がんアライアワード2年連続ゴールド受賞企業コロプラスト&日立システムズに質問!「社内の巻き込み方は?」「実体験を拾い上げる工夫は?」【がんアライ部第7回勉強会レポート】 - がんアライ部
第7回目の「がんアライ部勉強会」を1月28日(火)、日立システムズにて行いました。今回ご登壇いただいたのは「がんアライアワード」で2年連続ゴールドを受賞したコロプラスト社と日立システムズ社の人事担当者のお二人です。
ここでは発表後の質疑応答の内容をご紹介します。
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がんアライアワード2連続ゴールド受賞のコロプラスト&日立システムズの人事担当者が語る「がん×就労を支える風土・環境づくり」【がんアライ部第7回勉強会レポート】
どうやって社内を巻き込む?
【質問】
がんと就労は企業の経営課題のうちの一部ですが、優先順位を上げにくいと感じています。お二人はたくさんの方を巻き込みながら推進されていると思いますが、関心が薄い方もいる中、どうやって巻き込んでいるんですか?
コロプラスト・久保田さん:巻き込むというのは、自分ごととして考え、動いてもらうことだと思います。その際の“やる気スイッチ”みたいなものは人によって違うので、あの手この手で試してみるしかないと思います。その際、アプローチの頻度の総量が鍵になるような気はします。
日立システムズ・金森さん:私の場合は、健康管理やダイバーシティ推進部門のスタッフに加えて、現場の総務や労働組合、広報部門など、同じ目的を持っている方々と地道に話をしながら、少しずつ協力者や支援者を増やして、一緒に施策を考えたり、講演会や座談会を共同開催したりなどして進めています。
新しい取り組みをやり続けられるのはなぜ?
【質問】
がんアライアワードで2年連続ゴールドを取っていますが、2社とも新しい取り組みをやっているのがすごいなと思います。どうして毎年新しいことができるんですか?
コロプラスト・久保田さん:がんアライ部の活動がネタの宝庫になっていて、他社さんの説明を聞いたりディスカッションをしたりする中でヒントをいただいています。
あとは、新しいことを始めなくても、既存の制度の精度を高めるなど、やるべきことはたくさんありますよね。また、別の目的で導入した制度ががんに罹患した社員に向けても適用できるなど、シナジーもあると感じています。
日立システムズ・金森さん:他社のいろいろな事例を参考にして小さなことからトライしていますが、会社規模や事業内容、企業風土が違いますので、なかなかうまくいかないこともあります。
でも、そこから課題が見えてきて、一緒に進めているスタッフからアイデアが出て、それが次の新しい施策や工夫につながっていくことはありますね。
まずは何かアクションを起こすこと。そうすると、味方になってくれる人が現れますし、従業員からも、多くの意見やアイデアをもらえて、次につなげることができると感じています。
がんアライアワードゴールドの受賞効果は?
【質問】
がんアライアワードゴールドを受賞した効果について教えてください。
コロプラスト・久保田さん:2018年に受賞した時は、授賞式の翌朝のNHKニュースに社長の顔がちらっと出たんです。それだけで社内は大興奮でした(笑)。コロプラストは知名度がある会社ではないので、すごく喜んでもらえました。
あとはがんアライ部の事務局から受賞の効果をヒアリングいただいたことがあって、その際に受賞したことをどう思うか、社内にメールで投げかけたんです。多くの反響があって、すごくうれしかったです。他に「働きがいのある会社ランキング」に応募した際にも、取り組みの一つにがんアライアワードのことを書きました。
日立システムズ・金森さん:活動を発信しても、関心がないとなかなか気づいてもらいにくいのですが、社外で表彰をされて、それがニュースリリースとして世に出ることで、「うちの会社こんな取り組みをしているのか」と社員が気づいてくれる効果がありました。
あと、これは自分でも驚いたんですけど、弊社の役員が、社外向けの講演で「がんアライアワードを受賞しました」と取り上げてくれたんです。経営陣から話してもらえると広がりが大きいですし、想定以上の速さでこの取り組みの周知が進んできているように感じています
取り組みの中で苦労したことは?
【質問】
取り組みの中で苦労されたことがあれば教えてください。
コロプラスト・久保田さん:「喫煙率を下げること」ですね。今はスタックしてしまっているので、うまくいっている企業の方がいたらぜひお知恵を貸していただきたいです。今年こそは結果を出したいですね。
日立システムズ・金森さん:さまざまな施策を進める上でトライ&エラーを繰り返しながらやってきていますが、一方的に情報を流すだけでは押し付けになってしまい、なかなか響かないですね。やはり従業員の声を聞き、正しい知識を知ってもらうよう働きかけることが大切なのかなと思います。
正しい知識を知ると、人は優しい気持ちになれますし、お互いを思いやる気持ちも生まれてくる。そうなって初めてこういった施策に関心を持ってもらえるのだと感じています。
そういう意味では、がんと就労の問題に限らず、人事施策を進めていく上では、いきなり特効薬のような施策を求めるのではなく、時間をかけてコツコツと信頼関係を築いていくことが重要だと感じました。
実体験を拾い上げるための工夫は?
【質問】
興味のない人に自分ごととして捉えてもらうためには、身近な方の実体験を伝えることが大事だと思っています。ただ、その声を拾い上げるのは難しいとも感じているのですが、何か工夫されたことはありますか?
日立システムズ・金森さん:おっしゃる通りで、実は社内でがん治療と仕事を両立されている方を対象に座談会をやろうとしたことがあるのですが、参加者はゼロでした。そこに対してはもっと正しい理解を広め、まずは心理的安全性を高める必要があると思っています。
そんな中でうれしかったのが、全職場で「がんと就労」をテーマにした勉強会と職場ミーティングを実施してもらったときのことです。その勉強会と職場ミーティングのなかで「実は部署の中に病気に罹患した人がいて、その人が体験談を課内で話してくれた」といった自発的な共有の話が複数ありました。
人事が全社的に動かなくても、各職場でそういう共有が自然になされ、お互い様の気持ちでサポートしていこうという職場風土が醸成されるきっかけになったのかなと思いますので、このミーティングをやって本当に良かったですね。
がんアライ部事務局:がんアライアワードで同じくゴールドを受賞しているサッポロビールさんでは、「Can Stars」という、がんに罹患された方たちの社内コミュニティを作っています。企業のカルチャーによるところも大きいと思いますが、よかったら参考にしてみてください。
取材・文・撮影/天野夏海