【がんアライアワード2023シルバー】積水ハウス株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
シルバー受賞:積水ハウス株式会社
業種:建設業
従業員数:14,932名
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
従業員の幸せの源泉は健康の維持・増進であるとの考えのもと、「幸せ健康経営」を推進しています。取締役会傘下のESG推進委員会で承認された年間目標や計画に基づき、取り組みをしている。
【2】休暇制度
■年次有給休暇の付与日数と対象者の拡大
試用期間中の社員の年休使用を認め、初年度から20日付与とした(従来は初年度10日)
■私傷病欠勤制度(勤続加算制度)
長期療養が必要な私傷病(がん含む)に罹患時は、休職に入る前に欠勤期間を6ヶ月設けている。また勤続5年毎に欠勤期間を1か月追加する。(例 勤続20年の場合、欠勤期間を6ヶ月+4ヵ月の10か月とする)
■失効有給休暇積立制度
過去3年間に失効した有休休暇については、条件を満たせば各種制度で利用可能とした。
■時間単位有休
年5日分の時間単位有休を付与。
【3】勤務制度
■スライド勤務制度
7:00-20:00の間で勤務時間を都度変更可能。
■テレワーク規則を制定し、在宅勤務、サテライトオフィス勤務を導入(申請制)
■短時間勤務・短時間勤務制度
復帰後に通院の為の休みや短時間勤務が必要な場合、医師の証明書を提出することにより、認めている。延長可能。
■試し出勤制度(主治医・産業医のアドバイスを元に設定)
オフィスに出勤して、継続的に出社できる状態かどうかを本人と会社の双方で確認しあう。
■退職者復職登録制度
個々の事情により退職した社員に求人情報を一定期間提供する。
【4】支援体制
■配慮事項共有シートのシステム化
年3回の面談時に、理由に限らず(健康上、障がいについて、育児、介護等)会社に申し出たい配慮がある場合に、利用できるシートを全従業員に展開し、異動時等も引継ぎできるようにシステム化した。
■キャリア面談
年5回実施し業務に限らず、プライベートのことも部下が自由に話すことができる。これにより、なんでも上司に相談できる関係性が構築できている。
【5】健康増進支援
■健康診断受診率増加に向けた取り組み
がん検診(胃、大腸、子宮頸がん、乳がん)を標準の検査項目としており、オプションで別途項目を追加できる等受診項目を充実させ、健康への意識づけを図っている。
■健康診断受診率100%達成
原則就業時間内の健康診断受診とし、受診しやすい環境を作っている。また、総務担当者が申込を行うことで未受診者の管理を行っている。
■健康診断で「要検査」となった人のサポート
後述の「すこやかサポートパーソナル」での受信案内メールの送付を行っている。また、二次検診の受診率を社内表彰制度の評価基準に加えることで、受診しやすい環境を整え、受診率を向上させている。
■必要に応じた産業医・保健師の面談
セキスイ健康保険組合との共同事業として、健康診断の結果を基に「年齢とリスク」に応じて、8種類の保健指導を行っている。重症化する前の若年層、危険因子が比較的少ない者に対しても面談を行い、特定保健指導の前段階で生活習慣の改善を促すための働きかけを行っている。
■日常的な健康増進に関する取り組み(運動習慣獲得、食事管理、睡眠管理等)
年に一度「MY健康宣言」という自分自身の健康に関する目標を設定し、「運動」「食事」「飲酒」「睡眠」「禁煙」「ココロ」の6つのチャレンジから好きな(複数選択可)チャレンジを任意で選び、取り組んでもらうよう勧めている。
■健康増進イベントの開催
月1回程度上記の6つの中からテーマを決めてセミナーを就業時間中に配信している。
■健康管理に関するアプリの配布
歩数を連携して、事業所単位で競争し、事業所評価に含める「ウォーキング・チャレンジ」・健診結果を動画で解説し、将来のリスクシミュレーションができる「ヘルシーチャレンジ」・健康に関する様々な動画やオススメのアプリを紹介している「健康のためのヒント」・2次検診の受診案内やストレスチェックがうけられる「すこやかサポートパーソナル」というアプリを配布している。
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
2020年より、治療と仕事の両立に関し全従業員を対象のセミナーを実施し、アーカイブを社内イントラに掲載している。2023年度は、東京大学の中川先生からがん全般についての知識とコミュニケーションについて、がんノートの岸田氏から当事者の体験談をテーマに講演をしてもらった。講演後には希望者同士でディスカッションを実施。
【2】情報発信
