【がんアライアワード2023ゴールド】野村證券株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
ゴールド受賞:野村證券株式会社
業種:証券業
従業員数:13,931名(2023年3月末現在)
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
■健康経営宣言
2016年に経営会議での承認のもと、「NOMURA健康経営宣言」をリリース。社内イントラサイト、社外自社サイトに掲載している。
「野村グループの最大の財産は、人材です。社員一人ひとりが自らのもつ能力や個性を十分に発揮し、活躍するためには、心身ともに健康であることが重要です。この理念のもと、野村グループは社員の健康保持・増進を経営的な視点でとらえ、主体的に取り組んでいきます。」
■がんアライ宣言
がんアライアワード2018応募時に初めて宣言。その後毎年のアワード応募時にCHOががんアライ宣言に賛同する旨を表明し社内イントラサイトにてがんアライ宣言の募集と共に周知している。また、受賞後は自社Facebookにがんアライ宣言の写真と共にリリースしており、当社ががん治療と仕事の両立を支援している旨を公表している。
■Nomuraレポート(統合報告書)
アニュアルレポート(統合レポート)において、野村グループのマテリアリティとして「人権を尊重した事業活動」を定義し、主な取り組みとして「健康経営の推進」を記載している。DEIや多様な働き方、ウェルビーイングに取り組むことで、「野村で働くすべての人が、単に健康になるのではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態(Well-being)になること」を目指している。
【2】休暇制度
■傷病等休暇
傷病や不妊治療による通院の時に年次有給休暇とは別に最長50日付与。
■休職
傷病により3か月をこえて引続き欠勤する時に最大1年6か月休職可能。
■半日・時間単位の有給取得
年次有給休暇を1日、半日又は1時間を単位として取得可能。1時間を単位とする場合は5日を限度とする。
■人間ドック休暇・二次検査休暇
人間ドック受診時には有給の「人間ドック休暇」を、定期健康診断/人間ドックにおいて二次検査が必要になった場合は有給の「二次検査休暇」を取得可能。会社として健診受診と二次検査が重要である旨を社員にメッセージとして伝え、早期発見を促している。
【3】勤務制度
■調整出勤制度(時差出勤制度)
2023年10月より各人の事情に応じて部室店長が認めた場合、柔軟に始業時刻の繰り上げ、繰り下げを行う調整出勤制度を導入。
■フレックスタイム制勤務
午前5時から午後10時まで各人が業務計画に合わせて始業及び就業時間を自主的に決定できるフレキシブルタイムを含むフレックスタイム制勤務を導入。2023年10月より適用対象を海外に関わる業務等に限定していたが、業務の性質等から会社や部門が認めた場合には適用することに変更。
■在宅勤務制度
2022年12月より在宅勤務の上限を月の所定日数の6割から8割を引き上げ。さらに育児、介護、傷病等の事由により部室店長が認めた社員については、8割を超えて在宅勤務をすることが可能。
■短縮勤務
休職からの復職時に、医師の診断に基づき最長6か月にわたり勤務時間を短縮可能。本人の体調や業務への復帰状況に応じて柔軟に治療と仕事を両立できるよう環境整備している。
■カムバックに関する制度
出産や育児、傷病等でやむを得ず退職した経験者の再入社を支援。
【4】支援体制
■社員相談窓口の設置
労働者健康安全機構の「両立支援コーディネーター基礎研修」を受講した人事担当者が社内制度や健康保険組合の給付に関することなど社員からの相談全般に乗っている。
■保健師・産業医等の医療職の支援
社内の産業医・保健師・看護師・管理栄養士が連携して、がん等に罹患した社員がより快適に働けるようさまざまな相談に対応。保健師のうち1名は大学院にて治療と仕事の両立について専門的に学び、両立支援サポーターとして社内に周知している
■外部医療機関との連携
必要に応じて産業医を通じて外部医療機関と連携
■外部支援サービス(EAP等)の活用
・セカンドオピニオンや専門医療機関への紹介・受診手配のサービス、24時間・年中無休の電話相談、チャットボットで相談可能な「野村健康ダイヤル24」を提供
・LINEで気軽に女性特有の症状について産婦人科医に相談できる「女性のための健康相談窓口」を提供
■上司等との1on1、人事担当者等との面談等の機会
