【がんアライアワード2020 ゴールド】アイバイオテック株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2020に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:アイバイオテック株式会社
事業内容:IT業
従業員数:7人
ウェブサイト:https://www.ibio-tech.com/
取り組みのきっかけやエピソード
「癌と闘いながら仕事を続けたい。」
「自尊心を保つのに仕事が重要なんだ。」
「創薬研究支援の仕事は、自分ごととして真剣に取り組めやりがいがある。」
彼は、そう言って仕事を続ける道を進んだ。
「この会社で仕事ができてよかった。もっとここで仕事がしたいのに。」
彼が私に対して最後に言った言葉になった。
この出来事は、会社に彼が残した『財産』だと思う。
弊社の代表取締役副社長 土方は、このように私たちに語りました。
2年前、自社の社員ががんと判明。本人が「残りの時間できる限り仕事をしたい」と希望したことから、会社全体で、そして、お客様を巻き込んで、サポートする活動が始まりました。弊社の業務はお客様の機密情報を扱う性質上、場所や時間の制約が厳しく、彼の業務遂行は困難かと思われましたが、業務内容やデータの扱い方をお客様と相談し、場所や時間の制約のない業務として取り組めるようになりました。
残念ながら、彼はこの世を去ってしまいましたが、「築き上げた仕事の仕方は必要としている方にお渡しできるに違いない」と考え、より大きな活動にしようと取り組み始めたのがきっかけです。
社内には、今まさに癌と向き合っている方、親族が癌と戦っている方、過去に癌になり共に生きている方がおります。社外のお客様には、癌の薬を作る方々がいます。この恵まれたご縁を活かして、私たちが関わる方ひとりひとりから、人生がより有意義になった、と言っていただけるよう、日々の仕事の改善はもちろん、社内外の活動に努めています。
この1年の主な活動は下記のとおりです。
◆治療と仕事の両立の取り組みをすでに実施している方々との会合
◆ハローワークの「長期療養者等就職支援モデル事業窓口」での求人募集
◆罹患者採用による収益化計画を報告
罹患者の雇い入れを実施するにあたり、JDCAのキャリアコンサルタント数名に来社頂いたり、がん患者社員就業規則に関する書籍の著者を訪問したりと直接お話をうかがい、雇用に関する注意点や他の会社での取り組み、就業規則への取り入れ方法など、専門家の方に具体的な相談を重ね、雇い入れの準備を進めてきました。
長期療養者等就職支援モデル事業窓口から非公開求人を出すことで求人を行い、1名の罹患者採用を実現しました。それをSDGs 活動としてつくば市に報告しております(https://www.tsukuba-sdgs.jp/page/page000145.html)。
さらにSDGs に沿ったビジネスのあり方として、仕事と治療の両立の事項を報告し、『SDGs ビジネスマスター』の認定取得や、収益を上げられる活動計画として事業計画を策定し、茨城県の経営革新計画の承認を受け、現在、計画を実行しています。
風土づくり
- 病気や子育てなどをダイバーシティーとして捉え、個人の事情や能力に応じた適材適所の推進
- SDGs活動として公示(https://www.tsukuba-sdgs.jp/page/page000095.html)
- 時間と場所に制限のある方の積極的な受け入れ
・国籍や性別だけではなく、持病やライフステージにおいて起こり得ること全てをダイバーシティーと捉え、会社活動の枠内で切り分けずに生活できる会社環境を目指しています。特に時間と場所に制限のある方の受け入れと癌罹患者の雇用受け入れに力を入れています。
相談できる環境づくり
◆経営層のカウンセラー資格取得、キャリア支援
◆テレワーク環境の整備と業務の獲得
◆有給休暇の時間単位取得
・経営層の心理学的な理解は必須のため、代表取締役2 名のカウンセリング関連資格を取得し、継続的な学習を続けています。併せて、社員が自身の状況に合わせたキャリアアップの方法を経営層と話し合う機会や、キャリアコンサルタントの方と相談する機会を設けています。
・仕事の性質上、秘匿情報も多く、作業場所や時間に定めが多くあります。時間をかけてお客様と相談し、ご協力いただくことで、テレワーク可能で、従来に比べて安全性や効率の高い業務プロセスへと移行が進み、お客様へのメリットを高めながらも時間と場所の制約がない仕事づくりを推進しています。
・急を要する個人、またはご家族の状況に対応できるよう、時間単位での有給取得制度を作成しました。そして、業務や他のメンバーへの影響を小さく留めるため、複数人で複数の仕事をする「チーム形式」での業務を推進しています。
制度・配慮
・癌罹患者だけが使える特別な制度構築は行っていません。
・多様性を認める中に癌罹患者の状況も含まれるという認識で、透明性と公平性のある誰も置いていかない制度設計を行っています。
実施事例1:健康診断の追加項目(胃カメラや脳ドック)といったものにも会社負担で実施
・最低限の健康診断では得られる情報が少ない為、状況に合わせて必要と思える追加検査を会社負担で実施できる様にしています。制度化のために上限設定を模索中です。
実践事例2:自身の置かれている状況に合わせてキャリアアップを考える1on1 ミーティングとキャリアカウンセリング
・がん罹患時には、治療と仕事の両立面で罹患者自身がどうしたいのかを1on1 ミーティングで話し合い、可能な限りそれに近い状況を作れる様にしています。会社全体でサポートしていく体制と病気と仕事を切り離さない考え方を徹底しています。
・休職という選択だけではなく、少しでも働き続けたい方がいることを自社の社員の事例から知ることができました。それぞれの働ける環境をオープンに話し合い、全員に理解してもらった上で給与や労働時間を個別に決定します。
実践事例3:評価と給与の公開
・給与を完全にオープンにすることで、成果と給与に釣り合いが取れているかを全社員が見て考えられる様にしています。また年棒(半年毎に見直し)で給与を設定することで病気や通院で欠勤になっても給与額がすぐに変動しない様にしています。
新型コロナウィルスの感染拡大による影響に応じて新しく始めた「がんと就労」の取り組み等に関するエピソード
・新型コロナウィルスの感染拡大予防の影響により、参加想定をしていた地域活動の中止が多くありました。活動を始めたばかりであり、情報収集や活動へのご意見相談自体が難しかったです。
・この状況でも出来ることを探し、県内の総合病院就労支援コーナーやハローワークへの電話で情報を集めたり、オンラインセミナーへ参加したりと、現状把握を行いました。
講評・コメント
長期療養者に対する就職支援モデル事業窓口で求人募集をされ、実際に採用された実績をお持ちです。罹患された方を雇入れるにあたり、キャリアコンサルタントや関連書籍の著者に話を聞きに行かれるなど、がんと就労への本気度が伝わってきました。
8人とは思えない機動力が感じられました。