活動レポート

営業職の社員が牽引する「がん患者の治療と就業の両立」への取り組み【がんアライアワード2019ゴールド受賞・朝日航洋】 - がんアライ部

営業職の社員が牽引する「がん患者の治療と就業の両立」への取り組み【がんアライアワード2019ゴールド受賞・朝日航洋】 - がんアライ部

10月29日、がんアライアワード2019表彰式を開催しました。当日は受賞企業37社の中から、3社が代表講演を実施。本記事ではゴールドを受賞した朝日航洋株式会社の発表内容をご紹介します。

物資輸送やドクターヘリ、ビジネスジェット運航などの航空事業を行っている朝日航洋。同社の取り組みについて発表する渡部さんは営業職であり、人事担当者ではありません。その背景には、渡部さん自身のがん罹患経験がありました。

 

▲朝日航洋株式会社 航空事業本部 営業統括部 渡部 俊さん

 

「私は7年前に大腸がんに罹患し、合計5回再発しています。最初に大腸がんがわかったときは代休や有給が溜まっていたこともあり、『入院しても大丈夫だろう』と思っていましたが、手術後に抗がん剤を半年間投与することになったんですね。医師からは入院を勧められましたが、術前検査や入院ですでに20日間休んでいたので、有給の残りは30日しかない。休職してお金がもらえない状態で治療をすることはできないと思い込んでいたので、通院で抗がん剤治療を受けることを決めました」

 

ところが抗がん剤治療を始める前に上司、人事と面談をしたところ、そこで初めて積立失効有給休暇制度の存在を知りました。積立失効有給休暇制度は、使い切れなかった有給を失効後も3年分は取得できる制度。当時の渡部さんの場合、残っていた有給と失効した有給を合わせて100日間休むことができました。

 

「このことを事前に知っていれば、入院してゆっくりと抗がん剤治療を受けることができたわけです。通院で抗がん剤の点滴を打ちながら、『積立失効有給休暇制度の存在を社内にきちんと周知した方がいいのでは?』と思いました。上司は制度自体知らなかったですし、申請の手続きが煩雑なことにも『治療のことを考えるのに手一杯な人間がそんなことをやっていられるか!』という疑問がありました」

 

そこで、抗がん剤治療中に「がん患者の治療と就業の両立に関する所感と提言」と題した資料を作成し、役員に直接提出。記載した内容は主に以下の4点です。

 

 

アワードの講演では、「積立失効有給休暇制度の改善」と「ハンドブック」について詳しい説明がありました。

 

・積立失効有給休暇制度の改善

「積立失効有給休暇制度を明文化し、社内に周知する必要性があることは先ほどお話しした通りですが、制度自体にも課題を感じていました。この制度は病気の治療のためにしか使えないのですが、がん患者にも普段の生活があります。子どもの運動会に出たり、体調が良ければ温泉に行ったりもしたい。そこで、有給を5日残した時点から失効有給休暇制度を取得できるように制度を変えました。それならば、治療をしながら残った有給を使って、治療以外の目的で休むことができます」

 

・ハンドブックの作成

「社内の制度が全く浸透していないことが問題だと思っていましたので、まずは『慌てなくて大丈夫。会社が守ってくれるから辞める必要はない』ということを伝えたくて、一つの冊子にまとめました」

 

▲援助や配慮が必要であることを周囲に知らせる「ヘルプマーク」を東京都福祉保健局に許可を取って表紙に配置

 

「社内で管理しているデータについてもまとめています。私傷病はいろいろありますが、中でもがんが1/4を占めています。こういう資料は作成後に配布して終わりになりがちですが、配布後も声に出して伝えていかなければ身に付きませんので、配布後も各拠点に出向いてがん教育も兼ねた講習を行いました」

 

 

「良い配慮事例についてもまとめています。当社は制度できっちりやっているわけではなく、上司の裁量に任せている部分も多いため、上司によって対応に差が生じてしまうこともあります。私の場合はたまたま柔軟に対応してくれる上司でしたが、他のがん経験者の社員の中にはそうではなかった人もいる。各上司に良い事例を伝えることで、そうした配慮のばらつきを抑えることを狙っています」

 

 

「あとはQ&Aも用意しています。『申請書類は何をいつ出せばいいのか』『申請書類はどこにあるのか』といった社内制度に関する内容や、入院費や還付金、確定申告などのお金に関する疑問についても記載しています」

 

 

「また、がんに罹患した社員に責務を果たす意識付けをすることも重要です。病気に罹患した社員を手厚くフォローすると、どうしてもそこに甘えてしまう人も出てきますが、単に『治療のために仕事を休む』ではなく、こういう条件でこういう内容であれば働けるといった、『何ができるのか』をはっきりと会社に伝える責任がある。当事者もそこを勘違いしてはいけないと思っています」

 

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