非正規雇用の対応、どうする?→支え合う仕組み作りはどの会社でもできる【ネクストリボン2019レポート】 - がんアライ部
ワールドキャンサーデーである2月4日、公益財団法人日本対がん協会と朝日新聞社主催のもと、『ネクストリボン2019 がんとの共生社会を目指して~企業の対策最前線とこれからの働き方~』が行われました。
パネルディスカッション「がんとの共生社会を目指して」では、さまざまなテーマが議題に上がりました。本記事では「非正規雇用の方への対応、どうする?」についてご紹介します。
【この記事に登場する登壇者】
株式会社櫻井謙二商店 代表取締役社長 櫻井 公恵 さん
テルモ株式会社 人事部長 竹田 敬治 さん
株式会社電通第21ビジネスプロデュース局 ビジネスプロデュース部 部長/LAVENDER RING 発起人 御園生 泰明 さん
コーディネーター:朝日新聞社 上野 創さん
※詳しいプロフィールはこちら
金銭的な負担はできなくても、会社の中で支え合う仕組みは作れる
朝日新聞社・上野:まだまだ非正規雇用の方々や個人事業主、フリーランスへの対応が追いついていないですが、この点についてはどうでしょう?
テルモ・竹田:当社は契約社員やパートタイムの方も健保組合に加入してもらっているので、差はありません。派遣の方や請負の方に対しては、会社対会社で健康経営や安全への取り組みについて伝えるようにしています。
当社は敷地内禁煙なのですが、取り組みを始めた当初、製造部門から「請負の方がタバコを吸えないなら辞めると言っている。敷地内禁煙はもう少し待ってくれないか」という声が届いたことがあります。それは、お断りしました。残念ながら辞めた方もいらっしゃいましたが、基本的には請負会社さんも協力して進めてくださったんですね。会社対会社で伝えることによって、同じ場で働く人同士、目指す方向を一つにできる部分もあると信じています。
櫻井謙二商店・櫻井:当社の場合は、何らかの事情が起きて働けなくなってしまった非正規の人がいた時に、絶対に辞める話にはしないですね。「その事情がなくなったらまたおいで」と必ず伝えています。
電通・御園生:金銭的な負担はできなくても、精神面や情報の部分で負担を減らすケアなど、会社の中でお互いに支え合う仕組みを作ることは、少し頑張ればできるんじゃないかと思っています。
例えばうちの会社ですと、去年の12月にトライアルで「ラベンダーカフェ」というコミュニティを作ってみました。会社のがんサバイバーが集まって、お互いの状況を話し合って繋がれる。そして、新しくがんになった人やその上司が情報難民にならないよう、相談窓口として機能することを狙ったものです。これはお金がかかることでも何でもなくて、会議室を取ってお菓子とジュースを買ってきたくらいのことなんですよ。どの会社でもできることだと思うので、そういうことから始めてみるといいんじゃないかなと思いました。
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▼登壇者プロフィール
株式会社櫻井謙二商店 代表取締役社長
櫻井 公恵 さん
1967年生まれ、千葉県出身。中央大学卒業後、不動産会社勤務を経て、同県銚子市で生家が営む食料品卸売業に入社。代々、社員に何かがあった時は臨機応変に対応し、雇用を維持してきた。38歳で消化器の希少がんGISTに罹患した夫も、本人の希望により、亡くなる2週間前まで働いた。2010年より4代目社長に就任。今年で創業87年目。44人の社員と共によりよい働き方を模索している。GIST・肉腫患者と家族の会「NPO法人GISTERS」の副理事長や厚生労働省「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」(2014年)のメンバーも務める。
テルモ株式会社 人事部長
竹田 敬治 さん
1962年生まれ、大阪府出身。1986年、テルモ株式会社に入社。各部門の人事業務に携わった後、2017年より現職。また健康管理担当として、子会社も含めた健康経営推進の横断組織のリーダーも担い、社員の健康増進に取り組んでいる。2017年には「がん就労支援制度」を設け、治療を受けながらでも柔軟に働ける環境を整備。社内外に明確に発信することで、職場や家族が一体となって支える体制を構築した。医療に携わる企業として、社員の健康は重要なテーマ。社員の健康が企業の持続的成長につながると考え、社員がいきいきと健康で働ける会社を目指している。
株式会社電通第21ビジネスプロデュース局 ビジネスプロデュース部 部長/LAVENDER RING 発起人
御園生 泰明 さん
1977年生まれ、千葉県出身。東海大学卒業後、中堅広告会社勤務を経て2005年に株式会社電通に入社。ビジネスプロデュース局にて部長を務める。家族は、妻、小学3年生の息子と幼稚園年長の娘の3人。2015年、ステージ3Bの肺腺がんの告知を受ける(のちにステージ4)。化学療法や放射線などによる治療のため通院しながら、周囲の支えと働きかたの改善により変わらず仕事を続けている。本業の傍ら、「がんになってもいきいきと暮らせる社会を作る」ことを目的にした有志によるボランティア活動「LAVENDER RING」を立ち上げた。
コーディネーター:上野 創さん
朝日新聞社 東京本社社会部教育チーム記者。1971年生まれ、東京育ち。早稲田大学卒業後、1994年に朝日新聞社入社。横浜支局に勤務していた26歳の時に肺に転移した精巣腫瘍が見つかる。手術、抗がん剤治療を受け、1年後に職場復帰を果たしたが、その後2度再発し、入退院を繰り返す。体験を連載記事「がんと向き合って」で公表し、後に出版、日本エッセイストクラブ賞を受賞。その後は社会部で教育をテーマに取材活動をしながら、がんサバイバーの生き方や「いのちの教育」などもテーマとして追い続けている。2010年に担当した連載記事「ニッポン人脈記 がん その先へ」が第30回ファイザー医学記事賞大賞を受賞。