書提出等定着。それにより相談窓口、提出書類、休暇取得内容等のアドバイスという流れが改善。
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
私本人(航空事業本部営業統括部 渡部俊さん)が罹患した際に社内制度の周知不備や当時の上長が休暇取得方法を把握していない、また「がんになった噂」が正しい知識ではない、など「これはまずい」と思えることが多々あった。なので、復職後人事部宛に「がん治療と就労についての提言」をまとめ提出し、社全体として取り組む必要があることを説いた。
それにより現在は正式な委員会として認められ社内での教育や傷病データ収集、復職プログラムの構築等を定期的に会議開催し取り組んでいる。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
あまり難しく考えずに「まずは行動」してみましょう!旗振りが居ればそれに賛同し必ず手助けしてもらえます!
講評・コメント
治療と就労の両立支援について、社内外を巻き込んでの制度・風土改善が進まれています。一連の施策についてのアンケート調査や座談会等、一方的な発信ではなくできる限り多くの社員と供に歩んでいこうという工夫が感じられました。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。