【がんアライアワード2023ゴールド】株式会社ポーラの「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:株式会社ポーラ
業種:製造販売業(化粧品メーカー)
従業員数:1,313人
はじめに
ポーラは、従業員だけでなく、お客さまに商品を販売する個人事業主であるビジネスパートナー「ビューティーディレクター」と共にある企業。ビューティーディレクターは、お客さま個々人の肌・体調に合わせた商品・サービスを提案する弊社の要となる存在である。そのため、2018年より進めている「がん共生プログラム」は、従業員だけでなく、ビジネスパートナーも含めた取り組みであることが最大の特徴である。
ポーラは、がんと共に生きるすべての人が、かけがいのない存在として認め合う社会を目指し、以下記載の施策を行っている。
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
■「ポーラ・オルビスグループ健康経営宣言」
2017年にポーラ・オルビスグループとして、健康経営宣言を取締役会での決議を経て策定。宣言を従業員に対し周知すると共にHPに掲載し、社外に対しても本宣言を表明している。
ポーラ・オルビスグループにおける「健康」は創業以来、お客さまに寄り添い、お客さまを想い、商品・サービスを提供してきた歴史を紡ぎ未来に向けて、感受性のスイッチを全開にし、常に新しい価値を生み出すための源泉です。従業員一人ひとりが健康であってこそ他者を想いやり、また自分らしく、彩りに満ちた人生を送ることができると考えています。
ポーラ・オルビスグループでは、グループ理念を体現していくために従業員の心身の健康を経営の重要課題として位置づけ
従業員とその家族とともに、健康づくりに取り組んでまいります。
■健康経営レポートの発行
従業員の健康意識向上を目的に毎年「ポーラ・オルビスグループ健康経営レポート」を発行。健康診断受診率などを掲載したデータハイライトや産業医紹介、健康管理センター(社内保健室)の活用事例(対面面談以外でもオンライン面談、電話やメールでの相談も受け付可。産業医面談を受ければ、総合病院や大学病院など大きな病院を受診する場合に必要な紹介状も発行可能)などを掲載。気になることがあればすぐに健康相談できる環境の整備とアクセスのしやすさに努めている。
■健康経営優良法人
ポーラ・オルビスホールディングスは、経済産業省が創設した健康経営優良法人認定制度において、健康経営優良法人2023
(大規模法人部門)に認定。
【2】休暇制度
■傷病休職制度:長期療養が必要な私傷病(がん含む)に罹患時は、勤務年数に応じた傷病休職期間がある
■傷病短時間勤務制度:1日最短4時間を所定労働時間として勤務が可能
■時間単位有給休暇制度:1時間単位で有給休暇の取得が可能
■復職後の有給休暇が早期に付与される制度
従来よりも早期に有給を付与。治療しながらワークライフバランスを考慮した就労が可能に
【3】勤務制度
■フレックスタイム制
コアタイムの前後は、原則として自由に勤務ができる制度。
■リモートワーク
全従業員を対象とした制度。
■試し勤務制度
復帰前に産業医と面談を行い、その指示に従い一定期間復帰に向けた準備をする制度。
■リハビリ勤務制度
産業医のOKがでるまでは、復帰後の残業は禁止。
■傷病退職カムバック制度
退職から最大2年間まで、退職時と同様の社員区分にて再入社可能。
【4】支援体制
■従業員の健康を支える産業保健組織
■上司との1on1:希望すれば随時実施可能
■人事担当者との面談・問い合わせ:希望すれば随時実施可能
【5】健康増進支援
■従業員向け施策
・年1回の健康診断時では、がん検診・婦人科検診をワンストップで受診することが可能。30歳以上の女性が受診できる乳がん検診では、マンモグラフィーか超音波検査を自分で選べる。子宮頸部細胞診と子宮経腟超音波は全年齢に補助。男性の前立腺がん検診も50歳以上に補助している。
健康診断はもちろんのこと、再検査についても業務時間内受診の容認、交通費の支給。上長も関与しながら積極的に促している。
・健康増進と意識の向上を目的とし、健康月間を設け、社員食堂で健康メニューを提供。
・2018年5月からは、従業員が健康診断の結果をわかりやすく理解できるようにPepUp(ペップアップ)というアプリサービスを導入し、情報提供・フィードバックを行っている。
■ビジネスパートナー向け施策
・ビューティーディレクター(ポーラ福祉共済事業団*に加入している会員対象)に対しては、がん検診にかかる費用の一部補助。
*ビジネスパートナーの互助組織
・ビューティーディレクターを束ねるグランドオーナーへは、「GOドッグ」と呼ばれる総合健診を全額会社負担。
【6】その他の制度・体制
■ビジネスパートナーに対する治療支援
ビューティーディレクターの収入を一部サポートする制度を設け、がん治療で長期間販売活動ができなくなった場合でも、
安心して治療を受けられ、復帰しやすい環境を整えている。また、ポーラ福祉共済事業団会員を対象とした、復帰・両立
サポートに以下の制度を導入。
・個々の状況に応じてがん治療の初期費用の一部を補助する「治療応援金」
・治療による外見変化に対する費用を一部補助する「アピアランスサポート」
・復帰時に必要な物の購入等に使える「ショッピングポイントの付与」
