がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2022 ゴールド】アイバイオテック株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2022 ゴールド】アイバイオテック株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

 

がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:アイバイオテック株式会社

業種: 情報通信業

従業員数: 7名

https://www.ibio-tech.com/

取り組みのきっかけ

 

・SDGs としての取り組みを話す際に弊社の代表の土方は以下の様に話しております。

 

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「癌と闘いながら仕事を続けたい。」

「自尊心を保つのに仕事が重要なんだ。」

「創薬研究支援の仕事は、自分ごととして真剣に取り組めやりがいがある。」

彼は、そう言って仕事を続ける道を進んだ。

「この会社で仕事ができてよかった。もっとここで仕事がしたいのに。」 彼が私に対して最後に言った言葉になった。

この出来事は、会社に彼が残した『財産』だと思う。

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・自社のメンバーが 2018 年末にがんに罹患。その社員が、残りの時間、できる限り仕事をしたいと希望したことから会社全体で、さらにはお客様も巻き込んでサポートする動きが起こりました。余命宣告をされる様な重い状況ではありましたが子供を抱える父親としてしっかりと働き稼ぐ姿を子供たちに見せたい。重荷になりたく無い。そんな気持ちがあったのでは無いかと想像しています。

 

残念ながら彼は、この世を去ってしまいましたがその際に行った仕事の仕方や受け方は、もっと他の方にも渡していけるものなのでは無いかと考え、この経験をより大きな活動にしようと取り組み始めたのがきっかけです。

 

社外のお客様の中には薬を作る方々がいます。この恵まれた縁を働きやすい環境にするために取り入れていこうと活動しています。

 

・また、この取り組みを続けていこうと思えていることは、上記のきっかけをもらった社員以後、採用した罹患者社員3名から

・「治療しながら働ける職場(あったら良いな)が存在し希望がもてた」

・「病気になったけれど 仕事は続けたい」

・「一緒に働く従業員へ病気のことを隠さずに働ける職場で勤めたい」

 

と言ってもらえました。取り組んでいる方向性は間違っていないと実感出来、今後も取り組みを続けようと思える原動力にもなっています。これからも働く環境の質を上げながらこの活動を続けていこうと思います。

 

風土づくり

 

  1. 病気や子育てなどをダイバーシティーとして受け入れる
  2. SDGs 活動として公示
  3. 時間と場所に制限のある方の積極的な受け入れ

 

◆国籍や性別だけではなく、持病やライフステージにおいて起こり得る事項全てをダイバーシティーと捉え、会社活動の枠内で切り分けずに生活できる会社環境を目指しています。特に時間と場所に制限のある方の受け入れと癌罹患者の雇用受け入れに力を入れています。

 

◆罹患者が不安なく働きつづけられるようチーム形式で業務を行い、治療スケジュールや、急な体調不良等にも対応できる体制を作っています。罹患者に限らず、困ったときは周囲に助けを求め、周りも理解してサポートをするという「助け合いの風土づくり」を推進しています。

 

◆罹患者社員への理解を深めるために、ピアサポーターズ「WorkCAN’s(ワーキャンズ)」主催の「ピアサポーター育成研修」へ社内から3名で参加しました。今回は総務だけでなく、罹患者社員チームのエンジニア男性2名も一緒に参加し相談対応やコミュニティの取り方をロールプレイしながら学びました。当社の上記活動を向上するためにも、一緒に働く従業員が罹患者の気持ちに寄り添えられるよう、研修者の幅を広げました。参加したメンバーからは「ロールプレイしたことで罹患者の立場に立った感覚や相談をうけたときの対応方法に対して、気づきを得られ学びになった」という声を聞いています。今後も、受け入れる側のがんへの理解を深める活動も増やしていきたいと思っています。

 

相談できる環境づくり

 

◆カウンセラー資格を保持する経営層との 1on1 ミーティングとキャリア支援

◆テレワーク環境の整備と業務の獲得

◆有給休暇の時間単位取得

◆在宅勤務の就労環境でも、毎朝定時に全員で顔を合わせ、朝会(朝礼)

 

・経営層の心理学的な理解は必須のため、代表取締役 2 名のカウンセリング関連資格を取得し、継続的な学習を続けています。合わせて自身の状況に合わせたキャリアアップの方法を経営層と話し合う時間を実施しています。上司と定期的に 1on1 ミーティングを実施することで「罹患してから目の前の事しか考えてこなかったが、1年くらい先のことまで考えるようになった」など、将来に目を向けてもらえる切っ掛けになっています。

 

