【がんアライアワード2022シルバー】テクノプロ・ホールディングス株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
シルバー受賞:テクノプロ・ホールディングス株式会社
業種: グループ会社の統括および運営
従業員数: 単体:242名 グループ連結:27,563名(2022年6月30日現在)
取り組みのきっかけ
・当社の従業員が実際にがんに罹患した際、私たちは「会社制度に関すること」「就労に関すること」「メンタルヘルスに関すること」の3点から、「もっと会社としても取組めることがあるのではないか」との強い思いを抱いたことが、きっかけです。
・まず「会社制度に関すること」については、がん治療は、一定期間の休職のみでは十分ではなく、その後も各種検査・放射線治療等の通院治療・定期診察のための通院等が継続して生じるものであり、現在設置している休復職制度や年次有給休暇制度だけでは対応しきれないケースがあることが分かりました。通院や体調の状況に応じて遅刻・早退を認める等、可能な範囲で対応していしたが、社員からすると、「会社に申し訳ない」「周りに迷惑をかけている」と、治療に必要な時間であるにも関わらず、周囲への気遣いを強いる側面もあったことから、これらの負担を少しでも緩和することができないかと考えました。
・次に「就労に関すること」については、がんに罹患した社員は、治療の段階により、「治療中ではあるが100%のパフォーマンスを発揮できる」期間と、一方で「勤務自体は可能だが、業務量・業務時間等の調整が必要である」期間が生じるなど、その時々で就労状況が異なる場合があることが分かりました。ここでも、社員からすると、自身で体調をコントロールすることが難しい状況にも関わらず「自分のせいで、周りの社員に業務上の負担をかけたくない」との思いから、頑張り過ぎてしまうなどの傾向も見受けられました。社員自身が「治療と仕事の両立」をポジティブに捉え、治療段階に応じて上司・同僚・部下のサポートが得られるよう、会社全体の方針として「治療と仕事の両立」をおこなう社員をサポートしていくことを表明し、これらについて理解を深め、可能な範囲で治療状況に応じた働き方ができるよう、風土づくりをおこなっていくことが必要だと考えました。
・最後に「メンタルヘルスに関すること」については、がんに罹患した社員は、自身の治療が本当に症状に合っているのか?といった「治療」そのものに対する不安はもちろんのこと、がんとの向き合い方、家族との関係、経済面等、様々な悩みが生じることが分かりました。これまでも、相談窓口は設置していましたが、窓口があることを更に周知し、体系化して利用しやすい環境を整備することが必要との思いに至りました。
この3つの課題を感じていたときに「がんアライ部」の活動を知り、まずは賛同することから始め、当社グループでも取組みを強化することとしました。
風土づくり
◆『テクノプロ・グループ 健康経営宣言』の制定
2020年2月に健康経営宣言を制定し、経営戦略の一環としても、従業員の心身の健康に関する推進に取り組むことを宣言し、自社ホームページで公表しています。宣言の内容は、以下となります。
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私たちテクノプロ・グループは、「働く社員の健康は重要な経営資源であり、企業活力の源泉である」との考えに基づき、健康経営の推進に取り組むことを宣言します。
社員の QOL(Quality of Life)が向上されてこそ、お客さまへ真の付加価値を提供し続け、企業価値を向上させることが可能となります。
社会と共に持続的に成長するグループとして、健康経営を礎に豊かな未来の実現に貢献します。
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◆健康経営に関する『戦略マップ』の策定
テクノプロ・グループが健康経営でめざす姿、これに向けた健康投資、具体的な取り組み、期待する効果のつながりを視覚的に分かりやすく図示した『戦略マップ』を策定しています。この戦略マップのなかに、「治療と仕事の両立支援」に対して健康投資をおこなうことを明記のうえ自社ホームページで公表しています。