定期的に社員と上司、また社員と人事がそれぞれ1対1でコミュニケーションを取る機会があり、業務に関すること以外にもキャリアやプライベートに関することを相談可能。
■主治医との書面上での情報連携
必要に応じて産業医より主治医に情報照会をしており、主治医の意見を元に産業医意見を会社に提出し、就業に関する配慮などを決定している。
■両立支援プランの策定・実行
休職や、休職に至る前の欠勤から復帰する際には部署と本人が面談して復職プランを作成し、人事、産業医が内容を確認して復帰を判断している。復帰後は主治医の意見を踏まえ適宜プランの見直しを行っている。
■休職中のフォロー
担当する保健師が社員からの相談に対応。
■復職後のフォロー
担当する保健師が復帰時、復帰後1か月、3か月、6か月、1年後にフォローアップを実施。
【5】健康増進支援
■健康診断受診率増加に向けた取り組み
30歳以上の社員は人間ドックを健康診断の代替としており、受診率上昇のため①人間ドック早期受診者にポイントを付与、②人間ドック受診時には有給の「人間ドック休暇」を利用可能、③人事担当者からのメールや電話による勧奨を実施している。
■がん等の任意検診受診費用の補助・人間ドック費用の全額補助
人間ドックの検査項目には胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん検査が含まれ、全額健康保険組合が補助。子宮頸がんは全女性社員に全額補助。
■健康診断で「要検査」となった人のサポート
健康診断・人間ドックで二次検査が必要になった社員へ受診勧奨を実施。また、がん検診項目で要精密検査となった社員へは健康保険組合とのコラボヘルスにより受診勧奨を実施しており、それぞれ二次検査・精密検査受診時は、有給の二次検査休暇を利用可能。
■必要に応じた産業医・保健師の定期的な面談
健康診断事後措置において、必要に応じて産業医・保健師が社員と面談を実施。
■禁煙に関する取り組み
望まない受動喫煙の防止と社員の疾病予防のため2021年10月より就業時間内禁煙を導入。同時に健康保険組合がオンライン禁煙プログラムの費用補助や、禁煙に成功した社員へポイントインセンティブを付与するサポートを実施。社内喫煙所は2021年12月末を以てすべて廃止した。なお、全社員を対象に毎年実施している健康意識調査において「職場で喫煙に関して不快に感じる」等の回答が2018年度は43.7%あったが、2022年度は21.9%まで約半減しており、望まない受動喫煙の防止や職場環境の改善につながっている。
■日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)
・社員の健康増進のため、部署ごとの平均歩数を競うオンラインのウォーキングイベント「ノム☆チャレ」を毎年実施。歩数や写真を全社員で共有し、「いいね!」やコメントの投稿で応援し合うことで、社員のコミュニケーション向上や運動習慣の定着につなげている。同時に参加者の歩行距離に応じた金額の寄付を行っており、2022年度は「認定特定非営利活動法人キッズドア(NPO Kidsdoor)」に寄付。社員個人への健康増進のみならず、寄付という形での社会貢献につなげている。
・管理栄養士による「食事による生活習慣予防」「アルコールのおつまみの選び方(肝臓の負担の減らし方、機能正常化促進)」「時間栄養学」に関する動画を提供。健康プラットフォーム「WellGo」に食事や間食、飲酒状況を入力できる機能を活用し、入力した社員にインセンティブポイントを付与している。
・毎年12月を「スマート・ドリンク月間」と定め、適正飲酒への意識を一層高めることをCHOが宣言。併せて、同月にグループ全社イベント「休肝日チャレンジ(週2日の休肝日設定で適切な飲酒習慣を推奨)」を開催し、休肝日への決意やお酒の代わりに飲むといいもの、料理の写真やコメントを健康プラットフォームWellGoに参加者が投稿。いいね!や応援コメント等で会社の枠を超えてグループ全体で休肝日を楽しむイベントとなった。
■健康増進イベントの開催
セントラルスポーツ・avivo・メガロスのインストラクターによる「健康増進セミナー」を健康保険組合が提供。肩こり、睡眠などのテーマを部署が選択し、勤務時間中に最大3回開催可能。
■健康管理に関するアプリの配布
健康経営プラットフォーム「WellGo」を導入。健康診断結果や医療費、歩数や食事記録などの健康データの見える化機能や、eラーニングや健康クイズ配信によるヘルスリテラシー向上機能などを各自活用している。またイベント機能を利用してウォーキングイベントを開催することにより社員同士がSNSのように投稿し合うことによってコミュニケーション活性化にもつながっている。
