【がんアライアワード2022シルバー】野村バブコックアンドブラウン株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
シルバー受賞:野村バブコックアンドブラウン株式会社
業種: 航空機リース業
従業員数: 49名
取り組みのきっかけ
今年度がんに罹患した社員が急逝した。当社に長く勤務する社員であり、過去の経緯や優れた知見を有していることから、罹患後も傷病休暇を活用し働きながら治療を続け、シニア社員となった後も本人の意向もあり、週3日勤務で治療しながら仕事を続けた。当該社員の葬儀において、遺族の方より会社の配慮に対する感謝の言葉があったことから、治療しながら働き続けることができる環境を整備することの重要性を再認識し、がん治療と仕事の両立の意義について改めて考えさせられた。
社員が働きやすい職場環境の整備を検討する中で、病気に罹患した際の制度や相談窓口が整備されいないと感じ、取り組みを始めることを決めた。
今後、働く期間が一層長くなる中で、誰もががんに罹患する可能性があり、治療と仕事の両立は今後ますます重要なテーマになってくると感じている。
風土づくり
◆会社の方針
野村グループとして、がんなどの治療と仕事の両立支援のため、2018年4月に「NOMURAの健康サポートプラン」を策定。これに伴い、衛生委員会や野村グループのイントラネットなどを通じて、治療と仕事の両立の支援について社内に情報発信している。
◆リテラシー向上や社内の理解浸透
・野村グループとして、社員と上司向けの「治療と仕事の両立支援ガイドブック(本人編、上司編)」を作成。本ガイドブックには、がんなどの病気により治療を続けながら仕事をする社員が安心して仕事と治療を継続することができるよう、本人のみならず上司の対応方法などが掲載されており、野村グループのイントラネットを通じて、閲覧可能な状態にしている。
・治療と仕事を両立している社員の体験談を「キラッとNOMURA Life~私の体験談~」として野村グループのイントラネットに掲載し、がんに対する社内の理解浸透を進めている。
・がんなどの理解を深めるための啓発活動として、以下の取り組みを実施した。
- 毎月野村グループで制作している健康番組(動画)において、「がん検診後の精密検査」について取り上げ、2019年度より健保組合が開始した精密検査受診勧奨の状況を共有するとともに、早期発見・早期治療の大切さについて改めて訴えた。
- 衛生委員会において、野村グループで作成している健康ワンポイント動画を毎月紹介しており、「二次検査の重要性」や「喫煙のリスク」について周知した。
- 新任管理職研修において、復帰フローと両立支援ガイドブックに関する情報を提供した。
・また、風土づくりの効果検証をするために、全社員向け調査(健康意識調査)にて社員の意識を確認し、健康経営の推進に向けた施策検討に活用している。
相談できる環境づくり
◆定期的に社員と上司が1対1でコミュニケーションを取る機会を持つように推奨しており、業務に関すること以外にもキャリアやプライベートに関することを相談することができる。また、全社員を対象に「心理的安全性」に関する研修を行い、誰もが気兼ねなく自分の状況や意見を言える職場づくりを推進している。
◆社員と上司向けの「治療と仕事の両立支援ガイドブック(本人編、上司編)」を野村グループのイントラネットへ掲載し、いつでも確認できる環境になっている。
◆社員の健康に関する社内相談窓口を用意している。
- コーポレート統括部 人事課:産業医・保健師と連携し、会社全体の健康管理を行うとともに、個別社員の相談窓口として対応している。
- カウンセリングルーム:各社員の必要に応じて、臨床心理士ががん等に罹患した後のキャリア等に関する相談にのっている。
- 健康保険組合:セカンドオピニオンや専門医療機関への紹介・受診手配のサービスを提供している。
◆治療と仕事を両立している社員の体験談に投稿した一部の社員が連絡先を開示し、サバイバー自らが野村グループ社員からの相談を受ける環境がある。
制度
◆健康増進
