【がんアライアワード2019 ゴールド】大鵬薬品工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2019に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:大鵬薬品工業株式会社
業種: 医薬品、医薬部外品、医療機器、食料品、日用品雑貨などの製造、 販売及び輸出入
従業員数: 2,416名(2018年12月31日現在)
ウェブサイト:https://www.taiho.co.jp/
取り組みのきっかけやエピソード
・弊社は抗がん剤を製造する生命関連企業であるため、がんやその他の病に罹患した社員を温かく支援する風土があり、2000年以前から既にがんに罹患した社員に対し個別対応を実施していた。国内でのがん患者の増加に伴い、2013年に就業規則を改定した頃から就労支援に力を入れ始め、2016年に東京都「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」受賞後、相談の充実、早期発見・予防対策の強化、支援ツール作製、社内外への発信等、さらなる発展を遂げた。
・2019年1月に人事制度を刷新したが、 ①個々の働き方の多様性を勘案する ②がんばる社員に報いる ③大鵬の良き文化・強みを活かす の3点を掲げ、成長し続けるプロフェッショナルの育成を重視し、がんやその他の病気で治療中の社員も、やりがい、働きがいを感じながらキャリア形成が実現する仕組みになっている。
・会社指定の期間に人間ドックを受診すると、6万円を上限に健康保険組合と会社の補助により無料になる。また人間ドック受診の際、半日分までは勤務時間として扱うこととしている。その結果、30才以上の人間ドック受診率は2012年13.5%から2018年62.1%まで上昇した。
・がんに罹患した社員の中には、長期間休職したり、残念ながら亡くなられた方もいる。しかし多くは、体調が許す範囲で働き続けることを望み、会社も産業医の意見を聞きながら、制度面、精神面で精一杯の支援をしてきた。今まで、がんを理由に退職した社員はなく、また、がん罹患経験者の採用実績がある。
・がんに関連した情報をまとめた総合ポータルサイト「C-Guide Portal」では、社員の家族や身近な人のがん体験記を掲載している。がん患者の家族として、治療や闘病生活の現実(リアル)を体験し、新たに知ったこと、気づいたこと等を社員と共有することで、がんに対する認識を深めるだけでなく、抗がん剤メーカーで働く意義を再認識することにもなり、仕事のやりがいやモチベーションアップにつながっている。
風土づくり
◆大鵬薬品は「私たちは人びとの健康を高め 満ち足りた笑顔あふれる 社会づくりに貢献します。」という企業理念のもと、経口抗がん剤メーカーのパイオニアとして、薬を通じがん患者さんと医療関係者に貢献するだけでなく、社員一人一人が心身ともに健康で活き活きと自由闊達に働けることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考え、個人のみならず組織で健康増進活動を行っている。
◆会社にとって大切な「人財」である社員が、がんやその他の病気に罹患しても、離職することなく、治療しながら安心して働き続けられる職場をめざし、社内制度の充実、相談体制の整備、啓発活動、社員やその家族のQOL向上につとめている。
◆がんやその他の病気に罹患した場合に役立つツール
・「がんに罹患した社員の就労支援ガイド」(WEB冊子):本人、上司、同僚の立場で ①がん診断時 ②休職中 ③復職時 ④復職後 それぞれの段階でどのように対応し、何に注意すべきか、また家族が がんになった場合に利用できる制度等についてまとめたガイド。
・「ライフイベント支援ガイド」(社内イントラネット):「結婚・育児編」「介護編」「がんやその他の病気に罹ったら編」があり、それぞれ役立つ制度やサービスの概要を、状況別、段階別に詳しくまとめている。
・「C-Guide Portal」:広報と人事が共同で作成した、がんに関連した情報をまとめた総合ポータルサイト。
①仕事と治療の両立支援 ②体験の共有 ③予防・早期発見 の3パートから成り、抗がん剤メーカーである「大鵬ならでは」の内容で、社員に役立つ情報を提供し、社員と共有している。
相談できる環境づくり
◆健康面、メンタル面のサポート
・産業看護職によるケアおよび復職後のフォローアップ
・産業医面談 (本人、産業医・看護職・人事)
・休職時、復職時に三者面談 (本人、主治医、会社側)
◆個別相談
・人事ヒアリング:人事部担当者が、仕事の悩みや治療中の働き方等を直接聴く。
・自己申告制度:会社への要望、個人的事情など伝えたい事がある場合、24時間WEBで申請可能。
・キャリア相談室:社内の産業カウンセラー、キャリアコンサルタント有資格者が対応。
◆その他
・病気に罹患した本人だけでなく、上司、同僚へのサポートも重視、必要なら家族の相談も実施。
・日本産業カウンセラー協会「がん治療と就労サポーター」認定取得の人事部員が多数存在。
制度
◆半日有給休暇:1年につき12日分を半分(24回分)に分割して請求可能。
◆積立有給休暇:消滅する有給休暇のうち失効日を迎える度に10日分繰り越せ、最大50日積立可能。業務外の私傷病(がんを含む)のため連続5日以上の休業を必要とする時に請求できる。
◆カムバックパス制度:結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤、私事都合による留学、がんや国が指定する難治性疾患の罹患等やむを得ない理由で退職した社員が3年以内に再雇用で復職可能とする制度。
◆がん罹患者の休業期間延長・取得回数の制限をなくす:休職中の社員は原則、復職後6ヵ月実出勤せず同一事由で休職する場合の休職期間は復職前の休職期間の残期間としているが、がんに罹患し復職した社員が6ヵ月経たないで再度がんで休職する場合、休職期間はリセットされる。
◆在宅勤務:入社3年以上の社員が週に1回、自宅で所定労働時間業務することができる。
◆フレックスタイム制:10:00-15:00をコアタイムとし、6:00-10:00および15:00-20:00は出退勤時間を選択することが可能。
◆コース変更:年に1回 転居を伴う異動のある「総合職」と、転居を伴う異動のない「地域限定総合職」双方向での変更の申し出ができ、子育て、介護、病気治療などその時々の状況に合わせた働き方ができる。
◆家族の介護:家族が病気になり要介護状態になった場合、介護休業は法定を上回る366日まで取得可能。また介護休業中の社会保険料は会社が全額負担。
講評・コメント
がん罹患等やむを得ない理由で退職した従業員を再雇用する制度があり、がん罹患者の事情に寄り添える仕組みがあります。
がん罹患者の休業期間延長と取得回数の制限をなくすという先進的な取り組みをされており、就労を継続しやすい制度づくりを進められています。
相談できる環境、早期発見や予防対策の充実、支援ツールの制作などがん罹患者を様々な角度からサポートする体制ができています。