【がんアライアワード2022ゴールド】株式会社ポーラの「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2022に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:株式会社ポーラ
業種: 製造販売業(化粧品メーカー)
従業員数: 1,359名(2021年12月末現在)
取り組みのきっかけ
がん治療に向き合いながら、同じ闘病中の方々やご家族のサポートをする弊社ショップ経営、宮城県・仙台市伊藤千津子オーナーの存在を知った弊社前社長が取り組みに感動。
伊藤オーナーは自身も闘病しながらエステ、化粧品のカウンセリング・販売の仕事やボランティア活動に取り組むことで、同じ病気と闘う人を含め、地域の多くの人に元気を与えていました。
その姿を通して人と人との関係性から生まれるポジティブな可能性を改めて感じ、「ここにこそポーラが大切にしたい価値がある。
新しい働き方・新しい価値・新しい文化を現場とともに『共創』していきたい」という想いからスタートした。
風土づくり
◆「がん共生プログラム」がある。がんに罹患したポーラで働く仲間が仕事を諦めることなく、「就労と治療」の両立をいかに実現できるかを考え、設計したプログラム。
◆がんに対する理解を深めることを目的に、就労サポート制度がまとめられたプログラムブックの配布。がんに対する基礎知識や最新の活動状況を月に1回以上更新するイントラネット。がんが、より身近なものであるという意識を高める活動を行っている。
◆社員90%以上が視聴する社内情報動画発信(年3回配信)にて、社内のがん共生の取り組みを定期的に紹介。理解を深め、り患しても暮らしていきやすい風土醸成、取り組みをサポートする社内ムード醸成をしている。
相談できる環境づくり
◆社内のがん経験者が自身の経験をプログラムブックやイントラネットで公表し、その経験を社内で大切な価値として共有している。がん経験者が自らサバイバーであることを公表することにより、新たに罹患した人が年齢や組織を超えて相談できる体制を整えた。
◆病院の先生には聞きにくいことや医学用語が難しく罹患者が理解できない場合等は、看護師や保健師が常駐している健康管理センターにいつでも相談できるようになっている。また、セカンドオピニオンを希望する場合は産業医に相談し、本人の希望を聞き適切な病院を紹介してくれる環境がある。
制度
【従業員】
◆健康増進・早期発見の取り組み
・年1回の健康診断時では、がん検診・婦人科検診をワンストップで受診することが可能。
30歳以上の女性が受診できる乳がん検診では、マンモグラフィーか超音波検査を自分で選べます。子宮頸部細胞診と子宮経腟超音波は全年齢に補助。
男性の前立腺がん検診も50歳以上に補助している。婦人科検診の受診率は約80%。
健康診断はもちろんのこと、再検査についても業務時間内受診の容認、交通費の支給。上長も関与しながら積極的に促している。
・健康増進と意識の向上を目的とし、健康月間を設け、社員食堂で健康メニューを提供。
・2018年5月からは、従業員が健康診断の結果をわかりやすく理解できるようにPepUp(ペップアップ ※webサービス)を導入。情報提供・フィードバックを行っている。
◆治療支援
・傷病短時間勤務制度
1日最短4時間を所定労働時間として勤務が可能
・時間単位有給休暇制度
1時間単位で有給休暇の取得が可能
・傷病退職カムバック制度
退職から最大2年間まで、退職時と同様の社員区分にて再入社可能
・フレックスタイム制
コアタイムの前後は、原則として自由に出退社ができる制度
・リモートワーク:全従業員を対象とした制度
通院のある日、治療の副作用による体調不良の時などにも使用可能
・復職後の有給休暇が早期に付与される制度
従来よりも早期に有給を付与。治療しながらワークライフバランスを考慮した就労が可能に
【ビジネスパートナー】
◆健康増進・早期発見の取り組み
・ビューティーディレクター(ポーラ福祉共済事業団* 会員の約1万人対象)に対しては、がん検診にかかる費用の一部補助。
・ビューティーディレクターを束ねるグランドオーナーへは、「GOドッグ」と呼ばれる総合健診を全額会社負担。
・さらに半期に一度行われる優秀者を対象とした表彰式で、乳がんのセルフチェックブースを構えるなど、がん対する知識を習得する機会を積極的に設けている。
*2ビジネスパートナーの互助組織
◆治療支援