・仕事の性質上、秘匿情報も多く業務の持ち出しが難しいものがあります。時間をかけて、お客様へ相談を行い、協力いただくことでテレワークでも可能な業務の切り出しを行い、時間と場所の制約を外すことに積極的に取り組んでいます。

 

・突発的な対応を迫られるケースに利用可能な様に時間単位での有給取得制度を作成しました。同時に複数人で複数の仕事を行うチーム形式で業務を進めることでそれぞれの突発的な事案にも業務影響が小さくなる様に取り組みを進めています。

 

・話す内容の中に「今の身体の感じ」を設け、「具合が悪い」「調子が悪いので休みたい」「横になって仕事を行いたい」など、無理せず発言できる環境があります。実際に手術後や投薬の影響などで、本人が意図しない業務影響が出る場合もありましたが全体でフォロー体制を築く事ができ、安心してお休みいただける協力体制が造れています。

 

◆今年度も罹患者社員が1名入社しました。

今回初めて罹患者歓迎会時に、現病歴や既往歴のある社員は、自己紹介兼病歴を発表する場(任意)を設けました。弊社には、がんを患いながら働く罹患社員や過去に大病を患った社員が複数名在籍しています。その病歴のある先輩社員達から自身の病気について先に発してもらうことで、新入社員の罹患者社員も自身の病気についてオープンに伝えやすい場ができたと思っています。その後、お互いの病気について、質問したり話をしたりしやすい雰囲気づくりができたかと思っています。今回行った動機として、新入社員が面接時に「病気のことを隠さずに仕事をしたい」と言ってくれたことがきっかけです。

 

入社時から病気のことも含めて、先輩社員へ知ってもらうことで働きやすい(休みを言いやすい)環境作りが出来たと思っています。罹患者社員からも好評だったため、今後も続けていこうと思います。

 

制度

 

◆健康診断/人間ドックの受診促進、費用補助

・定期健康診断の受診率は毎年 100%にのぼります。追加項目(胃がん健診、大腸がん検診等)も会社負担で実施しています。

 

◆運動習慣の声掛け/費用補助

・健康維持や運動不足解消のためにも、歩くことを推奨しています。今年度はリレーフォーライフセルフウォークリレー(がん患者支援活動)への社内参加者数も増え、運動を行いながらがん患者支援活動も行っています。費用は会社が負担しています。

 

◆長期入院時、本人の希望と病院の許可があれば、病室からテレワークを行える制度があります。過去2名の罹患者社員も休職することなく、病室より朝会の参加や業務を行いました。

 

◆治療と仕事の両立面で罹患者自身がどうしたいのかを 1on1 ミーティングで話し合い、可能な限りそれに近い状況を作れる様にしています。会社全体でサポートしていく体制と病気と仕事を切り離さない考え方を徹底しています。

 

・休職という選択だけではなく、少しでも働き続けたい方がいることを自社の社員の事例から知ることができました。それぞれの働ける環境をオープンに話し合い、全員に理解してもらった上で給与や労働時間を個別に決定します。

 

◆罹患者社員は「仕事と治療の両立」を前提として働いていることから、「短時間正社員」制度枠の月間労働時間数を固定するのではなく、各個人が無理のない範囲で月間就労時間を決められる、「月〇〇時間」といった短時間正社員制度を増やしました。

 

・治療の内容によっては、週ごとの治療の内容が変動することや、休みが多い週、稼働できる週などバラつきがあるため、あらかじめ雇用形態(月間時間数)を決めておくことで、チーム側もサポート体制を前準備でき、各人の雇用形態と治療スケジュールを共有しながら連携を取り、罹患者社員が治療に専念し働きやすい環境をつくっています。

 

・治療内容や、体調によって一月内に労働時間が足りなくても翌月で精算してもらうなど、給与額がすぐに変わらない仕組みも加えました。

 

その他の取り組みやエピソード

 

◆IT企業だからできる支援を模索

IT企業だからできる支援がないか医薬の専門家とディスカッションを実施する場を設けました。

 

人財不足が深刻なITエンジニア業務を治療を行いながら経験することで寛解後、弊社で働き続けていただくことはもちろん、他にやりたいことを見出した場合でもステップアップを目指しやすいキャリア形成となるようにエンジニアとしての仕事を実施して頂いています。

 

◆「がんと就労」の取り組みとして、働くことに意欲のある方の積極的な求人を行っています。

・雇用した罹患者社員から、罹患者の方は「病院の窓口」へ相談する人が多い。今まで入社した社員3名共に、病院へ求人情報を探していた経験が有ることを知りました。

 

その情報を元に、病院側へ罹患者向けの求人情報を置いてもらえないか尋ねましたが、「職業斡旋」にあたるということで情報を置くことができませんでした。罹患者でも働くことに意欲のある方達へ求人情報を届けるために、どのようなアプローチを取れるか今後も追求していく必要があると思っています。