◆『CEOメッセージ』の発信
CEOが全社員に対して定期的に発信している『CEOメッセージ』において、健康診断の重要性、健康の大切さ、グループ全体として健康経営を推進していくことを明言し、トップダウンで健康維持増進について取り組んでいこうとする風土づくりをおこなっています。
◆社内報 「テクノプロ・ニュースレター」 において「健康道場」というコーナーを設置し、健康全般に関する意識を高め、疾病への理解を深めるための情報や学習資料を発信し、全従業員が自身そして他者の心身の健康を重んじることができるよう、風土づくりをおこなっています。
◆社内ポータルサイト『健康推進サポートナビ』設置
全社員が利用する社内ポータルサイトに、『健康推進サポートナビ』という特設ページを開設し、心身の健康全般に関する様々な情報(相談窓口・啓発資料・学習資料等)を発信しています。健康に関する理解を深めるとともに、困ったときはすぐに相談できる体制を構築しています。
◆『テレワーク・フレックスタイム制度』を利用しやすい風土づくり
テクノプロ・グループでは、自社勤務の社員を対象に、『テレワーク・フレックスタイム制度』を導入しています。この制度は、「治療と仕事の両立」という側面からも、大変重要な施策と捉えています。
そのため、人事管掌役員より、テレワーク・フレックスタイム制度の『趣旨・目的・概要』を説明し、『円滑・効率的に働くためのTips』・『効率的なマネジメントのためのTips』をまとめた動画を配信し、がんに罹患した社員を含む全社員が、制度を躊躇なく利用することができるよう風土づくりをおこなっています。
◆『年次有給休暇の取得』推進
社員の心身の健康の維持増進、および休暇を取得しやすい風土づくりをおこなうことを目的に、本人とその上司に対して、年次有給休暇の取得推進をおこなっています。
相談できる環境づくり
◆定期的な面談の実施
がんに罹患した社員に限らず、社員が会社に対して、業務状況や自身の体調について相談しやすい環境を醸成するため、定期的な面談を実施しています。この面談のなかで、社員から、がんの罹患についての相談や、これに伴う勤務の調整などの相談が生じた場合は、各部門長を通して人事部門に設置された健康に関する専門部署に相談し、個別ケースに応じた対応をおこなっています。
◆社内ポータルサイト『治療と仕事の両立ナビ』設置
がんに罹患した社員が、上司に仕事や治療のことを相談しやすい風土が形成されるよう、全社員が利用する社内ポータルサイトに、『健康推進サポートナビ』という特設ページを開設、このページに『治療と仕事の両立ナビ』とのコーナーを設置し、相談窓口等の様々な情報を発信しています。
◆早期発見や治療に関する相談窓口の設置
『治療と仕事の両立ナビ』においては、がんに限らず、疾病全般において利用できる「健康生活・早期発見・治療等サポートダイヤル」・「治療時・治療中・治療後のケアダイヤル」の相談窓口を掲載しています。
◆産業医等への相談体制
テクノプロ・グループでは、人事部門において健康に関する専門部署を設置しており、社員から、がん罹患に関する専門的な相談が生じた場合は、相談内容に応じて、産業医・治療に関する専門相談窓口・カウンセリング機関等と連携し、個別ケースに合わせた対応をおこなっています。
◆『テクノプロ・グループ相談窓口』の設置(EAPによる外部相談窓口)
テクノプロ・グループでは、社員ひとりひとりが活力に満ちて業務に取組み、パフォーマンスを最大限に発揮できるよう、様々な悩み事に関する相談窓口を設置しています。
この相談窓口は「病気に関する相談」「治療と仕事の両立」についても悩みにも対応できることを周知しており、上司や会社には相談しにくいといった場合にも、社員が気軽に利用できるよう相談チャネルを充実させています。
◆『健康保険組合による相談窓口』の設置
急な病気の心配やストレスなど、心身の健康についての悩みに対応するための、健康保険組合による相談窓口を設定しており、周知をおこなっています。
制度
◆『健康管理システム』の導入
社員が、自身の健康増進に役立てること、および体調の異変を早期に自覚して医療機関の受診に繋げることができるよう、健康管理システムを導入しています。健康管理システムでは、全社員が電子記録として、経年での自身の健診結果を閲覧できる環境を整備しています。