■休憩室の整備
各事業所に休憩室を整備。
【6】その他の制度・体制
■高額療養費制度
健康保険組合の高額療養費制度により、医療費の自己負担額が約25,000円/月に抑えられるため、経済的な心配をせずに治療に専念することが可能。
■病気で仕事を休んだときのサポート(傷病手当金付加金、延長傷病手当金付加金)
病気やけがで仕事を休み無給になった場合に、傷病手当金に独自の給付(付加給付)や、法定の給付満了後の延長傷病手当金付加金を支給しており、収入を心配せず療養できる環境を整備している。
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
■社員向けのがんに関する研修
・毎月社内で制作している健康番組(動画)において、「働く世代に多い乳がん、子宮頸がん」「『がん』の治療と仕事 どうする?両立」「若い世代の女性に多い子宮頸がんについて」「がん検診後の精密検査」をテーマに配信。
・法人契約している「Cradle」(女性の健康を支援することを軸に企業のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンをサポートするサービス)においてがんアライ部発起人鈴木美穂氏の「「自分や大切な人ががんになったときに、できること」のセミナーを実施。
■上長・管理職向けの両立支援に関する研修
新任管理職研修において、復帰フローと両立支援ガイドブックに関する情報を提供。
■女性向けのがんに関する研修・がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供
・女性自身や周囲のリテラシー向上のため、性別を限らず全従業員を対象に女性の健康に関する研修を実施。CHRO兼CHOとCradle代表取締役スプツニ子!氏による「企業が女性の健康に取り組む意義」の対談や「月経」「子宮頸がん」「更年期」「男性の更年期」の動画を視聴してリテラシーを身につけることで、男女それぞれが必要な時に対処しお互いを思いやれる環境を整備している。
・2020年度よりこれまで30歳以上としていた子宮頸がん検診を20代女性も対象に追加。ただ20代女性の受診率が他の年代と比較して10%以上低い状況だったため、がん検診受診に関するアンケートを実施し、衛生委員会でも討議。受診しない理由として検査に伴う苦痛に対する恐怖があることがわかったため、イントラサイトに検査受診のポイントや精密検査を指摘された場合のその後の流れについて掲載。
健康保険組合のHPに厚生労働省研究班監修「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」のバナーを掲載。女性のがんを含めた健康について、社員と家族向けの情報提供を行っている。
■罹患者の体験談を聞く機会の提供
がんに罹患した従業員の座談会を初めて開催。氏名・顔出しの可否を本人が選択できるようにし、これまでの経験や両立しやすい職場環境を作るためのディスカッションを行った。初めての試みだったが9名参加し、事後アンケートで満足度は87.5%となっており、継続的な開催を望む声が多数だった。
■その他啓発、研修
・社内イントラサイトに掲載されていた「肝機能障害」に関する情報に、肝炎ウイルスの情報を追加。全社員向けに医療職が月に一度配信している「健康相談室たより」においても周知し、啓発活動を行った。
・全社員を対象に「心理的安全性」に関する研修を行い、誰もが気兼ねなく自分の状況や意見を言える職場づくりを推進している。
【2】情報発信
■イントラネット、社内ポータルサイト等での情報発信
がんなどの治療と仕事の両立支援のため2018年4月に「NOMURAの健康サポートプラン」を策定。会社として治療と仕事の両立を支援する姿勢を社内に発信。
■メルマガ等での情報発信
全社員向けに医療職が月に一度配信している「健康相談室たより」において、二次検査の重要性や喫煙のリスク、基本的な生活習慣の大切さについて啓発。
■両立支援に関するハンドブック・ガイドブックの配布
社員と上司向けの「治療と仕事の両立支援ガイドブック(本人編、上司編)」を作成し、がんなどの病気により治療を続けながら仕事をする社員が安心して仕事と治療を継続することができるよう、本人のみならず上司の対応方法なども周知している。なお、ガイドブックを作成したいが時間などの制約により難しい会社が簡単に作成できるよう、がんアライ部にハンドブックのフォーマット作成を提案。数回のワークショップを経てハンドブックの完成につながった。