■基礎知識や社内のがんサバイバーの体験談を社内イントラに掲載している。
■がん対策推進企業アクションに登録しており、冊子「がん検診のススメ」を管理職に配布した。
【3】コミュニティ
なし
【4】対外的な活動
■がん対策推進企業アクションに登録し、社内イントラから中川先生の動画に直接アクセスできるようにしている。
■社内の当事者が複数社で実施するセミナーに登壇。
■がんの子どもとその親への支援として、NPO法人チャイルドケモハウスの建物の建設に当たって約2億2000万円の寄付をし、チャリティーウォークへの参加など、継続的に支援を行っている。会社と従業員の共同寄付制度「積水ハウスマッチングプログラム」を通じて、2008年から小児がんのケアにかかわる活動を支援。
【5】その他の風土・環境
制度や働き方について相談を受ける人事総務部やダイバーシティ推進部の担当者が、社外の「ピアサポーター育成研修」や講演会に参加するようにしている。
エピソード・思い
以下、当社がん罹患者によるエピソードです。
がんはかなり秘匿性の高い個人情報なので、私の時にも公にはせず仕事に関係する一部の人だけが知っている状態でした。ですが、いきなり長期に入院したので、色々とメールなどをもらって、自分ががんで入院していることが徐々に知れ渡るようになりました。
そんな時に職場の仲間が、励ましの色紙を作ってくれ自宅に届けてくれました。この時、とても嬉しく、職場の仲間の「待ってるから」の言葉にとても励まされました。
ついこの間の出来事ですが、私の職場でがんに罹患した方がいました。私はこの時の事を思い出し、みんなで寄せ書きをつくることを提案しました。又、週に一度、励ましのメールを送るようにしていました。その方が治療を終えて退院し、職場復帰した時に、とても喜んで何度もお礼を言われました。
制度が整っていることはもちろん大切ですが、こうした人と人との支え合いが何よりも必要だと実感しました。
私は大学を卒業後、積水ハウスに就職して、45歳まで現場監督として22年間仕事をして来ました。40代も半ばとなると、責任の大きい仕事を任されたり、後輩の指導をしたりと、自分でも気付かないうちに仕事にのめりこむようになっていました。しかしながら、手術の後遺症で喋る事に障害が残ってしまい、現場監督の仕事が出来なくなってしまった事で、とても残念な、言葉では何とも言い表せない気持ちになった事を良く覚えています。今まで頑張ってきたことが0になってしまう。
今の自分に何が出来るのか?会社に戦力になれるのか?どこか遠いところに転勤になってしまうのではないか?又、私の妻も、口にこそ出しませんでしたが、私が仕事復帰出来るかとても心配していたと思います。特に私は働き盛りの年代でしたから、妻も経済的な部分をとても心配していたと思います。
そんな時、退院して自宅療養中の私のところに上司が訪ねてきて、今後どのように仕事をしていくか?相談しました。その結果、私が今行っている建築の見積りを作る仕事だったら、それほど会話が通じないことでのストレスは少ないだろうとの事で、具体的な仕事復帰のめどが立ちました。この時の妻のほっとした表情は今でも忘れる事ができません。
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
国の動きに加え、がんに罹患した社員や不妊治療と仕事との両立に悩む社員からの相談があり、制度を導入。制度の使いやすさや、本人と周囲の同僚や上司とのコミュニケーションなど、職場環境の醸成に向けて取り組んでいる。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
今、日本も経済がなかなか成長しないので、構造改革が必要だと言われます。当社でも今、イノベーション&コミュニケーションを推進しようと社内で様々な取り組みがスタートしています。
そんな中で「昔ながらの日本型経営である、終身雇用や年功序列はもう古い」と言われますが、治療と仕事の両立支援に限って言えば、私は意外と日本型経営である「会社は家であり従業員は家族である」という考えの方が、社員の幸せ度が高まり、結果として業績も向上するのでなはいかと感じています。
是非これから一緒に治療と仕事の両立支援を推進していきましょう!
がんサバイバー 清水敏明
講評・コメント
有休付与日数の増大やテレワーク制度の拡充、配慮事項共有シートのシステム化など、働く人を支える制度・体制づくりをこの一年でも着実に進められています。キャリア面談も年5回実施されるなど、上司に何でも相談しやすい関係を作られています。
またエピソードからは、がんに罹患しても安心して働き続けられる環境があることが伝わってきました。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。