がんアライアワード受賞企業の取り組み事例

   

【がんアライアワード2023ゴールド】ブラザー工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

【がんアライアワード2023ゴールド】ブラザー工業株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部

がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。

 

ゴールド受賞:ブラザー工業株式会社

業種:製造業

従業員数:3,890名 ※2023年03月31日現在

https://www.brother.co.jp/

働く人を支える制度・ 体制

 

【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明

健康経営宣言/がんアライ宣言/その他の宣言

 

■健康経営宣言2016年に「ブラザーグループ健康経営理念」を制定し、最高健康責任者(CHO)のもと、さまざまな活動戦略的に取り組んでいる。

 

■エイジマネジメント

従業員がいつまでも活き活きと働き、働くことでさらに健康になることを目指して「ブラザーアクティブエイジングモデル」を作成。本モデルに沿った活動をすることで、エイジマネジメント対策を推進している。

 

■がん対策推進

厚生労働省委託事業「がん対策推進企業アクション」への参画を社内イントラネットや全社員メール、社内掲示板で従業員に向けて公開している。

 

■がんアライ宣言

社内イントラでがんアライ宣言を公開。昨年のがんアライアワード受賞も社内イントラで公開。

 

【2】休暇制度

 傷病・病気休暇制度/傷病・病気休職制度/半日単位の有給休暇取得

 

■傷病休業・傷病休職制度

私傷病や体調不良を理由とし、通常勤務が出来ない状態が3ヶ月連続した場合、3ヶ月経過後の翌月1日より休職となる。休職開始時点で勤続10年以上の方は最大2年9カ月、10年未満の方は最大1年9カ月の休暇休職が可能。正社員のみでなく、シニアスタッフや嘱託社員も同様。会社を休み4日目以降は傷病手当金がブラザー健康保険組合より1年6ヵ月の範囲で支給される。

 

■半日単位の有給休暇取得

原則月4回を限度に取得できるが、私傷病の通院や家族の通院補助に限り上限以上の取得が可能。

 

【3】勤務制度

時差出勤制度/フレックス勤務制度/在宅勤務(テレワーク)制度/短時間勤務制度 

 

■時差出勤制度・フレックスタイム制度

2023年4月よりフレックス制度の改定。コアタイムを撤廃し、7:00-20:00の時間帯(在宅勤務時は5:00-20:00も選択可)で1日1時間以上の勤務で出勤となる。コアタイムの撤廃により、これまで以上に治療と仕事の両立が可能になった。

 

■在宅勤務制度

原則週に3日以上の出社の範囲内で在宅勤務可能。特別な事由(育児/介護/疾病/障がい)があれば必要書類提出の上、週1~2日の出社も可能。

 

■短時間勤務制度

育児・介護・疾病との両立を目的に一定時間勤務時間を短縮することができる。

 

【4】支援体制

社員相談窓口の設置/保健師・産業医等の医療職の支援/外部医療機関との連携/外部支援サービス(EAP等)の活用/上司等との1on1、面談等の機会/人事担当者等との面談等の機会/主治医との書面上での情報連携/休職中のフォロー/(休職した場合)職場復帰支援プランの策定・実行/復職後のフォロー

 

■社員相談窓口

従業員がいつでも相談できるよう、産業医・保健師への相談窓口を設置。また、人事制度に関する相談も人事労務への相談窓口が設置されている。

 

■保健師・産業医の支援

健康管理センターには産業医5名、保健師8名が在席しており、病気になった従業員と職場・人事労務・主治医と連携し、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。

 

■上司との定期的な1on1

上司と部下のマンツーマン面談。業務のみでなくプライベートのことも自由に相談できる。忙しい上司ともコミュニケーションを取れる時間があることで、タイムリーに体調の相談することができる。

 

■外部医療機関、主治医との連携

主治医との連携が必要と判断した場合は本人の同意を得たうえで診療情報提供書にてコンタクトをとっている。

 

■外部支援サービス

必要に応じて社内外のジョブコーチとも連携し、業務が円滑に実施できるようなサポートを行っている。

 

■人事労務との面談

復帰後の職場環境調整や働き方など必要に応じて人事労務も交えた面談を行っている。

 

■休職中のフォロー

休職中も定期的に産業医と保健師との面談を実施し、復帰が見込めるタイミングでは職場上司も同席し、復帰後の業務調整を行う。また、復帰前にはご本人・産業医・保健師・職場・人事労務で復職検討会を行い必要に応じて制度の活用も検討する。

 

■復職後のフォロー

復帰後の環境も整えたうえで復帰となり、その後も定期的な産業医・保健師との面談、上司とのコミュニケーションを行っている。

 

■その他

疾病をもつ従業員へのフォローは休職を要さない場合も行っている。

 

【5】健康増進支援 

健康診断受診率増加に向けた取り組み/健康診断受診率100%達成/がん等の任意検診受診費用の補助/健康診断で「要検査」となった人のサポート/必要に応じた産業医・保健師の面談/定期的な産業医・保健師との面談/禁煙に関する取り組み/日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)/健康増進イベントの開催/健康管理に関するアプリの配布/休憩室の整備