◆『がん検診』のついての費用補助
がんの早期発見に有効な 『がん検診』 について、検診費用の補助を実施し、検診受診率の向上に取り組んでいます。
◆『私傷病休職および職場復帰』に関する制度
がんに罹患した社員は、勤続年数に応じた私傷病休職制度を利用することで、治療に専念できる環境を整備しています。
治療を終え、主治医から復職可能の診断が出た段階で、復職後の就業に関して社員と調整をおこない、就業配慮・就業制限・通院配慮等が必要であると考えられる場合には、社員・産業医・上司・人事部と調整のうえ、復職後の就業プランを策定し、無理のない職場復帰をサポートしています。
◆『テレワーク勤務』『フレックスタイム制度』の導入
テクノプロ・グループでは、自社勤務の社員を対象に、『テレワーク勤務』『フレックスタイム制度』を導入しています。社員一人ひとりが、働く場所や時間に制約を受けず、各自のライフスタイルやライフイベントに合わせて、『働く空間を選べる』・『働く時間を選べる』といった柔軟な働き方を選択できるよう環境を整備しています。
がんに罹患した社員は、手術等でまとまった期間のお休みが必要になった場合は、私傷病休職制度を利用して治療期間に充てることができますが、実際にはその期間以外でも、各種検査・放射線治療等の通院治療・定期診察のための通院等が継続して必要となる場合があり、このような場合に、社員は年次有給休暇を消化せざるを得ない状況でした。
しかし、この制度を導入したことにより、テレワーク勤務やフレックスタイム制度を効果的に利用すれば、有給休暇を消化せずとも勤務可能な環境を整備することができ、「治療と仕事の両立」の実現に向けて、大きく前進することができました。
◆『年次有給休暇の取得』推進
がんに罹患した社員が、通院治療等に利用しやすいよう、半日単位・時間単位での取得も可能としています。
その他にも以下のような取り組みを実施しています。
◆定期健康診断
従業員の定期健康診断の受診率は100%です。
◆ストレスチェック診断
年1回全従業員を対象にストレスチェック診断を実施しています。
◆年次有給休暇の取得率
2017年における年次有給休暇取得率は71.3%でしたが、2022年においては81.6%となっており、継続的に75%以上の取得率を維持することを目標としています。
◆月の平均残業時間
2017年における月の平均残業時間は19.2時間でしたが、2022年においては13.8時間となっており、今後も20時間以下を維持することを目標としています。
◆新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応策
・感染防止のため、従業員向けガイドラインを作成し周知しました。
・在宅勤務・フレックスタイム制度を導入しました。
・自家用車の通勤時利用の制限緩和を実施しました。
・陽性者・濃厚接触者・休校等に対応する特別有給休暇制度を導入しました。
・「新型コロナウイルスに関するメンタルヘルスケア相談窓口」を新設しました。
抱負
・『通院治療時の休暇付与』制度の導入
今後、がんに罹患した社員が、通院治療等でやむを得ず休暇を取らなければならなくなった場合に、利用可能な休暇制度を導入することを検討しています。
・『がんと就労に関する取組み』の推進
これまでは、「健康経営」という大枠における取組みの一環として、働きやすい環境づくりのため各種施策を推進してまいりましたが、今後は「もし、自身ががんに罹患したら」、「周囲でがんに罹患した社員がいたら」という「がんに罹患した社員」の視点からも、より現実に即した形で必要な制度や、取組みを検討していきたいと考えています。
・治療と仕事の両立ができる『風土づくり』の推進
がんアライ部のめざす姿と同様、がんと共生できる会社をめざし、治療と仕事の両立ができる風土づくりを推進していきたいと考えています。
講評・コメント
・CEOが全社員に対して、健康経営を推進していくことを明言し健康維持増進について取り組む姿勢が伝わってきました。
・人事部門において健康に関する専門部署を設置し、個別ケースに合わせた対応体制があり、また有給休暇取得率向上と、病気治療と仕事の両立に関する制度づくりを進められています。