【がんアライアワード2023シルバー】野村プロパティーズ株式会社の「がんと就労」施策 - がんアライ部
がんアライアワード2023に寄せられた、各社の「がんと就労」への取り組みをご紹介します。
シルバー受賞:野村プロパティーズ株式会社
業種:不動産賃貸業
従業員数:152名(2023年5月現在)
働く人を支える制度・ 体制
【1】がんと就労に関して、あるいは社員の健康や安全に関する基本方針等の表明
■健康経営宣言
2016年に野村グループとして「NOMURA健康経営宣言」をとりまとめ、社員の健康保持・増進を経営的な視点でとらえ、主体的に取り組んでいます。CHOのもと、健康保険組合、産業医・保健師等、当社を含めグループ各社が一体となり推進しています。
定期的に開催している「健康経営推進協議会」には、CHOのほか人事担当役員、人事部門長等がメンバーとして参加しており、議論の内容は取締役会および経営会議へ適宜報告されています。社員の健康リスクの保有状況や生活習慣病のハイリスク分析、職場の健康リスクの分析に基づく健康課題の把握や、施策の立案及び実行、結果検証を組織として一貫して行うことで、積極的に社員の健康づくりを進めるとともに、労働安全衛生体制を強固にしています。
■がんアライ宣言
野村グループとしては2018年から推進しています。2021年度より野村プロパティーズとして「がんアライアワード2021」「がんアライアワード2022」に2年連続で応募し、シルバーを受賞しています。グループワイドで歩調を合わせながら、社内への啓発促進を継続しています。
【2】休暇制度
■傷病等休暇
年次有給休暇とは別に、最長50日の傷病等休暇を取得できます。傷病や不妊治療による通院などにも適用できます。
■半日・時間単位の有給休暇取得
年次有給休暇を1日、半日または1時間を単位として取得可能です。1時間を単位とする場合は年5日間を限度とします。
■休職
傷病により3か月をこえて引続き欠勤する時に最大1年6か月休職可能です。
■人間ドック休暇
毎年4月から12月までの期間において1日、年次有給休暇とは別に、人間ドック休暇を取得することができます。
■二次検査休暇
人間ドックの結果、二次検査が必要な社員は1日または半日単位の二次検査休暇を年1回取得できます。
【3】勤務制度
■調整出勤制度(時差出勤制度)
業務上の都合がある場合、または社員にやむを得ない事情があり会社がこれを認めた場合、勤務時間数を変えることなく、始業並びに終業の時刻を変更することができます。例えば、コロナ禍の状況下においては、感染リスク分散のため、早朝から勤務し、夕方早めに勤務を終えるなど、柔軟な対応も可能になります。
■在宅勤務制度
部室長が認めた社員については、月の所定労働日数の8割を上限として在宅勤務が可能です。
■傷病等による休職からの復職時短縮勤務
休職からの復職前に担当医の診断書および産業医との面談による診断内容に基づき、会社側も交え復職時の勤務内容や勤務時間等について調整し、必要に応じ最大6か月間1日の勤務時間を短縮することができます。
【4】支援体制
■相談窓口
社内ではコーポレート統括部人事課が窓口となり、必要に応じ産業医・保健師と連携し、対応しています。また、イントラネットには野村グループの健康相談室や外部の無料相談サービス等の連絡先も掲載されており、社員はいつでも利用できます。
■社内コミュニケーション
定期的に社員と上司、また社員と人事がそれぞれ1対1でコミュニケーションを取る機会があり、業務に関すること以外にもキャリアやプライベートに関することを相談することができます。
■主治医との書面上での情報連携
必要に応じて産業医より主治医に情報照会をしており、主治医の意見を元に産業医意見を会社に提出しています。
■外部支援サービス(EAP 等)の活用
セカンドオピニオンや専門医療機関への紹介・受診手配のサービスを提供しています。
■両立支援プランの策定・実行
休職や、休職に至る前の欠勤から復帰する際には部署と本人が面談して復職プランを作成。人事、産業医が内容を確認して復帰を判断します。復帰後は主治医の意見を踏まえ適宜見直しを行っています。
■休職中のフォロー
担当する保健師が社員からの相談に対応。
■復職後のフォロー
担当する保健師が復帰時、復帰後1か月、3か月、6か月、1年後にフォローアップを実施。
【5】健康増進支援
■健康診断受診率増加に向けた取り組み
30歳以上の社員は人間ドックを健康診断の代替としており、受診率増加のため、1. 人間ドック早期受診者にポイントを付与、2. 人間ドック受診時には有給の「人間ドック休暇」を利用可能、3. 人事担当者からのメールや電話による勧奨を実施しています。