 

■健康診断受診率増加

健康診断は会社の病院で就業時間内に受診できる。環境のみでなく、健康管理センターから健診の案内を工夫して配信し、健康診断の受診率は100%を達成している。

 

■費用補助

がん検診(胃バリウム検査・便潜血・子宮頸がん検診・マンモグラフィー)を含む総合健診は自己負担2500円。55歳以上の正社員・シニア職員は自己負担なしで受診可能。オプション検査(胃カメラ・大腸カメラ・PSAなど)も追加費用で受診可能。がん検診の受診率は例年95%前後。

 

■産業医・保健師の面談

相談窓口設置。希望者、また健診結果から必要と判断した方に面談を実施し、必要に応じて継続フォローを行っている。毎年新入社員には全員面談を行っており、2022年度より女性には子宮頸がん検診・HPVワクチンについて説明。

 

■禁煙の取り組み

2023年4月より敷地内全面禁煙。サポートとしては、禁煙外来の費用補助、アプリを使った禁煙チャレンジ、ペア禁煙、ニコチンパッチを使った禁煙指導、産業医・保健師のフォローを行っている。

 

■その他健康施策

健康教室、健康生活月間、睡眠プログラム、年代別の運動プログラム、食堂イベントを実施。

 

働く人を支える風土、環境

 

【1】啓発、研修

社員向けのがんに関する研修/上長・管理職向けの両立支援に関する研修/女性向けのがんに関する研修/がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供/罹患者の体験談を聞く機会の提供/その他啓発、研修

 

■社内研修

2020~2022年度は専門医を招いたがんセミナーを実施。また2021年度は胃がんをテーマに保健師が講師となって健康教室も実施。健康教室はグループ会社も含めて1500名以上が参加した。

 

■がんe-ラーニング・がん検定

総合検診対象の35歳以上は必須受講としてがん検診についてのe-ラーニングを実施。楽しく学んでほしいという想いから、e-ラーニング受講後に受験できるがん検定も合わせて行った。e-ラーニングは受講率89%、がん検定は参加者452名と多くの方が受講。がん検定では理解が深まったと回答した人が93%おり、がんヘルスリテラシーの向上を図ることができた。

 

■上長・管理職向け

メンタルヘルスラインケア教育の中で両立支援に関する情報提供を行っている。

 

■子宮頸がんセミナー

専門医を招き子宮頸がんに関するセミナーを実施。男性にも聞いていただけるようPRを行い、男女計368名が参加。今年度はHPVワクチンをテーマとしたセミナーであったため、ターゲット層である20代の女性の参加促進活動をおこない20代女性の43.6%以上が参加した。

 

■体験談を聞く機会

RFLの活動とコラボし、社内のがん経験者の話を聞ける機会を年に2回設けている。今年度はより多くの方に聞いていただけるように就業時間内で開催し、後日レポートを作成して当日参加できなかった方にも情報を配信。体験談を聞く会当日は2日間でのべ225名が参加した。

 

■その他

名古屋を拠点とした多職種連携「がん就労を考える会」に統括産業医が運営側として参加。積極的に参加し、地域の両立支援の情報収集を行っている。

 

【2】情報発信

イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信/社内報等での情報発信/両立支援に関するハンドブック・ガイドブックの配布/罹患者の体験談を見られる機会の提供/その他情報発信  

 

■がん情報をイントラネットで公開

社内のイントラネットで過去に配信したがんに関する教育資料もまとめて掲載し従業員がいつでも閲覧できるようにしている。

 

■コラム

健康管理センターから毎週配信している健康コラムの中で、2月は両立支援月間として両立支援に関する内容でコラムを配信している。

 

■両立支援ガイドブック

シェアポイントサイト上に「治療と仕事の両立支援ガイドライン」を公開し、社内の両立支援に対する考え方や制度をまとめている。また「がんと治療」「不妊治療と仕事」とテーマを分けて具体的な支援方法を掲載している。

 

■体験記の公開

2022年度より治療と仕事の両立を体験された方の体験談をイントラに公開している。

 

■全社メールにて活動案内

健康診断の申し込み時にがん検診受診のお願いを全従業員向けに行っている。

 

■その他

2020年度から2022年度は「がん予防スタンプラリー」を実施。がんに関する情報の閲覧や、イベントの参加によりポイントがたまる仕組みであり、楽しくがんについて学んでほしいという想いで活動を企画しました。2022年度はグループ会社も含め1200名以上の参加があった。

 

【3】コミュニティ

がん罹患者・経験者同士のコミュニティ/その他のコミュニティ

 

ブラザーではピアサポート活動を行っている。グループ会社も含め、反復・継続して治療が必要となる病気や症状(たとえばがんや難病、不妊症など)を持つ方やその経験者の方がピアサポートメンバーとなって、気軽に話せる場を設けること、また社内の支援の輪を広げることを目的に下記の活動を行っている。ピアサポートメンバーは31名おり、その内の12名は自身の経験からメンバーの相談に乗る「サポーター」として活動している。サポーターにはサポートする立場として、e-Learningによるサポーター教育を受けていただいている。

