がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2021 ゴールド】アイバイオテック株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2021 ゴールド】アイバイオテック株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2021に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:アイバイオテック株式会社

事業内容:IT業

従業員数:10人

ウェブサイト:https://www.ibio-tech.com/

取り組みのきっかけやエピソード

 

SDGs としての取り組みを話す際に弊社の代表の土方は以下の様に話しております。

 

「癌と闘いながら仕事を続けたい。」

「自尊心を保つのに仕事が重要なんだ。」

「創薬研究支援の仕事は、自分ごととして真剣に取り組めやりがいがある。」

 

彼は、そう言って仕事を続ける道を進んだ。

 

「この会社で仕事ができてよかった。もっとここで仕事がしたいのに。」 彼が私に対して最後に言った言葉になった。

 

この出来事は、会社に彼が残した『財産』だと思う。

 

・自社のメンバーが 2018 年末にがんに罹患。その社員が、残りの時間、できる限り仕事をしたいと希望したことから会社全体で、さらにはお客様も巻き込んでサポートする動きが起こりました。余命宣告をされる様な重い状況ではありましたが子供を抱える父親としてしっかりと働き稼ぐ姿を子供たちに見せたい。重荷になりたく無い。そんな気持ちがあったのでは無いかと想像しています。

 

残念ながら彼は、この世を去ってしまいましたがその際に行った仕事の仕方や受け方は、もっと他の方にも渡していけるものなのでは無いかと考え、この経験をより大きな活動にしようと取り組み始めたのがきっかけです。

 

・今、社内には、今まさに癌と向き合っている方をはじめ、病気と治療を両立している方が複数人おります。社外のお客様の中には薬を作る方々がいます。この恵まれた縁を働きやすい環境にするために取り入れていこうと活動しています。

 

◆「がんと就労」の取り組みとして、ハローワークの「長期療養者支援窓口」に求人を出しています。

 

・2か月に1度、求人窓口へ状況確認をおこなっています。「IT業」の求人票は、未経験だと敬遠されがちですが、求人窓口担当者へ業務内容や取り組みを詳しくお伝えし、担当者から求人者へ応募の後押しをして頂くことで、新たな罹患者採用へ繋げることが出来ました。

 

~今年度採用者から~

「前職で病気を理由に更新できなくなり、面接も落ち続けて貯蓄が心許ない状況だったので、がん相談支援センターとハローワークさんに、がん患者を受け入れてくれる求人を紹介されて、不安と期待が半々で応募しました。サーバー(監視業務)の事なんて何も知らない初心者でも、根気強く丁寧に噛み砕いて教えていただけるのでやっていけています。それに仕事を持つこと必要とされることで、前向きにいろんな事を挑戦したい、楽しく生きていきたいと思うことができました。」

 

今後も、求人票の文面では伝わりにくい部分を窓口担当者の方に協力を仰ぎながら、時間と場所に制限がある方たちへやりがいのある仕事を提供してまいります。

 

◆がんサバイバーの方とのお別れ

 

・長期療養者支援窓口から採用を行った罹患者との別れがありました。緩和ケア病棟に移られながらも業務にあたりたいという思いに応えるべく、病院とも連携し、病室で業務参加出来るように致しました。コロナ禍で面会も難しい中でしたが業務用 PC とモバイル Wi-Fi を病院に許可を頂き病室に持ち込み、チームメンバーとオンラインで毎日顔を合わせ業務にあたりました。最終的に亡くなる数日前というギリギリまで業務にあたり、社会人として同僚との日々を過ごしていただけました。

 

緩和ケア病棟での日々は、治療もつらい状況ではあったと感じていましたが「働ける喜び」、「社会と繋がっている誇り」を持って過ごしていただけたとご家族からのお話を踏まえ考えております

 

◆IT 企業だからできる支援を模索

・IT 企業だからできる支援がないか医薬の専門家とディスカッションを実施する場を設けました。

 

人財不足が深刻な IT エンジニア業務を治療を行いながら経験することで寛解後、弊社で働き続けていただくことはもちろん、他にやりたいことを見出した場合でもステップアップを目指しやすいキャリア形成となるようにエンジニアとしての仕事を実施して頂いています。

 

◆がん罹患者社員を雇用することで、気づいたこと

 

・就職先情報(ハローワーク長期療養者支援窓口)に行き着くまでに時間がかかる。

・勤める意欲があっても、社会(職場)におけるがん罹患者に対する理解が不足している。

・社会保障制度を調べないと活用できていない。

 

以上のことを踏まえ、今後も、当社の活動を発展させることにより、がんと共生できる社会、治療しながらでもいきいきと働くことができる場の提供を広めていきたいと思います。

