【がんアライアワード2022ゴールド】株式会社日立システムズフィールドサービスの「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:株式会社日立システムズフィールドサービス
業種:IT機器、IT活用機器の保守サービス・ファシリティサービス・ネットワークサービス・ビジネスサポート・マネジメントサービス・製品販
従業員数:2,765 名(2022年4月1日現在)
取り組みのきっかけ
近年、がんに罹患する社員の増加やがんによる死亡者が発生し、治療の必要性を理由とする就業の制限や就業の継続を妨げられることがなく、適切な治療を受けて職場、プライベート双方で心身の健康を保って、就業が継続できる会社をめざし、取り組みを開始した。
人事・勤労担当者による、会社制度(休職制度・短時間勤務・在宅勤務等)の説明、産業保健スタッフによる支援(定期面談による心身両面のサポート、必要時、上長、人事・勤労への橋渡し)、職場上長の支援(日々の声掛け、業務調整、休職中の連絡など心理面のサポート)など、連携し、個々に応じた対応支援を行っている。
風土づくり
◆2022年4月に「女性の健康セミナー~男性こそ参加対象!~『男性だから女性の健康について知らない』は通用しない時代です」を社内(オンライン)開催。当社の女性社員割合が低い現状を課題として捉え、女性の健康メカニズム・女性特有のがん等の疾病や予防に対する理解、職場での配慮等について、男女双方を対象としたセミナーを開催した。
配信後もアーカイブ動画を常時公開し、より多くの方に受講頂く機会を設けた。
◆2022年9月に「働く世代のがんセミナー~仕事と治療の両立、がん予防について考える~」を社内(オンライン)開催。がんステージⅢに罹患し、就労しながら治療を受けられたがんサバイバー講師を迎え、手術・抗がん剤治療を経て、社会復帰後に見出した人生観についてお話し頂いた。
配信後、講師資料を常時公開し、より多くの方に受講頂く機会を設けた。
◆2021年11月に関西地区で当社、サスティナビリティ推進部門・総務部門、保健師の共催で健康管理セミナーを計3回開催。ヘルスリテラシー向上と女性の健康(女性特有のがん予防含む)について保健師が講話。
2022年度については中国地区と本社地区において計4回開催予定。がんアライ宣言の趣旨説明やがん検診の積極的な受診勧奨を行う。
◆日立保険サービスにより、個別にがん保険・医療保険に関するアドバイスを受けられる機会としている。
◆2021年9月に社長メッセージとしての「がんアライ宣言」ポスターを制作し、社内全拠点に掲出。合わせて、コロナ禍による在宅勤務の長期化等を受け、産業医や保健師によるリモート面談、社外健康相談窓口の周知、保健師メールマガジン等を発信し、体調の変化を自覚したら気軽に相談を願うようアナウンスを行っている。
また2022年4月には管掌役員と各部署、社員の肖像写真をデザインした『「がんアライ」アワード2021シルバー受賞』ポスターを制作し、社内全拠点に掲出した。ポスターには「がんアライ宣言」を掲載し、がんに罹患しても働き続けられる会社であることを従業員へ積極的に周知した。
◆2020年9月より社長による「健康経営宣言」を定め、社員が職場・プライベート双方で心身ともに健康を保てるよう健康維持向上施策への取り組み・推進支援を行っている。
◆2022年8月~9月オンラインによる「健康診断の受け方・活かし方説明会」を全課長職以上、計10回実施。その中で、がんアライ宣言の趣旨説明やがん検診の積極的な受診勧奨、がん罹患時等に申請可能な「治療勤務制度」の短時間・短日数勤務についても説明し、所属員が申請する際の各職場での理解・協力を依頼した。
相談できる環境づくり
◆産業医・保健師、人事・勤労・安全衛生、所属上長、社外EAPが一体となり、個人の治療状況に応じたサポート体制を立ち上げており、社内ホームページや定期的な通知等で周知している。
◆定期健康診断等の結果で精密検査の指示を受けた社員には保健師が個別にフォローを行い、全社でフォロー状況をタイムリーに管理、産保スタッフ間で共有できる仕組みを構築している。また、管理職を対象とした外部講師によるメンタルヘルスラインケア研修への保健師参画等、保健師の活動を社内に周知することで、がんに限らず、上長としても保健師に相談しやすい風土づくりをすすめている。
◆がん治療をしている社員への勤務上の配慮検討のために必要な情報は、社内保健スタッフ(主として産業医)が主治医と情報連携し、配慮検討に必要な情報展開を会社側(人事・総務スタッフ)に行っている。
◆本社地区をはじめとして「保健師メールマガジン」を随時発行し、社員の主体的な健康づくりを啓発している
【本社地区、発行内容】
・2021年5月号:健康的な食事、摂っていますか
・2021年5月:禁煙デー特別号
・2021年7月号:健診結果の検査項目を要チェック!
・2021年7月:肝炎デー特別号
・2021年11月:質の良い睡眠とれていますか?
・2022年2月:肝臓疲れていませんか?