■がん等の任意検診受診費用の補助・人間ドック費用の全額補助
人間ドックの検査項目には胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん検査が含まれ、全額健康保険組合が補助。子宮頸がんは全女性社員に全額補助。
■健康診断で「要検査」となった人のサポート
健康診断・人間ドックの受診後に二次検査が必要になった社員へ受診勧奨を実施。また、がん検診項目で要精密検査となった社員へは健康保険組合とのコラボヘルスにより受診勧奨を実施しており、それぞれ二次検査・精密検査受診時は、有給の二次検査休暇を利用可能です。
■必要に応じた産業医・保健師の面談
健康診断事後措置において、必要に応じて産業医・保健師が本人と面談を実施します。
■禁煙に関する取り組み
禁煙対策として、2021年10月より就業時間内禁煙を導入。同時に健康保険組合が実施しているオンライン禁煙プログラム費用の全額補助の継続や、新たに禁煙に成功した社員へポイントインセンティブを付与するサポートを実施。社内喫煙所は2021年12月末を以てすべて廃止しました。
その後も2023年1月に喫煙に関する全社員アンケート「野村グループ喫煙対策実態」を実施し社員の声を集約し、就業時間中の喫煙ルールの再徹底、喫煙者本人の健康被害や受動喫煙による喫煙者以外への健康被害への注意を促すなど、禁煙への取り組みを継続しています。
■健康管理に関するアプリの配布
健康経営プラットフォームサービス「WellGO(ウェルゴー)」を導入しています。健康診断結果や医療費、歩数や食事記録などの健康データの見える化機能や、eラーニングや健康クイズ配信によるヘルスリテラシー向上機能などを各自活用しています。またイベント機能を利用してウォーキングイベントを開催することにより社員同士がSNSのように投稿し合うことによってコミュニケーション活性化にもつながっています。
■日常的な健康増進に関する取り組み
1. 野村グループでは社員の健康増進のため、部署ごとの平均歩数を競うオンラインのウォーキングイベント「ノム☆チャレWALK」を毎年実施。歩数や写真を全社員で共有し、「いいね!」やコメントの投稿で応援し合うことで、社員のコミュニケーション向上やコロナ禍での密を避けながらの運動習慣の定着につなげています。同時に参加者の平均歩数に応じた金額の寄付を行っており、2021年度は「国境なき医師団」に寄付。2022年度は認定特定非営利活動法人キッズドア(NPO Kidsdoor)に寄付しました。社員個人への健康増進のみならず、寄付という形での社会貢献にもつなげています。
2. 管理栄養士による「食事による生活習慣予防」「アルコールのおつまみの選び方(肝臓の負担の減らし方、機能正常化促進)」「時間栄養学」に関する動画を提供。健康プラットフォーム「WellGo」に食事や間食、飲酒状況を入力できる機能を活用し、入力した社員にインセンティブポイントを付与しています。
■休憩室の整備
各事業所に休憩室を整備。
働く人を支える風土、環境
【1】啓発、研修
■社員向けのがんに関する研修
ラインケア研修として毎年実施している研修ですが、2023年は「野村グループ管理職向け健康経営研修」を実施しました。健康経営の理念や方針、管理職の役割、5つの柱として、1. 生活習慣病対策、2.喫煙対策、3. エンゲージメントの向上・メンタルヘルス対策、4.がん対策、5.女性の健康促進を取り上げています。
■女性向けのがんに関する研修・がんに関するe-ラーニングコンテンツの提供
女性自身や周囲のリテラシー向上のため、性別を限らず全従業員を対象に女性の健康に関する研修を実施。CHRO兼CHOとCradle※代表取締役スプツニ子!氏による「企業が女性の健康に取り組む意義」の対談や「月経」「子宮頸がん」「更年期」「男性の更年期」の動画を視聴してリテラシーを身につけることで、男女それぞれが必要な時に対処しお互いを思いやれる環境を整備しています。
※2023年2月に、女性の健康支援を軸に企業のダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンをサポートするサービスとして導入されました。
【2】情報発信
■イントラ掲載での情報発信
野村グループとして、がんなどの治療と仕事の両立支援のため、2018年4月に「NOMURAの健康サポートプラン」を策定しました。また社内では衛生委員会等を通じて治療と仕事の両立支援についての情報を発信し、会社の支援体制などに関するリテラシー向上にも取り組んでおり、2023年は当社独自のイントラネットを、健康経営関連情報にアクセスしやすく、社員にとって利便性の高いツールとなるよう再整備しました。