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
■がん啓発セミナー
定期的にがんに対する啓発を目的としたセミナーを実施。2022年9月 コニカミノルタ社協力のもと、乳腺外科の専門医をお招きし、乳がんの基礎知識や早期発見・早期治療に向けたセミナーを開催。最後にコニカミノルタ社より遺伝子検査に対する情報提供を受け、最先端のがん検査についても触れる機会となった。
【2】情報発信
■社内に向けた情報発信
・がんに対する理解を深めることを目的に、・就労サポート制度・罹患者の経験がまとめられたプログラムブックの配布・がんに対する基礎知識がまとめられたイントラネットを常設。がんが、より身近なものであるという意識を高める活動を行っている。
・従業員の90%以上が視聴する社内情報動画発信(年3回配信)にて、社内のがん共生の取り組みを定期的に紹介。理解を深め、罹患しても働きやすい風土の醸成、取り組みをサポートする社内のムードづくりを行っている。
【3】コミュニティ
なし
【4】対外的な活動
■リレー・フォー・ライフ
・全国各地のリレー・フォー・ライフイベントへの参加及び募金活動の実施(日本対がん協会)
コロナが明けた2023春から、全国各地で再開されたリアルイベントのリレー・フォー・ライフにビジネスパートナーが参加。ポーラブースを設け、治療でケアが必要な手元にハンドトリートメントを行った。またその場での募金を寄付。
・2019年よりナショナルスポンサーに就任
■ピンクリボンのお宿ネットワーク
・化粧品会社として、はじめて上記団体に加盟
・スキンケア・メークのアドバイス冊子を制作・配布。乳がんに罹患された方のためのスキンケア・メークのアドバイス冊子を制作。2022年7月より「ピンクリボンのお宿ネットワーク」に加盟している全国100か所以上の宿泊施設で配布。
・ピンクリボンのお宿ネットワーク総会での事例発表
2023年5月に行われた上記総会にて、弊社「がん共生プログラム」の内容について発表。相互の協力体制の強化を図る。
■サンリオ Let’s talk
2023年11月にサンリオ ピューロランドで行われるイベント「Let‘s Talk」に弊社代表取締役社長 及川が登壇。上記イベントはタブー視されがちな女性の健康課題について対話し、QOLの向上・エンパワーメントを目的としている。今回は「女性のがん」をテーマとしイベントを実施する。
■がん対策推進企業アクション 企業コンソーシアムへの参加
上記コンソーシアムに参加し、「治療と働く」という企業にとって重要なテーマについての知見を収集。
【5】その他の風土・環境
■全国のスタッフを巻き込んだ組織化された活動へ展開
2023年2月、全従業員が参加する社内イベントにて「がん共生プログラム」の活動をプレゼンテーション。活動への理解と共感を促すと共に、賛同し、一緒に活動を行ってくれるメンバーの募集を行い、活動の影響範囲の拡大を狙った。その後、さらに興味のある方を集めて勉強会を実施。
現在、意欲のある新メンバーを加えたコミュニティチャットを作成し、その中で情報・意見交換を行っている。今まで東京の本部メンバー中心に進めていた活動と、各地のスタッフが点在して行っていた活動を一本化し、全国を巻き込んだ活動へと発展させていくことを目指して検討を進めている。
エピソード・思い
■フレンドリーアクションの実行
「社会への還元」を目指し「がん罹患者とそのご家族に優しい社会を!フレンドリーアクション!」をテーマに活動中。基本的な方針としては弊社内に留まらない、ポーラらしい活動を目指していく。
2023年新規活動としては、
1. フレンドリーショップ制度のエントリースタート
2. ポーラオリジナル冊子「スキンケアとメークアップの本」を制作&配布
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
がん治療に向き合いながら、同じ闘病中の方々やご家族のサポートをする弊社ショップ経営、宮城県・仙台市伊藤千津子オーナーの存在を知った弊社前社長が取り組みに感動。伊藤オーナーは自身も闘病しながらエステ、化粧品のカウンセリング・販売の仕事やボランティア活動に取り組むことで、同じ病気と闘う人を含め、地域の多くの人に元気を与えていた。
その姿を通して人と人との関係性から生まれるポジティブな可能性を改めて感じ、「ここにこそポーラが大切にしたい価値がある。新しい働き方・新しい価値・新しい文化を現場とともに『共創』していきたい」という想いからスタートした。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
全ての人が可能性を諦めず能力を発揮し、自分らしい人生を楽しめる社会を創りたいと思います。是非、一緒に進めていけたらと思います。よろしくお願いいたします!
講評・コメント
ピンクリボンのお宿ネットワーク総会での事例発表や「Let‘s Talk」での登壇など、対外的な活動を力強く推進されています。
全従業員が参加されたイベントにて「がん共生プログラム」の活動をプレゼンテーションしたことを皮切りに、勉強会の実施、新メンバーの加入など活動が量的・質的に進化を遂げられているようです。
貴社ならではの取り組みがさらに広がっていくことを期待しています。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。