がんアライアワード2024 ベストプラクティス受賞・名古屋銀行の仕事とがん治療の両立支援施策 - がんアライ部

2024年12月12日、「がんアライアワード2024」表彰式をオンラインにて行いました。
表彰式では受賞企業48社を代表し、ベストプラクティスを受賞した名古屋銀行が講演を実施。本記事では内容の一部を紹介します。
<登壇者プロフィール>
株式会社名古屋銀行
人材開発部人事グループ 係長
貝瀬繭子さん
2023〜2024年に行った両立支援の取り組み
名古屋銀行は愛知県に本社を置く、県下最大の地銀。従業員数は正規社員が約1700名、非正規社員を合わせた総数は約2500人です。
同行が、がんアライ宣言を出したきっかけは大きく二つ。2022年6月に健康経営推進室を設置したこと。それに伴い、がんに罹患した従業員の声を聞く機会が増えたことが挙げられます。
「仕事とがん治療の両立支援に取り組む姿勢を示すために、2022年にがんアライ宣言を行いました。働きがいを感じられる職場づくりを重視し、仕事とがん治療の両立支援ガイドブックを作成するなど、各種施策に取り組んでいます」
2023年から2024年の1年間に行った取り組みは以下画像の通り。相談体制、環境整備、セルフケア、その他健康増進施策の四つのカテゴリーで施策を進めてきました。
講演ではがんアライアワードの審査員が特に評価した施策について、それぞれ詳しく解説いただきました。
・保健師・心理師による相談体制の強化
相談体制では、「こころとからだの安全体制を整備してきた」と貝瀬さん。特に保健師・心理士による相談体制の強化に取り組んできました。
「従来、保健師の常勤は1名体制で、従業員の皆さんの悩みを聞くというよりは、悩みがある人が相談に来た時に初めてヒアリングができる状況でした。そこで保健師を4名に増員し、保健師自らが全ての支店へ訪問することで、全従業員との面談を実施しています」
保健師が能動的に従業員に働きかけることで、相談体制を強化。「いつ誰に健康の悩みを相談すればいいかわからない」という従業員の課題を解消しています。
「さらに2024年6月には常勤の心理士を採用しました。特に若手従業員は相談相手がいない等悩みを抱えやすく、『こころの悩みを誰に、どう相談したらいいか分からない』という声を受けたこともあり、心理士が1~5年目の若手従業員全員と面談を行っています。他に、障害を持った従業員へのケアを行うなど、多方面で心理的安全性を高める組織づくりに注力しています」
相談体制を充実させるにあたり、「外部委託ではなく、全て社内で体制を整えていることが強み」と貝瀬さん。
「専門職ならではの秘匿性は担保しながらも、社内専門スタッフが身近にいて、悩みに寄り添いながらいきいきと働ける、心理的安全性の高い組織を目指しています」
・疾病短時間勤務制度の導入/女性休憩室の設置/ユニバーサルマナー検定3級を全行員が取得
環境整備を前進させるきっかけとなったのは、がんに罹患した従業員の声。「治療を継続しながら働きたい」という希望に対し、完治状態での復職を前提とした制度は整っていたものの、中長期的な治療と仕事の両立を可能とする勤務制度は整備されていないことが明らかに。
そこで導入したのが、疾病短時間勤務制度です。がん、あるいはがんに準ずる疾病の罹患者が対象で、原則最長1年間、勤務時間を1~4時間短縮でき、働きながら半日治療を受けることが可能になりました。
「主治医と産業医で連携を取り、従業員の安全を第一にしながらも、働きがいを持って仕事を継続できる環境を整えたいと思っています」
他に、女性休憩室を設置。妊娠期の女性が同時期に増えたことで休養ベッドが不足したことから、生理や搾乳などを含め、女性のプライバシーを確保しながら安心して働ける環境整備を進めています。
また、誰もが安心して働ける職場環境を実現するために、ユニバーサルマナー検定3級を全行員が取得。高齢者や障害者に関する基礎知識を学び、向き合い方や声のかけ方を学ぶことを目的とした資格取得を通じて、さまざまな事情を持つ人に応対する合理的配慮の周知を図っています。
・人間ドックの検診費用補助額を増額/検診結果管理システムの導入
セルフケアとして、検診を受けやすい環境を整えることで、がん検診の増加を目指しています。
「人間ドックの企業負担額を増額した他、がん検診の対象年齢の狭間にある従業員や、育休中で医療機関に赴くことが難しい従業員に向け、自宅でできるHPVセルフチェック検査を全額補助しています」
また、検診結果の管理システムを導入。毎年異なる医療機関で検診を受ける場合、経年経過を自分で確認するのは困難ですが、どの医療機関で検診を受けたとしても本システム上で5年間分の検診結果が確認できるようになりました。
「名古屋銀行で働いていてよかった」
冒頭で紹介した通り、名古屋銀行が健康経営に取り組む背景には、従業員の声がありました。
ただ、健康経営は健康に問題がない従業員には理解されにくい一面も。同行ではワークエンゲージメントなどのKPI指標を設定し、健康経営の取り組みによる従業員の変化を観測しているものの、「大きな変化は測りにくい」といいます。
「その一方で、病気になって初めて各制度を知った従業員から『名古屋銀行で働いていてよかった』といった声を聞く機会が増えてきました。担当者としても、取り組みを進めていてよかったと心から思います。
今後も従業員の皆さんが安心して新たなチャレンジをし続けられるよう、両立支援を大切にしていきたいと思います」