 

◆その他の取り組み

・両立支援コーディネータ研修へ参加(役割を学ぶことで、両立支援サポート体制の強化)

・社会保障制度の習得(経済的支援を含む両立支援に利用可能な支援機関、支援制度等の社会資源)

・社内向け両立支援ハンドブック作成

 

風土づくり

 

1. 病気や子育てなどをダイバーシティーとして受け入れる

2. SDGs 活動として公示

https://www.tsukuba-sdgs.jp/page/page000095.html

3. 時間と場所に制限のある方の積極的な受け入れ

 

・国籍や性別だけではなく、持病やライフステージにおいて起こり得る事項全てをダイバーシティーと捉え、会社活動の枠内で切り分けずに生活できる会社環境を目指しています。特に時間と場所に制限のある方の受け入れと癌罹患者の雇用受け入れに力を入れています。

 

・罹患者が不安なく働きつづけられるようチーム形式で業務を行い、治療スケジュールや、急な体調不良等にも対応できる体制を作っています。罹患者に限らず、困ったときは周囲に助けを求め、周りも理解してサポートをするという「助け合いの風土づくり」を推進しています。

 

相談できる環境づくり

 

◆カウンセラー資格を保持する経営層との 1on1 ミーティングとキャリア支援

 

・経営層の心理学的な理解は必須のため、代表取締役 2 名のカウンセリング関連資格を取得し、継続的な学習を続けています。

 

・合わせて自身の状況に合わせたキャリアアップの方法を経営層と話し合う時間を実施しています。上司と定期的に 1on1 ミーティングを実施することで「罹患してから目の前の事しか考えてこなかったが、1年くらい先のことまで考えるようになった」など、将来に目を向けてもらえる切っ掛けになっています。

 

◆テレワーク環境の整備と業務の獲得

・仕事の性質上、秘匿情報も多く業務の持ち出しが難しいものがあります。時間をかけて、お客様へ相談を行い、協力いただくことでテレワークでも可能な業務の切り出しを行い、時間と場所の制約を外すことに積極的に取り組んでいます。

 

◆有給休暇の時間単位取得

・突発的な対応を迫られるケースに利用可能な様に時間単位での有給取得制度を作成しました。同時に複数人で複数の仕事を行うチーム形式で業務を進めることでそれぞれの突発的な事案にも業務影響が小さくなる様に取り組みを進めています。

 

◆在宅勤務の就労環境でも、毎朝定時に全員で顔を合わせ、朝会(朝礼)

・話す内容の中に「今の身体の感じ」を設け、「具合が悪い」「調子が悪いので休みたい」「横になって仕事を行いたい」など、無理せず発言できる環境があります。実際に手術後や投薬の影響などで、本人が意図しない業務影響が出る場合もありましたが全体でフォロー体制を築く事ができ、安心してお休みいただける協力体制が造れています。

 

制度・配慮

 

◆健康診断/人間ドックの受診促進、費用補助

・定期健康診断の受診率は毎年 100%にのぼります。追加項目(胃がん健診、大腸がん検診等)も会社負担で実施しています。

 

◆運動習慣の声掛け/費用補助

・健康維持や運動不足解消のためにも、歩くことを推奨しています。今年度はリレーフォーライフセルフウォークリレー(がん患者支援活動)への社内参加者数も増え、運動を行いながらがん患者支援活動も行っています。費用は会社が負担しています。

 

◆長期入院時、本人の希望と病院の許可があれば、病室からテレワークを行える制度があります。過去2名の罹患者社員も休職することなく、病室より朝会の参加や業務を行いました。

 

◆治療と仕事の両立面で罹患者自身がどうしたいのかを 1on1 ミーティングで話し合い、可能な限りそれに近い状況を作れる様にしています。会社全体でサポートしていく体制と病気と仕事を切り離さない考え方を徹底しています。

 

・休職という選択だけではなく、少しでも働き続けたい方がいることを自社の社員の事例から知ることができました。それぞれの働ける環境をオープンに話し合い、全員に理解してもらった上で給与や労働時間を個別に決定します。

 

◆給与を完全にオープンにすることで、成果と給与に釣り合いが取れているかを全社員が見て考えられる様にしています。また年棒(半年毎に見直し)で給与を設定することで病気や通院で欠勤になっても給与額がすぐに変動しない様にしています。

 

講評・コメント

 

・風土、環境、制度全般できめ細やかに対応をされていて、今年度採用された方のコメントからも罹患者視点にたった企業運営をされていることが伝わってきます。

 

・IT 企業だからできる支援がないか医薬の専門家とディスカッションされるなど、自社だけに留まらない取り組みも進められています。

 

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