 

・罹患者へ求人を出せる場として、ハローワーク「長期療養者支援窓口」に求人を出しています。ただ、就職困難者(罹患者)がハローワーク「長期療養者支援窓口」を知るまでに時間がかかっている現状を知りました。「長期療養者支援窓口」に出している求人は「非公開」求人の為、同県内でも管轄外のハローワークからは直接求人番号の検索か窓口担当者を通じなければ、求人情報が伝わらないようになっています。一人でも多くの就職を希望する罹患者の方へ知ってもらえるには、どのような方法で求人を出すことが良いか、今後もハローワーク担当者と随時確認、連携を取りながら、進めていきたいと思っています。

 

◆がん罹患者社員を雇用することで、新たに気づいたこと

・2022年2月、山梨在中の方から、『「がんアライ部」の記事を見て』とHPのお問合せより連絡がありました。弊社を知ってもらったきっかけが「がんアライ部」でしたので、大変驚きました。

 

その方は、現在がんが寛解し、働ける状態になったため、 求職活動を行っているということでした。ただ、最寄りのハローワークや病院の窓口へ相談しても、がん患者受け入れ先について全く情報が無く途方に暮れていた矢先に、インターネット内で、弊社の「がんアライ部」の記事と出会ったということでした。「IT業界」に興味があることや、業務の内容について興味深いものを感じたということから勇気を出し問い合わせメールを送ったということでした。

 

・その後、オンラインで話す場を数回設け、無理せず働くにはという前向きな視点で意見交換を行い、今回初めて県外在中の方の採用に至りました。入社時には山梨県から茨城県の事務所へ来ていただき、社員全員で顔合わせを行いスタートしました。

 

・体調面や初めて行う業務ということを心配し、雇用形態として週1日〜少しずつ増やしていければと弊社から提案しましたが、本人の希望より、一日4時間、週5日労働で働きたいということから、本人の希望に沿う形で始まりました。

 

県外在中でしたので、業務はオンライン業務で進めました。業務を遂行していく中で、オンライン業務ならではの画面越しのコミュニケーション不足や体調が悪い日への配慮など、チームの仲間としても、どこまで踏み込んで良いものか、踏み込み過ぎていないかという課題がでました。

 

その後、数カ月働いて頂きましたが、体調が良くない日が続き、体調を優先にして頂きたい思いから話合いを重ね、現在は一旦離職をという形となっています。

 

今後の課題として、業務上始めから「オンライン」業務で行えますが、業務に慣れるまでは対面が良いのか、業務に慣れ始めたころから「オンライン」業務へ切り替えるか、どのように業務遂行することがお互いに良い状態を築けるかを模索していきたいと思っています。

 

・「がんアライ部」への活動報告を通して求人を必要とする罹患者への情報源になれたことをとても嬉しく思っています。発信し続ける大切さを改めて感じました。

 

・また、雇用することで新たな課題にも気づくことができ、今回私たちにとっても入社して頂けたことでまた一つ学べる機会を頂けました。

 

抱負

 

・今回採用した社員から学んだこととして、雇用形態はどのような形で決めることがお互いにとって良い状態を保ちながら働けるのかと改めて考えさせられました。無理して働いて欲しくないという弊社の思いと本人の働く意欲(意思)をどのように擦り合わせながら、雇用形態を決めていくことが良いものか模索しています。入社し、体調を崩すことは本末転倒。今回採用時にも雇用形態について慎重に進めた事項でしたが、本人の意思を尊重することがお互いにとって良かったのか今でも自信がありません。今後採用時の「治療と両立」の働き方として罹患者と向き合いながら進めていく事案と思っています。

 

・今出している求人は意欲のある罹患者など働くことが困難な方にニーズが合っていると思っています。現在の求人情報提供としてハローワークの「長期療養者支援窓口」のみの活動の為、情報発信源の場を広げていく必要があると思っています。

 

・その中で罹患者が数名雇用できたときは、罹患者チームを作り、お客様から頂いた1業務をチームとして担って頂きたいです。チームで支えながら達成することで達成感や充実感を味わうことができるのではと思っています。また、その過程で私たちも改善、改革を必要とすることが見えてくると思うため、先ずは一つの目標として掲げています。

 

講評・コメント

 

・罹患者への積極的な求人・採用活動を推進されており、一人でも多くの就職を希望する罹患者のもとに状況が届くよう工夫をされてます。

 

・『「がんアライ部」の記事を見て』と、求職者より問い合わせがあった事は事務局として大変嬉しく思います。

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