・望まない受動喫煙の防止と社員の疾病予防のため2021年10月より就業時間内禁煙を導入した。同時に健康保険組合が実施しているオンライン禁煙プログラム費用の全額補助の継続や、禁煙に成功した社員へポイントインセンティブを付与するサポートを実施している。社内喫煙所は2021年12月末を以てすべて廃止した。
・野村グループとして、女性の健康促進のため、男女含めた全社員を対象に「女性の健康研修」を実施。CHOと高尾美穂産婦人科医の対談や、医師による解説動画を配信した。
・社員の健康増進のため、部署ごとの平均歩数を競うオンラインのウォーキングイベント「ノム☆チャレWALK」を毎年実施している。歩数や写真を全社員で共有し、「いいね!」やコメントの投稿で応援し合うことで、社員のコミュニケーション向上やコロナ禍での密を避けながらの運動習慣の定着につなげている。同時に参加者の平均歩数に応じた金額の寄付を行っており、2021年度は「国境なき医師団」に寄付した。社員個人への健康増進のみならず、寄付という形での社会貢献につなげている。
・年間の有給休暇取得目標を設定し、定期的に連続休暇の取得を推奨することで、休暇を取得しやすい雰囲気を醸成することに努めている。
・過重労働が生じないにように、システムで時間外労働時間のモニタリングを行っており、一定時間に達した場合は、事前に管理者にアラートが発信される仕組みを取り入れている。
◆予防・早期発見
・30歳以上の社員は原則無料で人間ドックを受診することが可能となっている。女性の場合は、乳がん・子宮がん検診も無料で受けることができ、2020年度より20代女性にも子宮頸がん検診を拡大した。なお、健保とのコラボヘルスの一環として、人間ドック早期受診者にはポイントを付与するインセンティブ制度を導入しており、継続受診・受診率向上につながっている。
・人間ドック受診時には有給の「人間ドック休暇」を利用することができる。
・定期健康診断/人間ドックの受診後に二次検査が必要になった社員へ受診勧奨を実施している。
・がん検診項目で要精密検査となった社員へは健康保険組合とのコラボヘルスにより受診勧奨を実施しており、二次検査・精密検査受診時は、有給の二次検査休暇を利用することができる。
◆罹患後
・半日・時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、復職後の医師の診断に基づく短時間勤務が可能となっている。
・健保組合の高額療養費制度により、医療費の自己負担額が約25,000円/月に抑えられるため、経済的な心配をせずに治療に専念できる。
・欠勤した社員と上司に対して、休みに入った段階で療養と復帰に関する情報提供を行っている。復帰前には、会社が指定する書類(勤務情報提供書、主治医の就業に関する意見書、生活記録表など)を準備しながら、本人や職場における復帰準備を促し、必要な場合は産業医面談を行い復帰後の業務によって体調が悪化しないよう体制を整えている。
その他の取り組みやエピソード
◆2018年度から治療と仕事を両立する社員の体験談を野村グループのイントラネットに掲載しており、匿名・写真なしで可としているが、体験談を読んだサバイバーから徐々に実名・写真入りでの掲載希望が増えている。また、体験談を掲載した社員へ個別に相談したり、体験談を読んでがん検診の重要性を認識した社員が体験談を社内に拡散するなど、社員発の動きが増えてきている。
抱負
・野村グループ各社で先行して取り組んでいる「がんアライ」の活動を知り、小さくてもできる活動から始めている。
・がんアライ宣言の写真を社内に募集したところ、趣旨に賛同して写真を応募される社員が多数おり、がんアライの風土を草の根的に少しずつ広げていきたい。
・がんへの理解を深める教育や社内の理解浸透を促進する情報発信を強化するとともに、野村グループで活用可能な制度についても改めて社内に周知していきたい。
・がんに罹患しても、心理的安全性が確保されて、いきいきと働くことのできる組織づくりを進めていきたい。
講評・コメント
・欠勤した社員と上司に対して、休みに入った段階で療養と復帰に関する情報提供を行うなど、復帰しやすい体制を構築されています。
・人間ドックを原則無料で受信可能にし、有給の「人間ドック休暇」を活用できるようにするなど、早期発見するための取り組みを整備されています。