【がんアライアワード2020 シルバー】株式会社iCAREの「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2020に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
シルバー受賞:株式会社iCARE
事業内容:情報通信業
従業員数:80人
ウェブサイト:https://www.icare.jpn.com/
取り組みのきっかけやエピソード
・比較的年齢層の若い会社でしたが、ここ一年で人数が倍増したことにより不妊治療、妊娠、持病等で通院を要する従業員が急激に増えたことがきっかけです。
・復職支援などを専門とするスタッフが複数名所属し、契約企業のスタッフの方々の支援をするなかで、自社でも、病気と仕事の両立に積極的にに取り組むべきだと、スタッフより提言があったことも大きな要因です。
・私傷病等による有給休暇の消化が著しく、休暇を取ることを躊躇する従業員を目の当たりにし、働き方が柔軟制や制度のサポートに食わせ、周囲の理解がないと大切な従業員を守れないということを痛烈に感じました。
・そこでどんな事情でも働くことを諦めないための取り組みをしたいと思ったことがきっかけです。現在幸いにもがんの罹患者はいませんが、子宮頸がんの異形成などで経過観察をしているスタッフ、健康診断で再検査対象となるスタッフがいます。
・こういったことも踏まえいつ罹患しても受け入れられる体制を整えています。
風土づくり
◆月に一度の産業医面談に加え、普段の些細な不調を気軽に相談できる窓口として、メディカルスタッフにチャット相談できる環境があります。
◆メディカルスタッフには看護師、助産師、栄養士、臨床心理士、理学療法士、フィジカルトレーナーなど専門家が揃っており、多方面に渡る従業員の悩みに応えています。
◆年次有給休暇とは別に、体調不良時や通院などに利用できるSelf-care day(傷病休暇)を有給休暇として設け、日ごろから全社としてセルフケアを意識し、制度を整えることで傷病による休暇を取得しやすい風土つくりに貢献しています。
・休暇取得に際しては原則として診断書の提出を求めないなど、休暇取得に対する心理的なハードルをさげる施策を取っています。
◆体調不良などで休暇を取得する際に報告するSlackチャンネルがあり、「休暇します」とメッセージを流すと、同部署はもちろん、他部署の従業員からも「ゆっくり休んで」「お大事に」など相手を想いやるリアクションがあり、制度を使いやすい風土があります。
◆衛生委員会を公開開催(オンライン配信含む)とすることで、罹患した際のサポートや制度について広く周知しすることに継続的に取り組んでいます。
相談できる環境づくり
◆産業保健スタッフによるウェルネスセンターを設置。
・チャット相談とは別に面談形式(オンライン含む)で、病気や就業について気軽に相談できる体制をとっています。
◆毎週実施する上司との1on1では、上司からの指摘やダメ出しというスタンスはなく、部下の心理的安全を考慮した上で振り返りや相談ができる環境を構築しています。
・そのためがんに限らず、不妊治療や産休前の体調不良などについても、仕事とどう両立していくか、本人の意思を尊重し方向性を決めていける環境があります。
◆人事担当は従業員の健康状態をクラウド上の健康管理ツールを使い産業医と連携をとっています。
・クラウドのため、従業員の情報が常に最新化されており、認識の齟齬がない状態で人事が産業医・看護師・保健師などに相談・情報共有できる環境があります。
◆ストレスチェックを毎月実施することで、業務上・心理上の負担が過度にかかっていないか継続的に把握・対応できる体制を整えています。
・高ストレス者に対してはチャット相談の働きかけをするなど、サポート体制も充実させています。
制度・配慮
◆がん検査の推奨
・若年層で罹患が多い、子宮頸がん・乳がん検査を推奨・補助しています。
・健康診断で異常が出た場合の、再検査を会社として推奨・管理しています。
◆休暇制度
2020年4月より、2つの休暇制度を導入しています。
・ 健康休暇「Self-care Day」
月に1回、休養や通院・検査時に利用が可能です。体調に違和感を感じた段階で適切なケアを行うことで、より健康的に仕事と向き合うことができます。また、女性社員が多いことから生理を含む女性特有の疾患や治療においても利用が可能です。
・ リフレッシュ休暇「Chill-out Day」
10月を起点とし、10月~9月の間でまとまった休暇を自由に取得できる制度です。がんに限定した制度ではありませんが、「働くひとと組織の健康を創る」という弊社のビジョンに基づきどんな事情があっても安心して働ける制度を構築しています。
また年次有給休暇を時間単位で取得可能にしたことに加え、入社翌月より付与することで法律を上回る休暇日数となり、休暇取得に対するハードルを下げています。
◆柔軟な働き方
・ フレックスタイム制度
・在宅勤務制度
多様な人材がよりよく働けるように、2020年3月よりフレックスタイム制度を、2020年8月より週1回の在宅勤務制度を導入。
通勤による負担が大きいと認められた場合は、より柔軟に在宅勤務・時差勤務を奨励するなど、心身の負担を軽減しよりよく働ける環境整備に取り組んでいます。
一部スタッフは採用時よりフルリモートワーク(在宅)を実施(全社員の約2割)。自身の障害・傷病や家族の介護等の理由により通勤困難は困難なものの、経験豊富で働く意欲の強いスタッフが複数名就業・活躍しています。
新型コロナウィルスの感染拡大による影響に応じて新しく始めた「がんと就労」の取り組み等に関するエピソード
◆現役の産業医を務める代表が、新型コロナウィルスの感染拡大拡大予防に特化した参考資料を作成しました。
・作成の背景としては突発的な有事の場合、様々な情報が飛び交う中で冷静で的確な判断を行うことが困難な状況になりかねません。
・そこで、医師免許をもち産業保健分野に精通した代表が、最新情報や医学的知見に基づいた人事部向けの参考資料を作成しました。
・感染症の有事の対応のみならず、普段からの対策において安全衛生委員会での資料作成や企業の対応方針の考慮に役立てられる参考資料にもなります。この資料は社内外に展開しています。
◆ 「コロナ看護休暇 Family-care day」を導入しました。
・新型コロナウィルスの拡大を受け、社員の家族や親族が罹患した場合に取得でき、家族や周囲のサポートを行う必要がある場合に、最大2週間の有休休暇を取得できる制度です。
・導入した背景としては、社員の生活の質やプライペートでの関わりに由来する「社会的健康」の不安を可能な限りサポートしたいという想いから始まりました。
・世界保健機構憲章において、健康は「病気ではないとか弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてがみたされた状態にあること」と定義されており、”働く人と組織の健康をつくる“をビジョンに掲げる弊社も、これこそを”健康”としています。
具体的な利用例としては下記の場合に適用となります。
・親が祖父母の介護をしている状況で、介護者である親が罹患した場合
・親の介護をしていた兄弟姉妹が罹患し、代わりに介護できる人が近くにいない場合
・社員の配偶者が罹患し、子供の世話をする必要がある場合
社員の社会的健康を脅しかねない家族・親族の罹患が起きた場合、安心して休暇を取れる制度をあらかじめ用意することで、真に社員の”健康”を創り出すことを目的としています。
講評・コメント
月に1回、休養や通院・検査時に利用可能な「Self-care Day」という制度を導入されています。
人事担当者が従業員の健康状態がリアルタイムに把握して産業医と連携したり、高ストレス者に対してはチャット相談の働きかけたりするなどクラウドサービスも最大限活用されています。
今後も社員の状況や世の中のトレンドを適切に把握されながら、自社らしい取り組みを生み出し続けていかれることを期待しています。