 

■座談会

がんのみならず、その他の疾患や不妊治療など、社内で治療と仕事の両立をしている方々同士が集まり自身の経験や悩みを話せる場を設けている。今年度はリアル・オンラインで年間3回計画しており、計11名が申し込み中。

 

■つながる場

ピアサポートメンバーの方がより深く相談でき、心の拠り所が作れるようにという想いから今年度新たにつながる場を設けた。これはサポーターと相談したいピアサポートメンバーが1対1で対話を行うものである。保健師が相談内容を確認したうえでマッチングを行い、当日も適宜フォローできるよう同席する。

 

■経験談を聞く会、その他の疾患

当事者だけの活動では職場の認知が広がらないため、支援の輪を広げる活動として、経験談を語る会を実施。全従業員に対してPRを行っている。

 

【4】対外的な活動

がんに関する公的機関の委託事業等へ参画/がんに関する社会的な活動への参加/がんに関する社会的な活動への協賛

 

■RFLへの参加(セルフウォークリレー・サバイバートーク)

がん患者さんやそのご家族を支援し地域全体でがんと向き合いがん征圧を目指すチャリティー活動であるリレーフォーライフ(RFL)にブラザーグループの世界中の拠点が参加。日本では独自のオンラインサバイバートークを4年前より実施。従業員のがん経験者(サバイバー)から、直接話を聞く機会を作っている。今年度より、サバイバーをピアサポ―トメンバーの中からも選出している。

 

>>社会貢献活動|社会(S)|サステナビリティ|ブラザー (global.brother)

 

【5】その他の風土・環境

■両立支援専用の相談依頼サイト開設とそのPR

2023年より両立支援専用の相談依頼サイトを開設。

 

■両立支援アンケート実施とその回答の開示

2021年に治療と仕事の両立支援に関するアンケートを実施。アンケートは、治療と仕事の両立に関する現状調査・認知度確認・ピアサポートのニーズ調査を目的に行った。その結果をもとに両立支援の活動を計画、展開している。

 

エピソード・思い

 

これまでも従業員に正しくがんに向き合い、検診で予防できるがんの在職死亡を0にしたいという想いで様々な活動を行ってきたが、中には正しい受診行動に繋がらず命を落とす従業員もおり心苦しい思いをしている。がん検診の二次検査受診率90%以上という目標を掲げているが、現状では84%と目標とする数値には至っていない。過去もイベントやメールでの情報配信を行ってきたが、参加率や閲覧率に課題があり、本当に届けたい人に情報を届けられていない可能性があった。

 

そこで今回は、まずは全従業員が情報に触れる機会を設けたいと社内でも広く浸透しているe-Learningという媒体を選択、また内容もがん検診二次検査の受診率の向上につながるように工夫した。結果、受講率89%と多くの人に情報を届ける事ができた。受講者の中にはまさに二次検査の受診を見送っていたが、e-Learningの受講をきっかけに受診、がんが見つかったという方もいた。早期で見つかったということで今回の活動に感謝を伝えてくださった。少しずつではあるが、従業員にも私たちの想いが届いていることに喜びを感じるとともに、一方でまだ届いていない人たちに向けても引き続き活動を積み重ね、救える命を救い、命を落とす従業員をなくしたいと改めて感じた。

 

両立支援に関しては、2021年度のアンケート調査より「自分が当事者となった時にどう両立するかイメージできない」という人が多いという課題が見つかった。当事者同士のつながりだけではなく、支援の輪を広げていく必要があると考え体験記や経験談を聞く会を開催している。今後も従業員の声も聞きながら、病気になっても働き続けられる、また支えあえる職場環境であるブラザーを目指し支援の輪をもっと広げていけるような活動を展開していきたい。

 

【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ

シニア雇用の増加や、将来の雇用年齢の引き上げを見据え、働きながら病気治療をする人の増加が予想され、病気になっても安心して働ける会社でありたいと、2019年度から治療と仕事の両立支援に力を入れるようになった。

 

【2】他社の担当者への応援メッセージ

「病気になっても働ける」が常識になっていくように一緒に頑張りましょう!

 

講評・コメント

 

傷病休業・傷病休職制度を、正社員だけでなくシニアスタッフや嘱託社員にも適用するなど、先進的でハートフルな取り組みを継続されています。

 

両立支援専用の相談依頼サイトの開設や新たなコミュニティ「つながる場」をはじめられるなど、安心して相談できる体制づくりを進められています。

 

がん検診についてのe-ラーニングを35歳以上は必須として実施されたり、子宮頸がんセミナーに20 代女性の43.6%以上が参加されたされたりと、誰にどのような情報を届けるべきかを明確にした上で研修をデザインされていることで、研修効果がぐっと高まっています。

 

様々な取り組みが意図的で、着実に積み重ねられている印象を受けるものが多く、他企業にとっても大いに参考になると思います。

 

※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。

 

>>「がんアライアワード2023」受賞企業一覧はこちら

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