・2022年5月:禁煙デー特別号
・2022年7月:肝炎デー特別号
制度
◆全社員に対して定期健康診断(人間ドック:がん早期発見につながることもある腹部エコー、胃がん・肺がん検診を含む)受診費用(本人負担額)の全額、会社補助をおこなっており、個人負担を伴う、がん検診等、各種オプション検診の自発的な受診の動機付けとしている。
・毎年3月の人間ドック申込み時期に合わせ、35歳以上の全社員に対して、がん検診メニューと補助金申請方法等を案内する社内通知メールの発信と社内ホームページへ掲載。検診受診率の向上をめざしている。
・人間ドック時のオプションとして各種がん検診の受診を推奨しており、がん検診受診者には、健康保険組合から補助金を支給している。
・ピロリ菌感染が疑われる胃の所見がある社員へ、ピロリ菌検査経験の有無を確認し、未検査の場合は検査を勧奨、ピロリ菌陽性者には除菌を勧め、除菌確認まで行っている。
◆私傷病休職制度、半日単位や時間単位でも取得できる年次有給休暇、フレックスタイム勤務や時差出勤に加え、仕事と治療の両立支援制度として、フレックス勤務、時間単位年休、時差出勤等の柔軟な勤務・休暇制度を設けている。
また、2020年10月からは、働きながら治療を続けるニーズが高まっていることを受け、がん治療他を対象とした「治療勤務制度取扱規則」が新たに制定され、短時間勤務(7時間、6.5時間、6時間、5時間)や、在宅勤務制度を利用可能となり、さらに2022年6月からは就業日数を週あたり、4日または3日とする短日数勤務も選択可能となった。
・年休を最大20日間翌年に積み立てる制度を設けており、長期治療にも対応しやすい制度を整えている。
◆2020年12月より、遠隔禁煙プログラムを導入。電話・タブレット端末を使用し、遠隔により、病院に行かずに禁煙外来を受診できる禁煙プログラムとなっており、全額会社負担(一部健康組合負担)にて実施しており、2022年については1月及び5月に募集をおこなった(実施期間:3か月間)。
当社の喫煙者率(対前年度比)は2018年(▲1.6%)、2019年(▲0.5%)、2020年(▲0.6%)と減少傾向にある。
◆社内産業医・保健師が定期健診結果を確認し、受診フォロー~早期治療に繋げている。
◆2021年度より本社地区において喫煙施設内での着火式タバコの喫煙を不可とし、タールなど有害物質の社内での吸引防止や非喫煙者への受動喫煙防止を行ってる。全国拠点へ展開推進中。
その他の取り組みやエピソード
◆新型コロナウィルス感染拡大防止対策として在宅勤務機会が増加している状況下、上長による部下の心身面の変調気付きや部下から上長への変調を伝えるツールとして各職場でオンラインを活用し、毎日のコミュニケーションを図っている(Outlook、Teams等のツール活用)。
◆上述の「がんアライ宣言」ポスターと合わせ、社長名の「健康経営宣言」ポスターを同時に制作・掲出し、会社としてがんアライを含めた健康維持向上施策の推進支援メッセージを全社員へ発信している。
2022年4月には「健康経営宣言(健康経営優良法人2022~ホワイト500)」ポスターのデザインを社長と若年層社員の肖像写真に変更し、社内全拠点に差替え掲出した。
◆休業者には休業申請書の提出を依頼している。休業申請書は保健師が確認後、上長と本人に連絡し、病状確認を行っている。
また、復職の際には必ず主治医意見を確認している。
休業者の情報は産業医へ報告し、復職後の配慮が必要な際には関係者(本人、上長、労務担当者)にて産業医面談を実施し、配慮事項を決定している。
産業医面談の実施前に上長判断で迅速で適切な配慮を実施いただいているケースも多い。
【エピソード①】
・2022年6月初旬、人間ドックにて、がん疑いあり。所属上長に報告し、迅速に治療できるよう、業務上の配慮を受け、6月下旬~入院。内視鏡手術にて切除。
早期がんの診断であったが、迅速な治療により完治、今後は年1回の健診での経過観察となる。
【エピソード②】
・2021年7月、人間ドックにてがんが見つかる。
8月~再検査、10月に内視鏡手術11月に腹腔鏡下手術のため入院。
抗がん剤治療はなく、全て年休で対応し、在宅勤務中心の配慮あり。
切除後の経過も問題なく、就業中。
【エピソード③】
・2021年12月、かかりつけ医にて、がんを疑われ、12月下旬より入院、がんステージⅣ、転移なしの診断。
化学療法のため、20日間入院。
退院後、毎日~週3回の通院と体力低下もあったため、上長と相談し翌年3月末まで休業、体力が回復し、就業可能な状況と主治医より診断を受けたことを確認し、翌年4月から復職。
抗がん剤の副作用により発疹や浮腫、しびれが出現したが、職場の上長や同僚の配慮があり、支障なく、就業。残業なし、力作業のない職場にて勤務、3週間に1回の化学療法をおこない、通院は休日や年休で対応。
抱負
当社、従業員の平均年齢は 44.0歳と高く、がん罹患者も増加傾向である。
がんによる死亡者も毎年発生しているため、がんの早期発見早期治療を更に推進し、死亡率低減をめざしていきたい。
それと共に、がんになっても安心して働き続けられるよう、相談できる場や機会を増やすなど、治療と仕事の両立支援にも積極的に取り組んでいきたい。
具体的には下記、取り組みついて検討していきたいと考えている。
・女性専用の相談窓口設置
・新入社員全員にピロリ菌検査、肝炎ウイルス検査実施。
・社内のがんサバイバー交流会
・がんに関する意識調査アンケート実施、結果を全社展開する。
・治療と就労の両立支援ガイドブック作成
講評・コメント
・健康に関するセミナー開催や情報発信、「健康診断の受け方・活かし方説明会」を全課長職以上、計10回実施など取り組みを進められていることが伝わってきます。
・個別性のある事柄への対応について熱量を感じます。
・治療のための短日数勤務制度(原則として1週4日とし、事情があり会社が認めた場合は、1週3日)を導入し、仕事と治療の両立支援を強化されてます。