■イントラでの番組配信
毎月野村グループで制作・配信している健康番組(動画)において、2023年3月には「働く世代に多い乳がん、子宮頸がん」、9月には「がんの治療と仕事 どうする?両立」をテーマとした番組が配信されました。当社では衛生委員会で当番組を視聴し、意見交換を実施しました。
■両立支援に関するハンドブック・ガイドブックの配布
「治療と仕事の両立支援ガイドブック」には、本人編、上司編があります。がんなどの病気により治療を続けながら仕事をする社員が安心して仕事と治療を継続することができるよう、本人のみならず上司の対応方法なども掲載されています。治療しながら勤務する場合、休職する場合は、休職前、休職中、職場復帰を考えたとき、復帰後など、場面に応じたポイントや注意事項も掲載されています。社員はいつでもイントラネットからアクセスできます。
■患者の体験談を見られる機会の提供
野村グループとして、2018年から治療と仕事を両立している社員の体験談を「キラッとNOMURA Life~私の体験談~」として野村グループイントラネットに掲載しています。当社では、衛生委員会等を通じ社内に情報通知・共有をしています。
【3】コミュニティ
なし
【4】対外的な活動
■外部企業との健康経営推進に関する意見交換会
野村グループおよび野村プロパティーズが推進する健康経営について、外部の取引先企業に紹介するとともに意見交換を実施しました。その中でがん対策も取り上げ、早期発見から治療と仕事の両立を支援する環境整備や、がんアライ宣言への参加による社員の意識変化についても発信しました。
■外部セミナーへの参加
2023年7月12日に開催されたオンラインセミナー「 がんから考える職場の心理的安全性とは?~みんなの幸せのためにわたしたちができること~」(主催:一般社団法人CSRプロジェクト・WorkCAN’s)に人事担当者が参加し、講演やディスカッション等を通じて各企業の取組みや、がんサバイバーの方のお話を拝聴し、多くの気づきや学びを得ることができました。
エピソード・思い
社内限定の掲示板にがんアライのことを投稿してくれた社員がいました。その社員は過去にご家族ががんに罹患した経験があり、「いずれは自分もそういう時がくるかもしれない」という心構えや、いざその時がきても冷静に初動をとることができる、「がんアライ宣言」はそのきっかけになると投稿してくれました。
【1】がんと就労の取り組みを始めたきっかけ
これまでに社員ががんに罹患するケースはありましたが、2021年度にがんに罹患した社員が急逝したことで、がん治療と仕事の両立について、改めて考えさせられました。この身近な出来事から、社員一人ひとりの意識にも変化が生じたと感じています。
その後、がんアライ宣言への参加を社内に呼びかけ、小さな活動ではありますが、その輪を広げる取り組みが始まると経営陣も賛同し、会社全体に浸透していきました。おかげさまで参加者は2021年から3年連続で増えています(2021年度10人→2022年度38人→今年55人!!)。
2021年に始まった社員の意識変化はその後も広がりをみせています。がんに罹患した場合の相談や、両立支援に関する制度などに関心を持つ社員が増えました。小さな関心からはじまり理解へ、理解から相談や初動といった行動にも変化が起こっています。こうした変化は最初から意図していたことではなく、活動を継続する中で徐々に芽生えたものです。
【2】他社の担当者への応援メッセージ
がんに罹患した方は、自分自身の悩みや体調と向き合いながら、仕事や家庭、その他の社会活動にも関わっていかなければなりません。一方、企業の担当者にとっても、社員のプライバシーを守りながら当事者ご本人との適切なコミュニケーションを重ねていくことは、言うほど易くはありません。罹患者と企業担当者双方が悩みながら孤立してしまうこともあるかもしれません。
がんアライをはじめとする様々な取り組みから、悩みを分かち合い、ほっと息をつけるような場所づくりができればいいなと思っています。お互いにつながりながら頑張っていきましょう。
講評・コメント
イントラネットを健康経営関連情報にアクセスしやすく、社員にとって利便性の高いツールとなるよう再整備されるなど、着実に歩みを進められています。
野村グループとしての様々な取り組みにも参加されるなど、地道な活動を続けられていることが、社内掲示板での投稿につながっているのだと思います。引き続きがんアライの輪を広げていく取り組みに、期待しています。
※上記オレンジ色の枠内の項目は、がんアライアワード2023応募シートでチェックいただいた項目と同一のものです。