■患者の体験談を見られる機会の提供
2018年から治療と仕事を両立している社員の体験談を「キラッとNOMURA Life~私の体験談~」としてイントラに掲載。これまでに12名の体験談を掲載し、匿名・写真なしで可としているが、体験談を読んだサバイバーから徐々に実名・写真入りでの掲載希望が増えている。また、体験談を掲載した社員へ個別に相談したり、体験談を読んでがん検診の重要性を認識した社員が体験談を社内に拡散するなど、社員発の動きが増えてきている。
【3】コミュニティ
がんに罹患した従業員の座談会を初めて開催。実名・匿名を本人が選択できるようにし、これまでの経験や両立しやすい職場環境を作るためのディスカッションを行った。初めての試みだったが9名参加し、事後アンケートで満足度は87.5%となっており、継続的な開催を望む声が多数だった。
【4】対外的な活動
■がんに関する民間団体等への参画
2019年より厚生労働省委託事業「がん対策推進企業アクション」に参画し、コンソ40運営企業として参加企業と意見交換している。
■がんに関する社会的な活動への参加
一般社団法人がんと働く応援団において、①AYA WEEK2022のイベントとして、医師、患者、会社が登場するパネルディスカッションに登壇。②HPで企業事例として両立支援に対する取り組みについて紹介。③働く人が身近に感じられるために行われた、産業看護職の座談会に参加。社内における役割や心がけていることについて話した内容がHPに掲載され、社会的な理解促進のために活用されている。
■がんに関するイベント・セミナー等への登壇
がん対策推進企業アクション第1回企業コンソーシアムにて当社の「がん検診受診後の精密検査受診勧奨」について紹介。
■その他の対外的な活動
当社HPにて広報担当執行役員とがんアライ部発起人の功能聡子氏、鈴木美穂氏のインタビューを掲載。がんを取り巻く状況やお二人のこれまでの経験・がんアライ部立ち上げの思いを紹介することにより、誰ひとり取り残さず、誰もが輝きながら仕事を続けられる社会を創るという思いを社会に対して発信している。
【5】その他の風土・環境
■WorkCAN’s ワーキング・ピア・サポーター養成 合同企業研修会やオンラインセミナーに人事担当者や保健師が参加し、社内コミュニティ開催方法などについて勉強している。研修会に参加したグループ会社人事担当者と共に研修会での知識を活かして今年度初めてがん罹患者の座談会を開催することができた。
■本人、上司向け両立支援ガイドブックをグループ会社人事担当者へ共有。各社の状況に合わせて修正ができるように加工が可能な状態で提供し、活用されている。
エピソード・思い
2020年よりがんアライアワードに合わせてがんアライ宣言の写真をイントラサイトにて募集しており、がんに罹患した支店長の声かけにより支店全体でがんアライ宣言の写真を撮影したり、衛生委員会で両立支援について討議したことをきっかけに応募する支店が増えている。がんアライの風土が草の根的に広がってきていると実感している。
上記がんアライ宣言募集の際に、写真を撮って応募するよりも簡単に参加できるよう、イントラサイトに「がんアライ宣言に賛同する」のボタンを新設。約1か月間で404件の賛同が集まった
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
社員ががん等に罹患した際に必要な制度や給付に関する情報がイントラに集約されておらずわかりにくい状況だったため、「健康なとき」と「仕事と治療を両立するとき」に分類して社員が情報にアクセスしやすくしたことがきっかけ。その後、ガイドブックの作成や体験談の掲載など、両立支援の取り組みを推進している。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
誰ひとり取り残さず、誰もが輝きながら仕事を続けられる社会を一緒に創っていきましょう!
講評・コメント
治療と就業を両立しやすい職場環境を作るために、社員一人ひとりの状況に寄り添った対応を継続されています。新規施策では、がんに罹患した従業員の座談会を開催するなど、着実に歩みを進められています。
グループ会社のがんアライアワードへの応募も増加し、着実にがんアライの輪が広がっていますが、そのような広がりを生み出され続けている貴社のアクションは大きな意義を持つものだと思います。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。