・ビューティーディレクターの収入を一部サポートする制度を設け、がん治療で長期間販売活動ができなくなった場合でも、安心して治療を受けられ、復帰しやすい環境を整えている。
・そして、ポーラ福祉共済事業団会員を対象とした、復帰・両立サポートに新制度を導入。
-個々の状況に応じてがん治療の初期費用の一部を補助する「治療応援金」
-治療による外見変化に対する費用を一部補助する「アピアランスサポート」
-復帰時に必要な物の購入等に使える「ショッピングポイントの付与」
スムーズな復帰をさらに後押している。
その他の取り組みやエピソード
ここ数年マネジメント改革を実践。「共創型組織」をテーマに展開している。その中ではダイバーシティの啓蒙や、働き方改革を同時に進めている。結果として、がんを始めとする病気や介護を抱えるメンバーなども働きやすい環境づくりにつながっている。
このほか、下記のような取り組みを行っています。
【2022年活動状況】
弊社内の活動に留まらず、「社会への還元」を目指し「がん罹患者とそのご家族に優しい社会を!フレンドリーアクション!」をテーマに加え活動を始動中。今後の基本的な方針としては弊社内に留まらない、社会への還元を視野に入れた活動を目指しいく。
【フレンドリーアクション】
・直接お客さまに接するビジネスパートナー「ビューティーディレクター」をアドバイザリーメンバーに迎え、弊社が「がん共生プログラム」を実践する意義、罹患者のお客様やそのご家族から求められている事、今後の方法性について徹底的にディスカッションを実施。その過程を踏まえ「ポーラのお店」でできるアクションを明確化し、2021年、教育プログラムを構築。同年8月よりウェビナーでの研修スタート。
・2022年も取り組みを進化させ、同年4月には、罹患者やその家族、支える方々を接客の際、寄り添う接客ができるようマギーズ東京様のご協力も得て、全国約100か所のポーラショップ店長向けの「傾聴力」の研修を実施。同年10月にも、闘病により変化する肌や体に対して、どのようなケアやメークができるかなどに対する知識習得の研修を実施予定。
・タイ・バンコクにあるバルムンラード病院にて、闘病中のがん罹患者の方々のために、肌悩み、メーク悩みに対する情報・知識・技術を提供する動画作成。闘病中の方々のQOL向上サポートのための取り組みを行っている。
・ホテル・旅館のアメニティ事業を行う部門では、乳がんに罹患された方のためのスキンケア・メークのアドバイス冊子を制作。この冊子は「ピンクリボンのお宿ネットワーク」に加盟している全国100か所以上の宿泊施設で配布予定。
※「ピンクリボンのお宿ネットワーク(会長:畠ひで子=匠のこころ吉川屋女将)」は、乳がんを患い、手術を受けて回復の道を歩みながらも、術後の痕を気にして旅をあきらめてしまうという方たちに、もう一度、誰の目も気にせず旅に出かけてもらい、心ゆくまで旅館・ホテルでの入浴などを楽しんでいただきたいという目的で、全国の病院・看護団体とホテル・旅館が連携し、旅をサポートするために2012年に設立。
下記は作成した冊子の一部。
また、この冊子は読売新聞(22年7月8日)に取り上げられ、弊社のお客様相談室(CS推進室)に「欲しい!」との要望が多数よせられました。
【他社・他団体との連携】
・リレー・フォー・ライフナショナルスポンサー(日本対がん協会)
2019年よりナショナルスポンサーに就任
・リレー・フォー・ライフにおける募金活動(日本対がん協会)
リアルイベントも一部再開したリレー・フォー・ライフに参加。募金活動を実施。12月に日本対がん協会へ寄付を行う予定。
・ピンクリボンのお宿ネットワーク
乳がんに罹患された方のためのスキンケア・メークのアドバイス冊子を制作。加盟するホテル・旅館にて配布。
・がん対策推進企業アクション 企業コンソーシアム40に選出
コンソーシアムに参加できる先進企業40社に選出いただき、「治療と働く」という企業にとって重要なテーマを検討
抱負
弊社内に留まらない、社会への還元を視野に入れた活動を目指しいきたいと考えています。
特に、弊社の販売拠点の1つである、全国約3200ヵ所(※2021年12月現在)のポーラショップにおいて、罹患者やその家族、周囲の方々に対する美容を通したサポートはもちろん、ビジネスにとどまらないサポート活動に尽力したい。
講評・コメント
・罹患者やその家族、支える方々に寄り添う接客ができるように、全国約100か所のポーラショップ店長向けに「傾聴力」の研修を実施されています
・毎年着実にがんと就労に関する取り組みを進化させています。