がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2019 ゴールド】三井化学株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2019 ゴールド】三井化学株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2019に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:三井化学株式会社

業種: 化学品(ヘルスケア・モビリティ事業等)製造・販売

従業員数: 17,743名

ウェブサイト:https://www.mitsuichem.com/jp/index.htm

取り組みのきっかけやエピソード

 

当社では、がんに限らず傷病による治療と仕事を両立する風土はすでに定着している。10年以上前より定期健康診断に特定健康診査とがん検診を融合した総合健診を実施しており、がん発見の8割以上が検診による発見で、そのうちの8割以上が根治可能な状態で発見されており、他疾患同様にがんの治療を受けた社員も珍しくない状況である。そのため、既存の制度の適用拡大や改定を通じて、さらに就労しながら治療をしやすい環境を整えている。

 

また本人が病状について正しく認識し、治療に前向きに取り組めるように、主治医から説明された事を産業医が聴取し、補足・アドバイスを行っている。主治医から説明された手術や治療での副作用や、日常生活においての注意点や制限すべき点をもとに、産業医と上司が就業上の配慮を検討し、産業医が様子を見ながら徐々に就労に関する制限を緩和するサポートも行っている。

 

上記以外にも以下取組を行っている。

 

◆全社リスクコンプライアンス委員会にてがん発見や在職者死亡統計を報告している。また、がんを含む疾病休業については全社および各事業所の統計を安全衛生委員会で報告している。

 

◆フレックス制度や半日有給休暇を取得しつつ、抗がん剤投与や放射線治療に取り組みながら勤務し、再発なく勤務を続けている社員も多数いる。またがん治療と仕事を両立した社員に関する事例は以下があげられる。

 

・治療後、海外赴任した社員

 

・自身の罹患経験からがん検診の重要性を認識し、周囲の社員に伝えている社員

 

・テレワークを利用し、がんに罹患しながらも大きなプロジェクトから外れずに就業し続けた社員

 

◆治療を受けつつ勤務を継続することは、弊社ではすでに定着しているが、会社としてがんや病気に罹患した社員の活躍をサポートする職場風土醸成を目指しており、社内外に向けて周知するために社長によるメッセージ発信を予定。(The Valuable 500への署名を予定)

 

◆今後は、私傷病治療を目的とした時短勤務制度の導入を検討している。すでに規則として設けているリハビリ試験出社制度に加え、本制度の導入が実現することで、治療後の体力回復に励む社員や治療中でフルタイム勤務が難しい社員の就労をサポートができると考えている。

 

風土づくり

 

◆社員の健康状態や病気罹患については健康管理室が把握し、がんに限らず社員が病気に罹患した際は健康管理室へ相談する風土はすでに醸成されている。

 

◆健康管理室では病気に関わる具体的な相談や不安事項の確認を行い、それに沿って人事部からは会社の制度のサポートについて説明を実施。実際にがんの手術や治療をしながら勤務を継続している社員はすでに多数おり、「がんに罹患したから会社を辞める」という発想は当社社員にはすでにない。

 

◆私傷病での休職等制度に関する就業規則(復職時の対応含む)を一覧にまとめた資料を作成し、社員に対してイントラで公開している。

 

◆社員に対して、健康への意識啓発を目的とした講話等を開催している。18年度はNPO法人5yearsの大久保氏を迎え「がんと就労」をテーマにした講演会を本社にて開催。また女性社員に対する「健康とキャリア」をテーマにした勉強会も開催し、汐留第二セントラルクリニック婦人科矢島院長を講師に迎え、女性特有のがん検診(子宮がん、子宮頸がん等)の重要性について学習した。同勉強会では、当社社員でがん罹患から復職した女性社員も登壇し、告知から治療・復帰までの体験談を披露し、活発な質疑応答が繰り広げられた。

 

◆2019年10月に「仕事と治療の両立支援ガイドブック」を発行予定。ガイドブックは全社員を対象とし、がんだけに限らず病気に罹患した際に仕事と治療を両立するための各種制度を提示し、社員一人ひとりが自分にあった働き方を選択しやすくなることを目指している。

 

相談できる環境づくり

 

◆弊社は産業医や産業保健師等の医療職が常駐しており、傷病に罹患した社員は、上司に直接相談するだけでなく、専門的知識を持つ健康管理室の医療職に相談することができ、医療職は、専門的な立場から上司に仕事上の配慮についてアドバイスも行っている。

 

◆本人と上司のみではなく医療職からもサポートすることで、上司が過度な配慮をしたり、本人が無理をしたりすることを防ぐことができる。治療中の社員に対しては、人事担当・上司・産業医が連携し、治療の状況や体調など、その時々に合わせた配慮を行っている。また、必要に応じ本人同意の上、産業医が主治医と連携して対応することもある。

 

◆今年度発行予定の「仕事と治療の両立支援ガイドブック」には、社内の相談窓口だけでなく、医療機関・行政・NPO法人など様々な外部の相談窓口を掲載している。またがんに関しては、本人への情報提供だけでなく、がん罹患者の家族への支援の窓口も掲載している。

 

制度

 

◆弊社では、社員のがん検診の受診率向上のため、定期健診にがん検診を組み込み集団検診として実施している。またがん検診については社員が受診しやすいよう、自身の希望する病院での個別検診を認めている。健診・がん検診含めたすべての結果は、弊社医療職の社員が確認し、受診勧奨や面談を実施している。がん検診で早期に発見できているがんも多く、早期発見・早期治療を総合的にサポートしている。

 

◆産業医が本人からの相談を受け、必要に応じ疾患や主治医に確認すべきこと、会社制度についてアドバイスを行っている。また、復職時や復職以降も産業医が体調や治療の状況を確認し、本人や上司と調整しながら就業上の配慮の検討を行っている。フレックス、半日年休、特別休暇などの既存の会社制度では対応ができない場合、産業医から人事部が連絡を受け個別に罹患者に必要な対応を検討している。

 

◆2019年4月から、特別休暇制度を改定し、半日単位で取得できる制度へと改定した。特別休暇とは失効した年次有給休暇を最大60日間分積みたてることができ、治療・療養が必要とされる病気等の際に有給休暇として取得できる制度であるが、従来はケガや入院を想定していたため、3日以上連続した場合のみの取得に限られていた。そのため本改定時には通院によるがん治療による休暇取得を想定し、半日単位で取得できるよう、制度を拡充した。

 

◆2019年4月より、育児・介護をサポートするための在宅勤務制をリニューアルし、テレワーク制度とした。本制度は治療と仕事の両立を目的とした利用を認めており、週に2日・最大月に8日利用できる。また自宅や自宅近くの社外ワーキングスペースで業務ができるため、治療のため通勤が困難な場合等の負担軽減に活用できる。

 

◆弊社では長期の病気治療により休職している社員が復職する際、勤務時間を調整しつつ復職できる「リハビリ試験出社制度」を活用することができる。リハビリ試験出社制度とは、始業・終業の時刻を調整し、身体を徐々にならしながら無理なく復帰するための制度であり、短時間勤務から開始して徐々に勤務時間を延長し、2~4週間かけて通常の勤務時間への移行を目指す。また復職前には人事・産業医と面談を行い、復職にあたって配慮が必要なこと等をヒアリングし、復職支援プランを職場にて作成し、本人がスムーズに復職するためのサポート体制がある。

 

◆<当社の社員の健康に対する取り組みは以下参照>

https://www.mitsuichem.com/jp/sustainability/report/index.htm

 

講評・コメント

 

専門家やがん罹患者による「がんと就労」「健康とキャリア」等の講演会や勉強会を開催、「仕事と治療の両立支援ガイドブック」の発行など、がんに罹患しても働きやすい風土づくりに向けた様々な取り組みを行われています。

 

ガイドブックの中では、社内外の相談窓口にとどまらず、がん罹患者の家族への支援窓口も紹介されるなど様々な角度からのサポートを意識されています。

 

特別休暇制度を改定され、半日単位で取得できるようにしたり、復職後無理なく働けるように「リハビリ試験出社制度」を整えられたりと、がん罹患者が働きやすい先進的な制度づくりをされています。

 

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